K太が出て行ってしまった。
もう私はひとりぼっちだ。
あんなに尽くしたのに、
あんなに引き止めたのに、
子供もいるのに、
それでも浮気相手の方を取ったんだ。
K太は浮気相手と
楽しく生きていく。
私は離婚して、一人で
働いて一花を育てていく。
……重い。
まだこの時18歳だった私には
重すぎる現実だった。
K太のせいで、
私の人生はめちゃくちゃだ。
なんだか、とても疲れた。
もう、生きていても
仕方ない気がする。
もし、私が死んだと知ったら、
K太も少しは反省するかなぁ。
私は、そばにあったテレビの
コードを引っこ抜いた。
室内を見回すと、
以前の住人が使っていた
高級そうな食器棚がある。
高さはあまりないけれど、
とっても丈夫そうだ。
棚の上部にテレビのコードを
括り付けてみる。
ドアノブとタオルでも
人は死ぬ事が出来ると
聞いたことがあるから、
このコードに、
足を伸ばして座った状態で
首をかければ…
同じような感じになるかな。
私は輪状にしたコードに、
首を通した。
首吊りは、正しい?位置を
圧迫されると一瞬で
意識を失うと、何かで読んだ。
でも、正しい位置が分からない…。
痛い。
ゴソゴソと、
何度もコードを
少しずつずらして、
圧迫する位置を変えた。
そうこうしている間に……
私は本当に意識を
失ってしまったらしい。
どれくらい意識を失っていたのか
分からないけれど、
一瞬だったのかも
次に気がついたのは
得体の知れない
呻き声のせいだった。
地の底を這うような、
恐ろしい声がすぐ近くから聞こえる。
目を開けると、
目の前に黒いモヤがかかっていた。
立ちくらみを起こした時と
同じだった。
そして、ものすごく
苦しい………。
でも、どうしてこんなに
苦しいのか全く分からない。
なんだろう、
私、何か悪い病気だっけ?
苦しい、苦しい…。
ウォォォオ、ウォォォオ、
と恐ろしい声もまだ聞こえる。
なに、なに、なんなの、
怖い、苦しい、誰か助けて。
ジタバタ暴れているうちに、
フッと楽になった。
目の前の黒いモヤが
一瞬で晴れて、
恐ろしい声も聞こえなくなった。
しばらくぼんやりとしていたけど、
ようやく事態を理解した。
そうだ、私は死のうとしたんだ。
暴れた弾みで、
首を圧迫していたコードが
緩んだらしい。
あの恐ろしい声は
自分が出していたと理解した。
死ねなかったんだ…。
でも、もう一度やる勇気は、
なかった。