「スシ」をテーマに経済や文化のグローバリゼーション(地球化)の過程を考察した本が米国で話題を呼んでいる。題して「スシ・エコノミー」。グローバリゼーションといえば“アメリカ化”の別名との指摘もある中で、スシがいかに世界へ羽ばたいたのか…。著者サシャ・アイゼンバーグ氏(27)に聞いた。

 アイゼンバーグ氏はフィラデルフィア在住のジャーナリストで、日本をはじめ、米国のスシ文化の中心ロサンゼルス、クロマグロを水揚げする
sushieconomy
マサチューセッツ州の漁港、マグロ養殖の現場であるスペインやオーストラリア、さらに新たな巨大市場としての中国まで取材し、この本を書いた。

 同氏は、スシを選んだ理由については「海からスシ・バーまでのマグロの旅ほど、複雑で活気に満ちたグローバリゼーションの実態を浮き彫りにする例はない」と語る。

 「食」はグローバリゼーションの実態を読み解く題材としてしばしば取り上げられてきた。

 「マクドナルドが好例だろう。地域のつながりや個人の尊厳を奪うとして反グローバリゼーション主義者の標的になる一方、(米ジャーナリスト、トーマス・フリードマン氏が提唱したように)豊かさを世界に広め、紛争防止に役立つと持ち上げられもする」という。

 しかし、画一的な味、マニュアル化された労働を「マクドナルド化」の特徴とするなら、「スシ・エコノミー」はひと味違っている。

 「漁師から仲買人、レストランの経営者にいたるまで、スシ・エコノミーは、親密な人間のつながりがなければ成立しない」。そうした昔かたぎの気質がスシの地球規模での発展に前向きな役割を果たしているという事実こそ、何よりの驚きだという。

 「地球規模の巨大ビジネスは、往々にして血も涙もない大企業が主役で、個人はその犠牲として位置づけられる。しかし、スシ・エコノミーでは、だれかがすべてを支配し、搾取するということはない」

 こうしたユニークな環境の構築について、アイゼンバーグ氏は日本人の特質が大きく作用したことを強調する。その特質とは、硬直した大企業文化ではなく、築地市場にみられるような柔軟なネットワーク文化だという。

 また、日本の外で生み出された「カリフォルニア・ロール」も、総体としてのスシ文化の重要な一部と評価すべきだと述べる。「ある文化がグローバル化する過程で、予想もしなかった要素が入り込むことは当然だ」

 地球規模でのマグロの乱獲や密漁といった「スシ・エコノミーの負の側面」は、結局のところ(貪欲(どんよく)な)消費者によって生み出されたもので、消費者が問題に気付いて意識を変えない限り、漁獲規制の強化などの措置を講じても新たな抜け道をつくり出すだけだという。ただし、「逆に言えば、新しい消費者文化が日本で生まれれば、日本は再び世界をリードできる」とも。同書は米国で5月に発売され、日本語への翻訳も交渉が始まっている。


寿司が世界規模のビジネスにつながることは日本人として誇りに思う。

マグロの捕りすぎによる規制は痛手だが、法規制をきちんと守り信頼を得てほしいものである。