大阪は河内長野というところに伯母が住まいしております。
今でこそほとんど交流はしていませんが、年若の頃は夏休みなどになりますとよく皆で遊びに出かけた記憶があります。
現在となってはさほど気になるものではなくなりましたが、まだ幼かった当時は 「地の人間」 であった伯母の亭主殿の見事なまでの河内弁を間近に聞くにつけ、なんたら破壊力のある言語であるよなあ、とある意味恐れ慄いたものでありました。

そういう夏休みの時期、やはり彼の地へ参りますとどこにいても聴こえてくるのは盆踊りの音。 自分が今もって京都では主流である江州音頭よりも河内音頭のほうにどことなく親しみを感じるのはそういう理由も無いワケではないと思います。

そんな河内音頭のなかにも唄われる明治26年に起きた大量殺人事件、「河内十人斬り」 。
その事件をモチーフに書かれた長編小説 「告白」 を、ようやく読了しました。



お盆明けからこちら、寝る前の5~10分の間でチビチビと読み進んでいたため、全800ページを越える大作は読み終えるのに結局ひと月以上を費やしてしまいました。

「人はなぜ人を殺すのか」 という帯の副題が妙に気を惹くこの作品。 河内での出来事を語った作品であるので、当然ながら登場人物のセリフは全編河内弁。 作者の町田康が大阪の人であるということもあって、一連のセリフまわしは実に自然でスムース。 それが故に逆に関西圏でないかたにはかなり読みにくいかもしれません。
ただ町田氏出身地あたりの泉州弁は、同じ大阪圏といえど河内弁とはややそのニュアンスも違うと思うので、そのあたりは事前にかなり下調べをされたようです。

主人公・城戸熊太郎とその弟分・谷弥五郎。 どこまでもどこまでも真っ直ぐな二人に、凶悪な殺人犯とはいえど、大いに興味の湧いた良い作品でありました。
今や河内音頭のスタンダードとなった次の歌詞とともに。

「男持つなら熊太郎弥五郎、十人殺して名を残す」

第41回谷崎潤一郎賞受賞作品。