フィンランドと言えばNATOへの加盟を表明していて、ロシアとの国境線は数千キロに及ぶという…いまかなりヒリヒリした国のひとつ。この本が書かれたのは2012年だから、フィンランドはまだ平和だったのね。


 アラフォーのフィンランド人独身女性、ミア・カンキマキさんが、広告代理店から長期休暇(一年も!)を取得して、心酔する枕草子の作者清少納言の実像を求めて京都に住む、しかも日本語は全くわからない。というはらはらのノンフィクション、結構分厚い。日本の古典を研究するのだから、きっとしちめんどくさいことがいっぱい書かれているのでは、と危惧したのだけれど、どちらかというとミアさんの心の揺らぎが書かれてあって、とても身近に感じられる。

 清少納言の印象は確かに良くない。高飛車で学識を鼻にかけた女官…と私は思っていた。でも、それは彼女の一面。なぜそう思うのか、いろいろ考察していくとミアさんが彼女の残したものに惹かれる気持ちがわかってくる。

 そして東日本大震災。その時の在日外国人たちの身の引き裂かれるような思い。ミアさんはタイに一時避難するけれど、やはりそこではない。清少納言の残り香のある場所に戻ってくる。場所が醸すもの。日本の桜。

終盤の目くるめくような表現・見解に息もつけないほど圧倒された。

 

上の写真の右の酒器は、数年前平安神宮の近くの陶器店で購入したもの。青鬼のユーモラスな表情とぽてっとしたフォルムが気に入っている。