
19の頃。 学校をサボってバンドばっかりやってた時に、亡くなった林健太郎に出会ったワケですが、その自分より2つ年下の健太郎から教えられたのがトム・ウェイツでありました。
極端にしゃがれた声。 ジャズや古典ブルースの匂い。 ナイーブな中にも鬼気迫るその雰囲気。 酔いどれ詩人。
正直、よう解らん、、、、というのがまだまだ鼻ったれた餓鬼であった当時の自分の感想であったと同時に、自分より若いクセになんたら渋い音を聴いとるなぁ、、、と健太郎に対して感心したもんであります。
そして 「あの事故」 から18年。 健太郎はここにいなくなってしまって、自分も齢40。 今になってようやくトム・ウェイツの音を、ちょっとぉ~~エエやないのぉ~、と思えるようになってきた餓鬼は、先日久しぶりに20年以上前に健太郎からもらった、彼が大好きだった映画のビデオテープを棚の奥から引きずり出して観てみました。

『ダウン・バイ・ロー』 。
1986年の映画にして白黒作品。
出演はトム・ウェイツの他に、ロベルト・ベニーニ、ジョン・ルーリー。
そして始まってのっけの音楽からトムの歌声、「ジョッキ・フル・オブ・バーボン」 。
やられっちまいました。
若かりし日に観た時はまったく気にもならなかったし、名前すら知らなかったんですが、自分の大好きなイタリア人俳優ロベルト・ベニーニが出てるのに先ず興奮。 そしてベニーニの代表作のひとつ、『ライフ・イズ・ビューティフル』 でベニーニの奥さん役だったニコレッタ・ブラスキが、これまたベニーニと恋に落ちる役で出ててさらに興奮。 そしてそして、なんたるカメラワークの妙。 どのカットをとってもメチャクチャ絵になってる。白黒画面、っていうのもあるからでしょうか。
トムとベニーニの共演が観れるだけでも大興奮、、、の自分を尻目に、物語は実に淡々と進みます。 男3人の笑えるほどに不器用な逃避行劇。
そしてラストシーン。
このラストシーンを観るだけでも、この映画を観る価値があるんじゃないでしょうか。 観終わってしばらくしてから、そう思いました。
『ダウン・バイ・ロー』 を観終わって、ようやく健太郎と、トム・ウェイツの話しができたような気がした18年目の夏の夜。
ありがとう。