それは すでに欺くことでしかないのに。」
「雪の日に」という吉野弘の有名な詩の冒頭部分です。
私はこの詩をもう幾度となく読んでいますが、何度かに一度、
必ずジャクソン・ブラウンを思い出します。
そして彼のレコードを聴きたくなるのです。
リベラルな活動家、アメリカの市井の苦悩や挫折を分かり易い言葉で
表現するすぐれた詩人、特にバラードに於けるシンプルで感動的な作曲術、
長髪、カリフォルニア・・・。
みんなが普通に使っているシンガーソングライターという言葉
(そう言えば最近はあまり耳にしなくなったような気もします)のイメージを、
ジャクソン・ブラウンは世界で一番最初に体現して見せたスターかも知れません。
軟弱、欺瞞といく言葉を用いて彼のことを毛嫌いする人々も実はとても多いのですが、
それもいかにもジャクソンが招きそうな評価だと私は思います。
誠実であろうとすることのそもそもの滑稽なまでの困難を引き受け、
それでも何とか誠実でありたい者達の足掻きを表現し続けることが
彼のライフワークなのだろうと思うからです。
このアルバムは1973年に発表された彼のセカンドアルバムです。
「Colors Of the Sun」という地味な曲が私は一番好きで、
何度繰り返して訊いても飽きないくらいです。
強烈な寂しさを感じさせる名バラードで、ドン・ヘンリー(イーグルス)の
コーラスもじわじわと心に食い込むような力を持っています。