その光景を見た私は頭が真っ白になり、

その場に崩れてしまいました。

 

 

元カレは慌てはするものの、私の方へは寄ってきません。

 

 

元カレの隣に座っている女は、

苦笑いを浮かべ、私と元カレの様子を伺っているように見えました。

 

 

そして・・・元カレが寄って来ない理由を・・・

 

 

ベッドの下に落ちている元カレの下着を見て理解しました。

 

 

そう、元カレは何も履いていなかったのです。

 

 

だからベッドから出るに出れなかった・・・

 

 

 

「さいてい・・・」

 

 

私はそう言って家を飛び出しました。

 

 

姉の家にも帰りたくなく、

かといってどこにも行き先はなく、

私は目的もなく歩き続けました。

 

 

元カレが連絡をくれなかった理由・・・

 

 

それは他の女がいたから・・・

 

 

私が内緒でかっちゃんと旅行に行ったから?

 

 

だからその仕返しのつもりであんな事したの?

 

 

私は悔しくて、この怒りをどうすればいいのか分からなくて・・・

 

 

いつの間にか1人で居酒屋に入っていました。

 

 

 

何でそんな所に行ったのか、そんな理由も覚えてなくて、

ただ1人でお酒を飲んでいました。

(何かオジサンみたいですが・・・w)

 

 

元カレは後を追っかけてもくれなかったし、

連絡もくれませんでした・・・

 

 

今頃・・・私がいなくなったのをいい事に・・・

なんて考えると怒りでどうにかなりそうでした。

 

 

 

何時間経ったかわかりませんが、

結構お酒も回ってきた頃、私はハルに電話をしました。

 

 

 

「もしもし?」

 

「あ・・・ハル・・・」

 

「ん?どうしたの?」

 

「・・・」

 

「ナナ?そういえば今日もすごい元気なかったけど・・・」

 

「彼氏が・・・浮気してた・・・」

 

「えっ?」

 

「散々私のこと殴ったくせに・・・結局浮気してたよ・・・」

 

「え、殴る!?えっ!?」

 

「明日・・・会社休む」

 

 

 

そう言って電話を切ってしまい、

その後もたくさんハルは電話してくれたけど、

ずっと出ませんでした。

 

 

 

少し眠たくなってきて、ウトウトしていると・・・

 

 

元カレから電話が・・・

 

 

「・・・もしもし」

 

「ナナ!?今、どこにいるの!?」

 

「・・・○○の居酒屋」

 

「今行くから待っててね!?」

 

「・・・・」

 

 

 

どうして電話に出たんだろう?

どうして居場所を教えたんだろう?

 

迎えに来てほしかったから?

謝ってほしかったから?

 

それならどうしてすぐに来てくれなかったの?

あんな女放っておいてすぐに来てくれなかったの?

 

 

しばらくすると、元カレはお店にやってきて隣に座りました。

 

 

 

「ごめん・・」

 

 

本当に申し訳なさそうに謝る元カレ。

 

 

そんな顔を見ていると、やっぱり私はこの人の事が好きなんだ・・・

 

最初にこの人を裏切ったのは私なのかもしれない・・・

 

ごめんね・・・

 

 

そんな気持ちになり、私は元カレを許そうと思いました。

 

 

それなのに・・・

 

 

  

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、ナナ。別れてほしいんだ」

 

 

私はまた頭が真っ白になりました。

 

すぐに迎えに来てくれた姉。

出来る限りの荷物を整え、

 

 

「姉の家に行きます」

 

 

とだけ、書置きを残して家を後にしました。

 

 

 

姉に全てを話して、きっと泣けば全てスッキリするんだろうけど、

なんだかそれは悔しくて、情けなくて、私は泣きませんでした。

 

 

どうせ、明日になれば元カレは謝罪のメールや電話を、

ひっきりなしにかけてくるだろうけど、

それは全部無視しなさいと姉に言われ、

別れるにしても、このまま続けるにしても・・・

私にとって少し考える時間が必要でした。

 

 

 

 

しかし・・・

 

 

 

元カレから連絡は一切ないのです・・・

 

 

私の書置きを見てないはずはない。

それどころか、こんな時間に私がいなくて、

不思議に思わないはずがない・・・

 

 

昼を過ぎても、夕方になっても、夜になっても・・・

 

 

連絡はありませんでした。

 

 

 

考えられるのは・・・

元カレは全く反省していないということ・・・

 

 

どうして連絡が来ないのか・・・

 

 

私はもうそればかり気になってしまって・・・

 

