民主党が予想外の「自浄作用」を発揮し、死に体2トップが刺し違えた。
無論、この自浄作用は、国家国民のためでもないし、過去の失政の責任の明確化でもない。
参議院選がやばそうだと、さすがの民主党議員も気がついたからだ。


新代表・総理にはおなじみの菅直人が選出され、8日は組閣の運びだ。
メディアは管が非世襲、非官僚、非労組総理だと伝え、未だに民主党への未練がアリアリだ。

とはいえ、参議院選挙が終われば、小沢が動き出すという話も伝わっている。
選挙までは、見栄えがいい管にやらせて、選挙さえ乗り切れば小沢が仕切るという、去年の再現を狙っているようだが、国民が2年続けてこんなバカな話に乗るようでは、日本は壊滅してもしかたない。
小沢のこの発言は、むしろ自派の求心力を保つためには、そう言わざるを得ないということだ。

新代表の管直人は、反小沢、オリジナル民主党メンバーを重用する見通しだ。
鳩山を含め、オリジナルメンバーには、小沢一派に民主党を台無しにされたという思いは相当強い。
この連中は、オリジナル民主党の「オーナー」であった鳩山を支えるために、あえて小沢に屈従していたというだけであるから、小鳩体制が崩壊すれば、反小沢、反旧自由党の動きを先鋭化させるはずだ。
彼らの頭の中では、国民に選ばれたのはオリジナル民主党、国民に拒絶されたのは小沢民主党という整理であるから、少なくとも、かつての民主党への回帰策を強硬に進めてくるものと思われる。

当然、小沢一派にすれば面白い話ではない。
衆議院を中心に、小沢系、小沢チルドレンとよばれる議員は150人程度いるとされ、民主党では一大勢力だ。
この内訳としては、生粋の小沢の手下はせいぜい50人程度で、残りは再選もおぼつかない小僧だろう。
幹事長職を失った小沢が頼れるのは、この数だ。

管直人には2つの道がある。
小沢につくか、小沢を切るかだ。
結論は、後者だろう。

小沢と野合したことで、民主党は旧支持層をほとんど失った。
この事実がある以上、管が鳩山のように小沢に融和的な党内運営をするインセンティブは低い。
性格的にも、小沢とぶつかったとき、鳩山のように引くよりも、政権をぶち壊してでも管は自分の意見を通そうとするだろう。
管は、ゼロからパフォーマンスだけでここまでのし上がった男である。
管にとって第一に守るべきは自分のスタイル、イメージである。

権力至上主義の小沢的政治は、政策主体を主張してきたオリジナル民主党とは根本的に相容れない。
その二者が野合したのは、自民党という政治的妖怪が存在したからだ。
その敵を失った今、彼らが自民党以上にお互いを敵視していることに気がつくのは時間の問題だろう。

それが噴出するタイミングは、組閣直後、あるいは参院選直後だ。
予想されるのは小沢一派により権力闘争がしかけられ、管がキレる展開だ。
小沢一派に党内権力を握られればどういうことになるか、明確になった以上、この権力闘争に、分裂以外の結末はない。
旧民主党グループが党内を把握している現状から、おそらく、小沢一派が党を割って自由党を再結成するという結末になるだろう。逆に旧民主党グループには、党を割って出るだけの結束力はない。


小沢の腹は、キャスティングボートを握って、どちらに転んでも政権与党に留まるという、何度も繰り返してきた作戦だろう。
こういう数合わせのトリックで権力を取ることに何の躊躇もないところが、小沢が国民の支持を完全に軽視していることをよく示している。

しかしながら、自民党をはじめとする野党が小沢と組むかというと、かなり疑問だ。
管と小沢、どちらと組むべきかは、国民が否定したのが、オリジナル民主党なのか、小沢なのか、どう考えるかで結論は変わる。

そして、更に展開が読めないのは、少数与党となった管が解散総選挙に打って出るケースだ。
内閣不信任を突きつけられるケースも考えられるが、管陣営に少しでも知恵があれば、そうなる前に自ら解散すべきだろう。

そうなればまさにハルマゲドンとなり、政界再編どころか、ほぼゼロからの政界再生成となる。
当然ながら「チルドレン」連中のほとんどは政界から永久に消え去るだろう。

一見、政治的大混乱を招く解散総選挙は、日本にとってワーストシナリオに見えるが、考えられる中では、ベストシナリオだ。
言うまでもなく、ワーストシナリオは管が小沢に妥協して小沢政治が続くことだが、民主大分裂の後に、小沢グループが相当数を占める国会の数合わせで政権が作られれば、国民からの支持という基盤のない弱体政権が生まれることになる。

解散総選挙により、国民から最も高い支持を得た人間が総理総裁になるという憲政の常道を守ることが、結局は国家の舵取りにおいて最も重要なのだ。