イグが退職した。





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イグとおいらは、3年近く同じチームではたらいていた。


お互い助けたり、助けられたりしながらやってきた。

イグは女性だから夜勤は組めなかったが、いろんな意味で相棒だった。

仕事の役割的にも、精神的な部分でも。プライベートでもよく遊んだ。


イグの怒っている顔を何度も見た。今だから言えるけど、ツライと泣いている顔もあった。

でもイグは、何より笑っているときが多かった。その屈託のない笑顔がおいらを勇気付けた。



たぶんこれからもイグとはよく会うことになるだろう。


旦那のダイゾーさんともおいらは仲良しだし、その他にもオーノさんやら、だーよしやら、

まめやらと、いろんなヒトのつながりのなかにイグとおいらはいるわけで、

またおいらたちは出会い、そして屈託なく笑い合うのだと思う。



でも、正直にいうとやっぱり寂しい。


一緒にシゴトをして苦楽をともにして来たからこそ、何でも言える仲になったのだ。

でもこれからは一緒にはたらくことはないのだなぁと思うと、おいらはちょと寂しさを感じるのであった。



送別会を終えたイグとおいらは、ふたりで帰りの山手線に乗った。


イグが餞別にとみんなから貰ったプレゼントは、

小さなイグひとりじゃとても抱えきれない量だった。荷物はおいらが持った。



「いっぱいもらったねぇ」


「そうねぇ、これだけもらうと、もう少し頑張れたんじゃないかって思うわ、なんてね、いひ」



笑顔を浮かべるイグ。

その笑顔はいつもの屈託のない笑顔とちょっと違った気がした。


今のこの瞬間、イグの心にある思いは、なんだろう。

ひとつの区切りのついた開放感か。ここまで頑張ってはたらいてきた疲労感か。


いや、イグの気持ちのなかにもやっぱり寂しさもあるんじゃないかな、とも思う。

でもそう思うのは、おいら自身が寂しいからなのかもしれない。




品川で山手線を降りる。

ふたり並んで遠く離れた横須賀線のホームまで歩いた。




電車はまだ来ない。

たくさんの荷物をホームに置いた。


ここからの荷物運びは、東京から横須賀線に乗ってイグを迎えに来る、

旦那のダイゾーさんへバトンタッチだ。




「ありがとね」 とイグは笑顔で手を振った。


「おつかれ、また」 とおいらも笑顔で言った。




おいらはイグに背中を向け、階段を上った。


両手に持っていた荷物の重みが、まだ手の感触に残っていた。





イグ、おつかれさま。 そしてこれからもよろしくね。