寒い朝だった。

歩き始めて15日目にして、今朝初めて雨に降られてしまった。

自宅を出る時に降ってなかったのでそのまま傘を持たずに出発したら、神社を出たあたりからポツポツ降り出した。
油断した。
これからは曇っていたら必ず傘を持って出よう。

今朝からはさらに距離を伸ばした。
今までの約2倍の距離にした。
速度も少し早めた。 歩く、、、という感じではなく、かといってジョギングといえるほどたいそうなものでもない。
こういうのをただ単に 「ジョグ」 というらしい。
ここまできてようやく 「散歩」 の域から脱出して、いよいよ 「スポーツ」 の体をなしてきた。

「おはようございます」

今朝は我々と同年代の男女二人連れが、すれ違いざまに挨拶してくれた。

どこの人だか知らない。




「ジョンソン」 という男がある。
スキンヘッドにヒゲ面。 二の腕には一面に梵字のタトゥー。 色黒の肌にギョロリとしてどことなく人の隙を見逃さない風情のその眼。
自ら “ヴードゥーボーイ” を標榜する彼は、自分が音楽の世界に携わっていなければ先ず知り合いになんてならなかったであろう“見てくれ”だ。

彼と初めて会ったのはJRBを始める少し前。 木屋町の某ブルースバーだった。
お互い偶然に客として同じカウンターで横並んだが、結局その日は特段の会話が成立したワケでもなく、オーナーのS氏に紹介だけしてもらって単なる挨拶程度に言葉を交わし店を出た。

ところがその後、どういうワケだか必ず数ヶ月に一度、どこかのライヴハウス、、、どこかの飲み屋、、、仕事中、、、なんでもない街角、、、に至るまで、バッタリと偶然に出会うことこれ多く、なんでや?? と思っていたら、つい先日も偶然に出会ってその謎が解けた。

彼の自宅が、拙店のご近所さんだったんである。

まあライヴハウスや飲み屋は別として、仕事中や昼間の街角でバッタリ出会うのはご近所さんなら至極当たり前のことである。


彼がステージで演奏するのは、古い古い戦前のブルースだ。
その風貌。その黒い声。傍らにはボロボロに古びたボストンバッグ。
ブルースが 「悪魔の音楽」 と呼ばれていた時代。あの時代独特のザラついた空気感に、彼はそのギターの第一音から瞬時にして会場全体を染めていく。
まるで本当に目の前でその時代のブルースマンが唄っているようだ。

彼はMCでよく喋る。
大体は次に唄う曲の内容の説明である。
それもあってか、何故か英語で唄っているのに詞の世界が心に入ってくる。
だから彼はブルースを唄っている、、、というより、“説いている” のだと思った。

彼の説くブルースは、本物の匂いがする。