骨

梅干しが潰れてしまった。潰れるのは社会の秩序と、心ある人たちの心だけかと思ってた。
雨が降りゃホロ付きの馬車が、城の裏手にうずくまり、二時間も三時間もその場から動かず、誰を待ってるのかなぁと、ぼくは双眼鏡を覗き込んで驚いた。
運転手の内定が決まった高校生の夢君が乗っていた。たずなを持ち、彼女が城に入る前にさらおうと、真顔だった。
城の中にはスパイがいっぱいいて、彼女のスマホも盗聴されてるから、裏庭の木影で待っていると電話出来なかったのだろう。
彼はぼくの作ったお弁当のシナチクに感動していた。
そのときその横を通りすぎる彼女に気づかず、彼女もまさか馬車の中に夢君がいるとは思わなかったので、チラリとも見なかった。
そのまま二年が過ぎた。
夢君も彼女も、みんな、骨になっていた。
おはようサマンサ!
ハートブレイクホテルにようこそ。
今日も3階の11号室で、おれの魂だけが待っている。
キミが、抱えきれないお骨を胸に抱えて泣く、彼の姿に気づいてくれることを祈ってる。