午前中は二日酔いが原因でほとんど何も手に付かず、

ハルに迷惑をかけっぱなしだったんですが、

ハルは何一つ文句言わずに私を助けてくれました・・・あせる

 

 

もう本当に申し訳なくて、

自分自身も情けなくなってきてどうにかしたかったのですが、

頭の中がゴチャゴチャでどうにもなりませんでした・・・汗

 

 

昼休みになって割と強引にハルに連れ出され、

あまり会社の人が来ないレストランに入り、

 

 

「ねぇ、どうしたの?聞いていいか分からないけど・・・

 もしナナが大丈夫なら、何で別れる事になったのか・・・」

 

「うん・・・浮気されたんだよね・・・

 キャバ嬢と・・・大分前から・・・気付かなくってさ・・・」

 

 

 

 

私はハルに元カレとの出来事を全て話しました。

ハルは何も言わずに黙って聞いてくれました。

 

でも、どうしてもキャバクラで働いてる事だけは・・・言えませんでした。

 

 

そして話は終わり、

 

 

 

「そうだったんだ・・・ちょっとそれヒド過ぎるよ・・・」

 

「まぁね~・・・社会人になってちょっと変わっちゃったのかも・・・」

 

「う~ん・・・」

 

「元々そういう人で、私が見る目がなかったってのもあるけどねw」

 

「そんな・・・」

 

「まぁもう大丈夫なんだ♪

 ってか、今別れられて良かったし。

 これでさ~結婚とか本気で考えちゃったりしてたらキツイじゃん?」

 

「・・・うん。ねぇ本当に大丈夫なの?」

 

「もちろんっニコニコ

 

「もう昼休み終わっちゃうけど・・・

 今日の夜あいてる?2人でご飯でも行かない?」

 

「あ・・・ごめん・・・今日はちょっと用事があるんだ」

 

 

当然、夜はキャバクラなんです・・・

 

 

本当にハルが優しくて、泣いてしまいそうになったけど、

昼間だし、泣くなんて悔しくて我慢しました。

 

 

ハルに話を聞いてもらえて、

少しだけ頭の整理も出来たけど、

全然大丈夫なんかじゃなくて、むしろ整理された分、

余計にショックが大きくなってきて、

午後もやっぱり仕事は手に付きませんでした・・・

 

 

 

 

会社を上がって、私はその足で夜の店へ・・・

 

 

いつまでこんな日が続くんだろう・・・

 

 

大学の時に友達が失恋した時は、

 

 

「今はすごい悲しいけど、絶対時間が解決してくれるよ」

 

 

・・・なんていつも言ってたんですけど、

実際、いざ自分の事となると本当にいつになったら、

忘れられるんだろう・・・

 

 

私がちゃんと毎日食事を作らなかったからいけなかったのか・・・

もっと優しくしてあげたら・・・

もっとキレイだったら・・・

って、今更考えても無駄な事ばかり考えてしまって・・・

 

 

挙句の果てには、

 

 

「おい!!お前聞いてんのか!?」

 

 

ってお客さんに怒られる始末・・・

 

確かにキャバクラで話聞かないキャバ嬢なんて最低・・・ダウン

 

完全に被害妄想に入ってた私は、

仕事もプライベートも全然ダメで・・・

私なんか、いる意味あるのかな・・・なんて思っちゃって汗

 

 

そしてそのお客さんが帰った後に店長に呼ばれて、

 

 

「何かあった?もしあれだったら今日は帰る?

 お客さんも少ないし、無理しなくてもいいよ?」

 

 

と、言ってもらいましたが、

帰っても1人で悩んでしまうだけなので、

働かせてもらうことにして、

やけっぱちのように笑顔を作って接客しました。

 

 

 

そして21時が回った頃、

お客さんがトイレに立って、おしぼりを持って待っている時に、

新しいお客さんが案内されてきて、

 

そのグループの1番最後尾にいたのが・・・

 

 

 

かっちゃんでした・・・

 

 

完全に目が合ってしまい・・・

 

 

「あ、あれ?福原さん!?」

 

「う、うそ・・・」

 

「え!?え・・・え~~!?」

 

 

驚くのも無理ありません・・・

 

 


結局、私は頭の中が真っ白になり、

周りでカップルが楽しそうに会話してるのを

見てるのも、聞いてるのも耐えられなくなり店を出ました。

 

 

大して酔っ払いもせず、

フラフラと歩いてるといつものように・・・

 

 

「こんばんは~。お姉さんちょっと話聞いてもらえない?」

 

 

キャッチの男の人が・・・

 

 

何も言わずに、何も考えずに立ち止まると

どんどん話を進める男。

 

 

 

 

 

 

「私、働いてもいいよ」

 

 

私は言ってしまいました。さらに・・・

 

 

「今から働ける?」

 

 

その言葉に男は多少ビックリはしたものの、

喜んで店まで案内されて、

店長に会わせられました。

 

 

当然、会社はアルバイト禁止なので、

それだけは上手くやってくださいとお願いし、

早速ドレスを選んで、私はホールに出ました。

 

 

つい数時間前の悪夢を振り払うように、

精一杯の作り笑顔をして酔っ払ってるお客さんを接客しました。

 

 

 

 

私だって目一杯メイクして、

キレイなドレスを着て、満面の笑顔をすれば・・・

 

