昨夜の愛知公演を観劇しました。
メインが石丸幹二、井上芳雄、安蘭けい。
こんな豪華キャストは地方でそうそう見れない。
舞台は20世紀初頭のニューヨーク。
白人、ユダヤ人、黒人と三つのコミニュティによる群像劇。
白人は白、ユダヤ人はくすみカラー、黒人はカラフルとそれぞれ衣装で人種を表現しているのが分かりやすかった。
昨年のミスサイゴンはその辺りが初見の相方には分かりづらかったそうなので、今後はこういう色分けが主流になるのかな。
序盤は状況説明的な場面が続いて難しかったけれど、安蘭けい演じるマザーが邸宅の庭に置き去りにされた黒人の赤ん坊を引き取るところから物語が一気に動き始めたので、ラストまでのめり込んで見れた。
心優しい母親のマザー、その夫で工場経営者のファーザー、赤ん坊の母親サラ、赤ん坊の父親でピアニストのコールハウスらが、白人たちとの軋轢に巻き込まれて諍いを起こしたり翻弄される。
人種差別が色濃い当時のアメリカで、白人により理不尽に殺されるサラ。コールハウスは自暴自棄になり暴力的な反乱に打って出る。
一方で、マザーはユダヤ人で切り絵師のターテと出会い心を通わせる。
カテコで石丸さんが、この作品を上演することの意義を気にされてたように見えたけど、ビジネスも価値観もグローバル化が進む一方で、経済の停滞や少子高齢化で閉塞感漂う国内の雰囲気との不協和音を感じる今日この頃。
上演する価値は十分あると思いました。
ターテの石丸幹二、コールハウスの井上芳雄や安蘭けいも素晴らしかったけど、最も印象的だったのはソウルフルな歌唱が圧巻だったサラの遥海。
ここ最近ささくれていた心に沁みました。
ファーザーは経済力はあるもののどこにでもいる至って凡庸な夫なので、黒人の肩をもつマザーと心の距離が出来てしまい、素気無くされる。
思い直し、コールハウスの救出に尽力するや、その後戦死。
彼も、家族の為にアメリカに馴染んで必死で働いてきただろうに可哀想。
マザーは立派な心掛けで素晴らしい女性だけど、経済力のある男性に守られた故の尊さだと思うので、差別的な白人に強く出れない夫を遠ざけるのは少々潔癖が過ぎるように感じました。
夫が亡くなったら、あっさりターテと結婚しちゃうし。
コールハウスに対して卑劣な振る舞いをする消防隊員も許せないんだけど、彼らもアイルランド移民だったりで複雑。
アメリカの人種差別根深い。
全体的に、こういう叙事詩を描く難しさで、メッセージ性も強いせいか、人物造形もやや画一的だしキャッチーな台詞や場面が豊富という訳では無いので、何度も見たくなるミュージカルでは無かったかな。
つくづく、魂はディテールに宿る派なんだと痛感しました。
他OGでは綺咲愛里がちょっとエキセントリックな美人女優役を好演していました。
チケ戦線に乗り遅れたのと、名古屋に専用のミュージカル劇場が無いこともあって、愛知芸術劇場の5階席で鑑賞しましたが、流石に5階席はなかなか無いせいか、石丸さんや芳雄さんがカテコやSNSで5階席弄りをして下さったので、ステージめちゃくちゃ遠かったけど、来て良かった!て思いました。