空気が少し寒くなってきた頃、本牧に行ってみた。
天気が良いので、山の上の公園でワインでもちびりとやろう、という思惑である。

横浜あたりから路線バスに乗り、関内~山手のあたりを過ぎると、商店街の中、遠い過去に、波に侵食されてできたであろうような断崖の地形が街にそってあったりしてなかなか興味深い。
昔々、このあたりは海中だったのだろう。

マイカル本牧(面白いネーミングだ)のひとつふたつ前のバス停で降り、交差点を渡って山のほうに歩を進める。
和田山を東斜面から攻める形となる。
ちょっとした公園のようになっているのだが、すでにけっこうな登り坂である。

クルマの通行できる舗装路が途切れると、山の公園に向かうであろう小路が姿を見せる。
むこうのほうにはコンクリートでできた遊歩道のようなものが同じ方向に向かっているので、マイカルの商業施設からは、あの遊歩道を使えるのだろう。

まだ落ち葉も少ない小路をざくざく登っていくと広い駐車場に出る。
もう午後遅くなるような時刻なので、クルマはほとんど見当たらず、子供たちがボール遊びをしたりしている。
その駐車場をテクテクと通り過ぎると、山の上に向かう小路が再び現れる。
なんとなく、周辺は険しさを増している。

ワインとワイングラスを持ってきているのだが、場違いではなかろうかと心配になる。

ワインは、

$blue painted birdsのブログ-CATZ

こういうやつである。
ドイツのZeller Schwarze Catz。

そんなこんな思いをめぐらせていると、歩行用の塗装路に合流する。
これが、とんでもなく急勾配。
階段ではなく、普通の歩行者用の道なのだが、傾斜がきつすぎる。
わたしたちのさんぽは、こういうのが多いので、慣れっこではあるのだが、それにしてもだ。
はあふう言いながらよたよた登っていくと、ご年配の方々が普通に登っていく。
このあたり地元の人なのだろう、慣れというのものはすごいものだ。

やっと広いところに出る。
コンクリの建物があったりして、かなり整備された公園のようだ。
もう脚がしんどいので、広場の石のベンチのようなところへ腰掛ける。
息が整ってきたところでワインだ(笑

$blue painted birdsのブログ-wine

甘口でちょいと疲れた身体に美味しい。
つれあいが用意してくれたちょっとしたおつまみと一緒に。
ぽかぽか陽気、目の前には港が見える。
幸福の広場である。

$blue painted birdsのブログ-view

宅地から近いのにもかかわらず、この高さが効いているのだろう、ワサワサギャハギャハ煩いような人々は居ない。
人はそれなりにいるのだが、落ち着いた公園だ。

風がやわらかに通り過ぎる
犬が主人とゆっくりとあるいていく
ワインはだんだんと減っていき
太陽はすこしづつ位置を変えていく

$blue painted birdsのブログ-dog

公園としてはさらに上があり「山頂」なピークもあるようなのだが
もう酔ってしまったしなので、磯子のほうに降りて帰る。
ちょっとした穴場的な公園である。

きれいな水の流れる側溝を左にして日当たりの良い小路を行くと
「佐助稲荷神社」の表示が出てくるので
そこを左に曲がり、ゆるやかに登っていく。

新築の民家があったりして、こういうところでも
まだまだ家が建っていくのかと少し驚いてしまう。
日常生活には不便なことは間違いない。

しばらく進むと、佐助稲荷の赤い幟が見えてくる。
そこから見るとちょっとした山のような佇まいである。
というか、けっこうな山であることは後で判明する。

赤い幟と、ちいさな鳥居、上野公園の山で見かけるような
個人奉納のちいさな鳥居だ。
それがとにかく多い。
ここまでの数を見たのは初めてだ。

その数に感心しながらもかなりの急坂を登っていくと
佐助稲荷に着く。
かなり脚に来る。

小さいが境内には休憩するところがあって
お茶やコーヒーを自分で淹れて飲むことができる。

お参りをして、

 さあ、これからどうしたものか

と思っていたら、そばにいたおじさんが

 ここから山を越えて銭洗い弁天に行くことができる

と話しているのを小耳にはさんだ。

たしかに、裏の山へ登る道がある。
また同じところを降りていくのも芸が無いので
登っていくこととした。
民家も近いし、そうたいした登りではないだろうと。

それは少し甘い認識だった。

スイッチバック式の登山道のようなところを
ぐいぐい登っていくことになるのだ。

足元もかなり危うい。
体力に自信のない人はやめたほうが良い。

しかも、途中途中が分岐している。
こんな山中で分かれ道に遭遇すると途方に暮れる。


$blue painted birdsのブログ-佐助稲荷の山道


さらには、木々の根が好きにはびこる、道なき道も待っている。

無計画な我々としては、こういう事態となったら
もはや途方に暮れるしかないのが関の山なのだが
今回は不思議なことがあった。

ちいさな女の子が道案内をしてくれたのだ。

とにかくタフで、ひょいひょいとこういう急坂を登っていく。
我々がモタモタしているとちょっと先で待っててくれている。

連れ合いとは、

 もしかして山の精では?