 

やっぱり何があっても元カレの事が好きなのかもしれない・・・

 

 

 

月曜日・・・

 

 

仕事が終わって、姉の家には帰らず、元の家に戻りました。

 

 

 

ちゃんと話したかった。

 

 

まだ持っていた合鍵で、

ドアを開けると・・・

灯りがついていたんです。

 

 

こんな時間に帰ってるんだ、

いや、もしかしたら落ち込んで会社休んでるのかもしれない、

もう暴力を振るわれた事は忘れよう、

全部、許して彼の元に戻ろう・・・

 

 

そう思って部屋に帰ると・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

私が急に帰ってきた事に驚いて、

急いで服を着ようとしている元カレと・・・

ベッドの下に下着を投げ置いて元カレの服に袖を通している・・・

女の人が、私を見ていました。

 

次の日、元カレは帰って来て、私に謝りました。

 

 

私はハルに電話をして、

かっちゃんはたまたま来ただけであって何も私にやましい事はないと

証明してもらって、

元カレの疑いはようやく消えた・・・と思っていたのです。

 

 

ゴールデンウィークが明けて、再び仕事が始まり、

またいつもの生活に戻りました。

 

 

相変わらず、元カレは帰りが遅いのですが、

変わったことが1つ。

 

元カレは私が普段帰る時間になると決まって電話をかけてくるのです。

 

 

そう・・・私がちゃんと帰っているのかを確認する為に・・・汗

 

 

 

結局はかっちゃんとの事が完全に晴れた訳ではなかったのです。

 

 

ただ、実際かっちゃんとは何もないし、

メールだって基本的には来ません。

 

 

だから私には何も非はなかったのですが・・・

 

 

 

 

ある日、元カレが9時過ぎに帰ってきました。

 

 

でも、今日はどうやらお酒を飲んでる様子。

 

 

「も~・・・飲んでくるなら飲んでくるって言ってよね?

 ご飯作ってあるんだからさ」

 

 

と、普通に一言言うと・・・

 

 

「うるせー!!俺の身にもなってみろよ!!」

 

 

と、また怒鳴り声。

今回は私にも非がなかったので当然応戦。

 

 

「はぁ!?何が俺の身なのよ!!」

 

「仕事はつれぇし、彼女は他の男と旅行行くしよぉ・・・」

 

 

その言葉にブチッ・・・メラメラ

 

 

仕事がしんどいのはいいんです。

慰めてあげられるし、男の人は彼女にしかそういう事って言えないでしょうから。

 

ただ、まだあの旅行の事を言ってるんだと思うと、

情けないやら、腹立たしいやらで・・・

 

 

 

「まだそんな事言ってるの!?

 ほんっと女々しいったらありゃしない・・・

 バカじゃないの!?」

 

 

すると、元カレの目つきは変わり、思いっきり私を叩きました。

 

 

本当に痛かったので、一瞬泣きそうになったけど、

それよりも怒りの感情が強かった私は、

元カレにやり返してやろうと向かっていきましたが、

酔っ払ってるとはいえ、やはり男の人・・・

 

 

簡単に突き飛ばされて、

蹴られたり、叩かれたり、殴られたり・・・

 

 

途中から・・・痛みは感じなくなりました。

 

 

ただ悲しくて、苦しくて。

 

 

どこかその状況を冷静に見ている私もいて、

元カレの顔を見ると、

それは私の知っている元カレではなく、

鬼のような顔をした・・・男の人でした。

 

 

 

しばらく暴力が終わると、

元カレは疲れたのか、その場に倒れこみ、そのまま寝てしまいました。

 

 

私は体中に痛みを感じ、

フラフラしながら鏡を見に行くと・・・

 

 

顔には血がついていて、

腕も、首も、すりむいていました。

 

 

明日が土曜日で良かった。

 

 

唯一の救いがそれだけでした。

 

 

土日もこんな所にはいれないと感じた私は、

近くに住んでいる姉に電話をして、

事情を話すと、姉は今すぐに迎えに行くと言ってくれて、

私は安心しました。

 

 

そして携帯を再び見ると・・・

 

 

かっちゃんからメールが・・・

 

 

 

「今日帰るの早かったね!

 今、みんなで飲んでるんだけど良かったら来ない?」

 

 

私が、ちょうど元カレに殴られている頃の時間だ・・・

 

 

素っ気無い、真っ黒なかっちゃんのメール。

 

 

それでもこの時の私には、

かっちゃんのこのメールが、

とても優しく温かく感じました。