アメリカではちょっとだけお祭りムードになりました。
結局、大ブームになることもなく、お祭りはどちらかと言えば
ひっそりと終わったのですが、
マーティン・スコセッシ製作総指揮による
「THE BLUES Movie Project」のように心に残る素晴らしい企画もありました。
7人の精鋭監督が、ブルースをテーマに長編ドキュメント映画を撮るというもので、
それぞれの切り口を見せる独立した7本を全部観ると、
ブルースという特殊な音楽の在り方が立体的に浮かび上がる、
という企図がスコセッシにはあったのでしょう。
そして狙いは当たったと思います。
私が最も感銘を受けたのは、この「The Road To Memphis」です。
チトリン・サーキットといって
黒人クラブをひたすら巡業して回るツアーをかれこれ
40年も続けるボビー・ラッシュと、
大御所として、ブルースマンとしては
最高の栄誉と名声を手にしたように思われるB.Bキング、
この二人の素顔が印象的に、しかもクールな視点で交互に映されます。
他にもロスコー・ゴードン、リトル・ミルトン、アイク・ターナー、
サム・フィリップスなど、映画の公開と前後して亡くなった
ブルースにとって非常に重要な人物も多く出てきて、
それぞれ印象深いシーンを担います。
彼らが語る思い出話、黒人であることの苦悩と喜びは
国籍も肌の色も、世代も全く違う私に
到底理解しきれるものではありませんが、
誰にも等しく流れる「時間」、
その非情さと治癒力の圧倒的な共存の力は
ずっしりと実感することが出来ます。
そして見終わった瞬間からまたブルースを聴きたくなるのです。