悪役（わるやく）・斬られ役2－－ 素朴な悪役－－

悪役で、忘れてはならないのが、吉田義夫。
やくざの親分や、悪代官は天下一品である。眼をむきながら死んでゆく。
吉田義夫も時代劇の終焉と共に、TVにも出ている。
結構人気だったのが、水木しげる原作の「悪魔くん」実写版でのメフィスト。
ずる賢く、そのくせ人（？）の良い役は最高であった。
その後も松竹の「男はつらいよ」シリーズにもでていた。
寅さんの夢のシーンでは結構回数が多かった。本編でも、ドサ回りの
劇団座長で出たが、律儀で腰の低い役柄の演技はさすがであった。



天津敏も特異な悪役であった。TV「隠密剣士」シリーズの常連悪役で、
風魔小太郎は当り役である。風魔小太郎は実在の人物で、背は見上げる程高く
怪異な容貌だったといわれるが、天津敏の風魔小太郎も中々「ええ感じ・・」だった。
実生活では、犬を可愛がるふつうのオッサンだったそうだ。
一度、新幹線で見たことがあったが、せったを履いたおっさんだった。
惜しいことに早逝したが、今居ればどんな悪役を演じていたのだろうか。


山形勲は悪役も、「ええもん」もこなした。悪役では、東映の任侠シリーズの一つ
清水次郎長シリーズ中の、黒駒勝蔵が良かった。影で悪を操るイメージがある。
黒駒の勝蔵は、インテリやくざのはしり的存在で、竹居の安五郎（ドモ安）の乾分
でもあったが、その後独立して黒駒一家を作り、次郎長とことごとく対立した後
尊皇攘夷にめざめ官軍に従軍した。異色のやくざであり、理知的な顔立ちの
山形勲がぴったりだと思う。
時代劇映画のあとは、TVで活躍したが、特に「剣客商売」シリーズの
秋山小兵衛役で出演した。端正な演技で好評だったそうである。
「渡海屋、おぬしも悪じゃのう・・」の悪代官・川合伸旺とは違って、
東映時代劇全盛期の悪役は、ずっと個性に溢れ、演技力の確かな連中だった。