今年の第50回TIFF(トロント国際映画祭)で観客賞(People's Choice Award)を受賞した『Hamnet(ハムネット)』。
『ノマドランド』で見事オスカーを獲得したクロエ・ジャオ監督の作品とあって、期待大で観に行ってきました!
結論として、わたしの中では今年must seeの1本であることは間違いないくらい良かったです![]()
今までシェークスピアが遺した作品の映画化は何本か見たことがありますが、これはシェークスピアのプライベート、特に妻を主とする家族愛を描いたもので、史実をもとにしたフィクションです。
原作は北アイルランドの女性作家、マギー・オファーレルの『Hamnet ハムネット』。
11歳で亡くなった息子ハムネットと、戯曲『ハムレット』は当時スペルも発音も同じことから、当然影響を受けたであろうと推測した上での創作です。
彼女はこの作品でジャオ監督と共に脚本も書いています。
ハムネットはシェークスピアの長男で、ジュディス(女子)と双子として生まれました。
出産シーンでジュディスは仮死状態で生まれますが、自然界から授かる不思議な力をもつ母アグネスの祈りによって蘇ります。
このシーンと共にとても印象的なのが、ハムネットの死です。
双子の不思議な力によって、ハムネットは当時猛威をふるったペストによって死にかけたジュディスの命を救います。
医学もテクノロジーも発達していない当時では、子供の死は、ある意味珍しくなかったはず。
そんな時代において、自然の力に身を委ねるしかない「死」。
その状況の中で、「子どもの死」をスピリチャル的に描くところに、当時の人々が信じた何か神的な信仰を見た感じがしました。
子を失った親の悲しみ。
特に母親にとっては地獄です。
その悲痛な母性愛を、シェークスピアの妻アグネス役のジェシー・バックリーが、これ以上ないくらいリアルに演じていて圧巻でした。
そしてシェークスピアの父性は、息子の死後まもなく書き上げた「ハムレット」に始まり、
その後の傑作を生むモチベーションとなっているのでしょう。
確かな研究結果は出ていないそうですが、シェークスピアの作品が、人間の内面、特に「死」を通しての悲劇を多数描いているところに、息子の死による喪失感が間違いなく影響しているのでしょうね。
創作家は、人生の中でさまざまな経験をすることで、その作品に深みが生まれます。
そして、その苦悩が人々に感動、共感を与える。
『ハムネット』では、シェークスピアの才能を信じ、彼と子供たちを支えた妻アグネスの悲哀を描きながら、同時にシェークスピアが彼の作品で表現する人間の悲劇の本質を教えてくれます。
愛する者を失う悲しみは、いつの世でも変わらない。
To be, or not to be, that is the question
先日発表されたゴールデングローブ賞には、作品賞、監督賞など6部門でノミネート。
オスカーでも間違いなく有力候補となるでしょう。
日本は来年4月公開予定。
機会があれば、ぜひご覧ください。!