なんて感じを共有したが、
普通に話もできるし、小学生ぐらいの普通の服も着ているし
ここらの地元の女の子なのだと思う。

佐助稲荷の裏山を登り切り、尾根伝いをゆるゆるとくだっていき
ポツポツと民家が見えてきて

 銭洗い弁天はこちら

的な表示が出てくるところまで案内してくれた。
言葉少なな彼女だったが、感謝の意を伝えるとぺこりとお辞儀をして
道を引き返して行ってしまった。
疲れを知らないがごとく、身軽に。

$blue painted birdsのブログ-相模湾を望む


このあたりは、かなり標高があるらしく
かなり眺望の良いところがある。
極楽寺の近辺よりも高台だろう。
方向としては相模湾のほうを見渡すことができる。
佐助稲荷の裏山を途中で左に分岐していくと長谷のほうへ出るのだと思う。
途中、

 鎌倉大仏はこちら

な表示があった。
次はそちらも歩いてみたいと思う。

坂を下りる方向へ素直に降りていけば、大通りにぶつかり
そこを左に折れて大通りを行けば、市役所前の交差点へ辿り着く。
鎌倉駅の東口をスタートして、西口にぐるっと回って来たことになる。

市役所前交差点には蕎麦屋さんがある。
年配の夫婦が昼からお酒を酌み交わして楽しんでいるような
大人な店である。

高低差のある散歩コースだったのでお腹も減る(笑
連れ合いはさっそく熱燗など楽しんでいる

 あの女の子はちょっと不思議だったね

などと話しながら蕎麦を食べればご機嫌である。
前々回、長谷~江ノ島方面
前回、北鎌倉~鶴岡八幡宮

と歩いたのだが、今回はその中間あたりのエリアである。

メインは前回書いたように佐助稲荷神社だ。

鎌倉駅をおりて、小町通りのほうへ行く。
しばらく歩くと十字路があるので、そこを左へ。
鶴岡八幡宮への参道とは90度違う道だが、一応小町通りという名称のようである。
少し古びた踏切がある。
横須賀線の踏切らしい。
踏切のあたりは人もクルマも多いが、踏切を渡ってまっすぐの道(クルマの相互通行は困難なぐらい細くなる)に行くと、いきなりひっそりとした雰囲気となる。

いい感じである。
「昔はお金持ちだった」みたいな家がちらほら建っている。
門から芝生の庭、とても広い庭を介して遠くにお屋敷のようなものがあったりする。
その広大な敷地がひとつの家である。
人が暮らしているのか、すでに誰も住んでいないのか。
色々と歴史がありそうだ。

右に曲がる道が出てくるのでとりあえず曲がってしまう。
さらにしんとした通りで、お屋敷通りである。

こういう先祖代々ひとまずはお金には困ってませんでした、というタイプの人々が住むエリアは、どこでも似たような気配を持っている。
息をひそめて暮らしているような気配。
それはそれで味わい深い雰囲気ではある。
黒い鳥が「ギィ」と鳴いて梢から飛び立つ。
鳥の鳴き声は静けさを計る。
日向と日陰のコントラストが妙にくっきりしている。
時間の流れがすこし変わる。

目の前にこんもりした木々が見えてきてぶっつけとなるので左に折れる。
そこもまたぶっつけとなるので右に折れる。
頭上に木々がかぶさり、冬にしては強い日差しを隠す。

左手に甘味処のある三叉路を左に進むと、登ったところにトンネルの入り口が見える。
切り通しにするようなところをトンネルにして山の左右の便を良くしたもののようだ。
トンネル自体は新らしめのつくりで、50m程度で通り抜けてしまう。

トンネルを抜けて左に出ると、森に囲まれ石垣のある住宅街なのだが
どうにも特異なムードが漂う。
トンネルを境に、界が変わっている。
背中がひやっとするような、本能へのシグナルだ。
連れ合いも同感だという。
自然と歩が早くなる。

幸いにも下り道なので、さっさかと歩いていける。
ぶっつけになるので右に曲がる。
側溝に綺麗な水が流れる日当たりの良い通りである。
ここは人通りも多く特異なムードはもう消えている。

やはり鎌倉、土地に歴史が結びつきそれがひとの心を叩くのだろう。