イギリスを代表するパブロックバンド
(元々はバーやパブなど小規模な箱で演奏していたバンド、
という程度のニュアンスの呼び名です。)、ドクター・フィールグッド。
メンバーの変遷の激しいバンドですが、
R&B、ブルースを基調としたロックンロールをやり続け、
今も根強い人気を誇る老舗です。
個人的な見解では、今あるドクター・フィールグッドは、
名前は同じでももはや違うバンドです。結成からのメンバーで、
初代ギタリストのウィルコ・ジョンソン脱退後リーダーとして
長くバンドを牽引してきたヴォーカリストのリー・ブリローが
1994年に他界した時点で、私の中のドクターは過去のバンドになったのです。

今日ご紹介するのは、リー・ブリローの後釜として
バンドに加入したヴォーカリスト、ピート・ゲイジのソロ作です。
彼をフロントマンに据えたドクター・フィールグッドの新作が出た時、
私は「まだ続くんだ」と思って驚きました。アルバムはまずまずの出来。
ピートに関しても、なかなか良い歌い手、という以上の印象は持ちませんでした。
しばらくしてこのソロアルバムをレコード屋で見つけ、
馴染みの店だったのでその場で聴かせてもらい、
私はすぐに気に入って購入しました。
ピアノ弾き語りスタイルでブルースを、
それも超がつく有名曲ばかりをただ歌うという、ごくシンプルな作品です。
ピアノの無骨な音にも歌声にも、いわゆるプロフェッショナルな技巧は感じません。
しかしそのアマチュア臭さがかえって、妙に心に沁みて来るのです。
曲への愛着がストレートに伝わってきます。
1曲目の「聖ジェームス病院」に漂う枯れた芝生の匂いのような哀愁など、
沢山あるこの曲のカバーの中でもかなりの逸品に数えられるのではないでしょうか。
ピートは4年くらいバンドにいたでしょうか、脱退後、どうしているのか、
その消息を私は全く知りません。
しかし今でも名前を忘れることがないのは、このアルバムに
彼を単なる通りすがりと片付けてしまえないインパクトがあったからです。

CDショップで見かけた方、誰だこれ?と思わずに手にとって下さい。聴く価値ありです。