もう少し若いころ、アメリカを旅した事があります。
最初の目的は本場のブルースを肌で感じること。
まあ最終的にその目論見はほぼ失敗に終わったわけですが、短期間ではあったものの色んな思い出をお土産に帰国しました。

現地時間の12月31日。
夕飯を済ませたあとホテルの部屋に戻り、テレビをなんとなく観ていたらロビーのほうから生バンドの演奏の音。
ああ、大晦日やしな~。やっぱりこっちの盛り上がり方は違うな~。なんてのん気に構えていたのが間違いでした。22時になり、23時になっても演奏は終わる気配をみせません。疲れていたんです。早く寝たくて・・・。
そして24時、歓声うずまく中バンドの演奏はクライマックスを迎えました。ああ眠れん・・・。
仕方なく僕は持っていたジャック・ダニエルをチビチビやることにしました。
先ほどから窓の外ではパトカーがひっきりなしに往来しています。

午前1時ころ、ようやくバンドの演奏が終わったようです。
おお!これで安心して眠れる。
僕はここぞとばかりにベッドにもぐり込みました。
う~ん、パトカーのサイレンがウルサイ・・・。

ウトウト・・・、ウトウト・・・。

・・・ん?隣の部屋に誰か帰ってきたようです。
大きな声でハシャギ喋る男女の声。
特に女のほうはかなり酔っているようです。
何を言っているのかはよく解りませんが、女が甲高い声で笑い、ハシャギまくり、男はそれを困ったようになだめている感じです。
比較的リーズナブルなホテルだったので隣室の声は丸聞こえです。
もー!うるさいなー!

そうこうするうち、なんだか男の口数のほうが増えてきました。女は時々笑うだけです。
しばらくそのような会話が続いた後、突然女が歌い出しました。信じられへん!曲はビートルズの「ヘルプ!」。
そして二人で大笑いしてやがる!ああ、なんてこと・・・。

・・・・・・・ん?・・・あれ?
突然静かになりましたよ・・・。
・・・・・・・・・・・。
なんだかあま~~いムード・・・。
「◎♀♂&●※@∞」
「$□◇♀&♂§」
・・・え~~、この先どうお伝えしてよいかわかりません・・・。

【閑話休題】

「事」が終了いたしましたのが3時過ぎでありました。
ようやく静かになった隣室。
怒りを通り越して、真っ白になってしまった僕は、トイレ行って寝よ・・・、とトイレで用を足し、水を流そうと・・・・・、水を流そうと、したら、おお~!のおお~~~! 詰まっているようで流れていかんではないか!!
これはもはや現実ではあるまい!きっと悪い夢をみているのだ!そうだ!そうに違いない!でないとしたらオレはこんなアメリカくんだりまで一体何をしに来ておるのだ!!許せん!!アメリカ!!

怒りに燃えた僕は一目散に部屋の電話の受話器を取り、フロントにコールした。淡々と電話に出るフロント。日本人のスタッフを呼べという旨を伝えると即答で日本人はいない、との冷淡な声。ならばと思い「トイレが詰まったんじゃ!ボケ!ワレ!しばくど!!」と言おうとしたがとっさに英語が出てこない。あう、あう、言う僕に不審そうなフロントの声。カバンの中からトラの子「美しい英会話ブック」を引っ張り出し、トイレが詰まったページをアタフタとめくり、ようやく見つけたそのままを 「ざ・れすとるーむ!だずんと・ふらあーーっしゅ!!」 と叫んだ。恐らくニュアンス的には 「トイレがお流れになってくださいませんのですわ!!」と怒りながら叫んだようなものだったんだろう。

しばらくしてヒスパニック系の大男がトイレのスポスポ(ああ!なんて言うんや?)を持って僕の部屋を訪れ、まったくよくあることのように涼しい顔でトイレを直し、チップを受け取って静かに帰っていったあとの部屋の窓の外には、まったく何も無かったかのように初日が昇るアメリカでの新年の思い出でありました。


PS、それ以来ビートルズの「ヘルプ!」を聴くとあの夜の事を思い出し、思わ ず赤面してしまいます(笑)。