 

あんな女に負けないっ

 

 

あっという間にたくさん指名を取って、有名になって、

いつか『あの男』がこの店に来た時に驚かせてやる。

 

 

そして後悔させてやる。

 

 

私を捨てたことを・・・

 

 

 

 

私はそんな事しか考えられず、

ラストまで必死に働きました。

 

 

休憩中や閉店後に話して、

仲良くなった女の子に事情を話して、

とりあえずその日だけは泊めてもらう事に。

 

 

姉にはこれ以上心配はかけたくないから、

次の日仕事を休むつもりだったので、

お昼にでも不動産屋さんに行って家を探さなきゃ。

 

 

 

 

朝、ハルからまた電話やメールが入ってきたけど、

とてもじゃないけど返事をする余裕がなくて、

申し訳ないと思いながらも無視をしてしまいました・・・

 

 

結局、不動産屋に行く気力も出なくて、

夕方、また私は行ってはいけない夜の街へ・・・

 

 

また私は前の日と同様精一杯接客をしました。

 

 

 

 

どんなにいい笑顔を作っても、

胸には本当に穴が空いたように空しくて、

私はこの先一体どうすればいいのかわからなくなっていました。

 

 

最後に着いたお客さんに、

アフターを誘われて宿代わりにすればいいかなぁとも思ったけど、

さすがに次の日も会社を休むわけにはいかなかったので・・・

私はそれを断わり、その日はホテルに1人で泊まりました。

 

 

 

 

そして、二日酔いのままの酷い顔で、会社に行きました。

 

 

勝手にサボって休んだ私を、

本気で心配してくれるハル・・・

 

 

素直になれない私は、

 

 

「あ、もう全然大丈夫!吹っ切ったから!」

 

 

と、夜と同じ作り笑顔でハルに対応してしまいました・・・

 

 

 

 

本当は助けてほしかった・・・

 

 

全部聞いて欲しかった・・・

 

 

 

 

私は自分のこの性格が、

本当に憎くて憎くて仕方がありませんでした・・・

別れる・・・?別れるってどういう事?

 

 

元カレの言っている事がよくわからなくて、

たぶん私はしばらく黙っていたと思います。

 

 

 

 

 

「急な事でごめん・・・

 それに・・・浮気したのは俺だから・・・

 俺がこんな事言い出すのはおかしいっていうのは、

 もちろん分かってるんだけど・・・」

 

「・・・何で?」

 

「・・・好きな人が出来ちゃったんだ」

 

「・・・浮気相手?」

 

「うん・・・」

 

「別れたくないよ・・・」

 

「ごめん、もうダメなんだ」

 

「どうしてよ!!何でずっと一緒に付き合ってきたのに、

 そんな知り合ったばっかの女の方がいいの!?」

 

「・・・・」

 

「・・・・まさか・・・・・・・・・・・・・知り合ったばかりじゃないの?」

 

「・・・うん」

 

「・・・・そんな・・・・・」

 

「実は・・・入社して・・・歓迎会でキャバクラに連れて行かれて・・・

 もちろん最初は変なつもりなんかなかったんだよ!?

 でも・・・そこで知り合った彼女がさ・・・」

 

「・・・・」

 

「何か色々悩みを抱えててさ・・・

 最初は話を聞く位だったんだ・・・

 仕事の帰りにちょっと居酒屋でお酒飲んで・・・」

 

「仕事の帰りにって・・・まさかいつも仕事で・・・って?」

 

「・・・うん。仕事はいつも6時か7時には終わってた。

 彼女と・・・会ってたんだ」

 

「うそ・・・」

 

「ごめん・・・」

 

「・・・・」

 

「お前の荷物は新しい住所が決まったらそこに送るから。

 鍵は・・・ポストに入れといて。

 俺はメモリも消すし、もうお前とは連絡取るつもりはない・・・

 でも・・・もしお前がまだ整理が出来てないって言うんだったら、

 連絡はくれても・・・」

 

「バカじゃないの!?誰が連絡なんかするのよ!!」

 

「・・・分かった。じゃあ・・・」

 

 

 

そっと席を立ち、私に背を向ける元カレ。

 

待って、もう少し話をしたい、もう1度考え直して欲しい・・・

 

今、言わなきゃ・・・

 

最後くらい意地なんか張っちゃダメ・・・

 

待ってと言おうとしたその時・・・

 

 

 

 

「ちょっとどこ行ってたのー!?」

 

「あ、ごめん・・・」

 

 

私の目に入ってきたのは・・・浮気相手・・・

 

 

 

「ちゃんと別れ話した~?」

 

「え、あ・・・」

 

 

と、しどろもどろになりながら、

恐らく目で合図したんでしょう・・・

 

 

私と目が合う浮気相手・・・

 

 

私はどんな目をしてたのか分からないけど、

明らかに、その女は・・・

 

 

 

 

「フッ・・・」

 

 

 

笑ったんです・・・

 

 

そして・・・

 

 

 

 

「元カノ?でいいのかな?w

 聞いてたイメージと違うね。結構地味系じゃん」

 

 

 

私に聞こえるように・・・

 

 

勝ち誇ったかのように・・・

 

 

そしてその女は元カレの腕を取り、店を出て行きました・・・