長年使っていた財布がとうとうぶっ壊れた。
小銭入れの底が大きく裂ける。
おしりのポケットに入れておくと、小銭がポケットのなかに落ち、
歩くとジャラジャラ音がする。
ゆえにレジで小銭を出すときは、おもむろに財布を抜き出したあとに、
再度ポケットに手を突っ込み、小銭をまさぐることになる。マヌケだ。
そういえばこの財布って、いつから使い始めたのだろう。
はっきりと覚えていない。
高校生入学の頃に母シゲコが買ってくれたのような気がする。
ということは、既に20年近く使っていることになる。
割とモノ持ちはよい方だが、
これだけ長く使ったものというのは覚えがない。
この財布との日々を思い浮かべる。
度重なる流浪のときもポケットに入っておった。
何度か落としたこともある。その度に運良く善良なヒトに拾われ、
春日橋派出所や大森警察署にとりに行ったりもした。
そう考えると名残り惜しい気持ちもするが、さすがに財布としては
もう限界なので、ここいらでその仕事を終えていただこうと思う。
おサイフ殿、おつかれさま。そして長い間ありがとう。
そして、ここまで長持ちする財布を贈呈いただいた母シゲコにも
感謝せねばと思う。
母シゲコは今年に入ってから、パソコンを買い与えれば、次はデジカメが欲しいといい、
デジカメを買ってやると、今度はいいプリンタが欲しい欲しいと毎日言い募ってくる
駄々っ子状態が続いているが、この財布に免じてプリンタぐらいは買ってやろうかなと思う。
財布とプリンタぐらい買えるか。ボーナス出るし。
親から貰った財布に穴が開いたことで、親のおねだりに財布の紐を緩めることになるとは、
いやはやなんとも因果なものだなと、ひとり苦笑いするイサムであった。(橋田壽賀子風のシメ)
