備忘録〜すずめの戸締まり | モンタギュー家の執務室

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ロミジュリから礼真琴をひたすら崇めている星担。地方民なので配信多め。
宝塚とエンタメ全般について綴ります。

話題作でもあり、久しぶりに真面目に感想を記録したくなる作品でした。良くも悪くも…。


以下、ネタバレに配慮しない内容です。


新海誠作品は『君の名は』『天気の子』と今作を劇場で鑑賞。

『君の名は』はアニメーションとしてのクオリティは文句なし。の割に作家性が微塵も感じられない珍しい映画。見やすく物語も間違いなく面白いのに、何か引っ掛かるモノを残しながら帰路に着きました。

『天気の子』は打って変わって、DQNな主人公たちVS大人社会という構図にワクワク。賛否両論ありましたが、『君の名は』よりもオリジナリティーのある作風が気に入りました。


で、今作もやはり作画凄いです。

新海アニメって実写バリに正確かつ実写より美しい都市描写が魅力なんですが、今回は地方がメイン、でやっぱり背景が美しい。

そこにプラス女性キャラが髪を結い上げるシーンの動きがね、モーションキャプチャーを使ったかのよう。

アニメでは見たことない様な動きに目を奪われました。


そして肝心の内容は、なんともモヤモヤ。

ストーリーは面白いんです。

主人公が猪突猛進、サクサク進むロードムービー。

PayPayみたいなお財布携帯を使ってあちこちに移動するのも今風で良かった。

わたしロードムービーって苦手なんですが(だからジョジョの奇妙な冒険も三部より、断然一部と四部推しです!→伝われ)上手く行きすぎ感はあっても一定のリアルや距離感を納得させてくれればイケるのだと分かりました。


女子高生の鈴芽は、地元の廃墟に迷い込んだことで、地震を鎮める扉をそうとは知らず開けてしまう。謂わばパンドラの箱を開けてしまったことで、全国各地に地震が発生する事態に。

先祖代々、扉を閉める「閉じ師」を家業とする草太との恋愛を絡めながら、厄災を封じ込める要石の役割を放棄したダイジン(猫)を追いかけつつ各地の地震を鎮める旅に出ます。

 

中盤、ダイジンの呪いで椅子に変身させられた草太が、実はダイジンの代わりに要石になってしまった事に気付き、自ら犠牲となり要石としての運命を受け入れる。

それを受け入れられない鈴芽の向こう見ずな行動が周囲を巻き込んで、親代わりになり育ててくれた伯母や旅先で知り合った人たちとの交流も盛り込まれる。


で。結論から言うと、誰かが生贄=要石にならないと収まらないんです。

よって、鈴芽に選ばれた(愛された)草太は救われて選ばれなかったダイジンが要石となり決着。

元の鞘に収まる訳で、人命>>>猫の命ってそりゃそうだけどダイジンは言葉を話す猫なんですよね。


地震が命あるものの犠牲で封じ込められるという設定、そこに向かい然程躊躇なく行動する主人公たち、この展開は間違いなく確信犯だと思われ、どうしても後味が悪い。

震災をエンタメ大作で取り扱った勇気は買います。

日本人て共感性高くて繊細、雰囲気に流されやすい。

だから、そっとしておこうという流れが裏目に出て災害が風化してしまうよりはいいと思うんです。

原発再稼働なんて正直怖いし。


ただ、それは私の住んでる地域が中部地方で直接的な被害に合っていないから言えることですよね。


地震を人間の力で封じ込めることが出来る、だからもう安心していいんだよ、という完全なるファンタジーをプラスに受け取れるか、受け取れないかで評価が別れるだろうし、当事者はプラスに受け取れないんじゃないかなぁ。


思ったより賛否両論にならなくて、大ヒットししかも結構賞賛されてる流れにモヤモヤ。

ここまでセットで作り手に試されてる気がするのは私だけだろうか。

新海さんてもしかしたら、凄く才能あるけどとても意地悪な人ではないかしら?

たぶん次回作も観に行くけれどさ。


以上、この独特な感情を記録に残しておきたくての感想でした。