私は、ヒップホップと称される音楽の大部分において
ややアンチだと自認しています。
史実として黒人音楽の辿り着いたある形、ということは理解できますが、
通りすがりの店先や、
若い子の車から大音量で聞こえるヒップホップ
(そういう形で聴くからだという説もありますが)に
感興をそそられた経験はありません。
むしろ殆どの場合耳障りで迷惑な音と感じます。
1998年にローリン・ヒルのソロ第1作「The Miseducation of Lauryn Hill」
を聴いた時、小さな化学反応が私の心に起きた気がしました。このアルバムの世界、
ローリンのヴォーカルの力量に結構はまってしまったのです。
気がした、と書いたのは、その後色々聴きましたが、このアルバム以降、
私が感動するヒップホップの音源には出会っていないからです。
表現への衝動とそれを支える豊かな声量と鋭い感性・・・、
ローリン・ヒルはすぐれた歌手です。
饒舌な歌詞は、プロテストソング的で、怒りと悲しみと、
諦観と希望が綯い交ぜになった緊張感があります。
ポエムリーディングの一形態としてのラップ、
そういうものが世界中で1200万枚も売れたことに
私は若干の安心も抱いたのでした。
私にとってもそれだけの力のある「ヴォーカル=説教」だったのです。