沢山ある選択肢の中であの人は地球で命を散らした。


その本当の理由を私はずっと知りたかった。


私はその答えをいつも探していた・・・




エイジ788

ブルマ「な!!停電!!ちょ、嘘でしょ!!折角、まとめたデータが全部パアなんて・・・最初から一からやり直し?!」

 

トランクス「何、やってるんだよ、母さん。ブレーカー飛ばすほどの電力使って。

 

ブルマ「こんなに電力、必要とは思ってなかったのよ。これじゃ、どの道使い物にならないわね。はぁ」

 

トランクス「あ、そういえば。タイムマシンの燃料、大分溜まっただよね」

 

ブルマ「そうそう。まあ、なんかの時に必要になるかもしれないし・・・でもまだ、片道分くらいかしら」

 

トランクス「じゃあ取り敢えず片道分だけでも設置してメンテでもしてこようか」

 

ブルマ「そうね、じゃあお願いね。はい、これが燃料と工具。・・・向こうのみんなはちゃんとやってるかしら」

 

トランクス「気になる?じゃあ、往復分の燃料貯まったら母さん、行ってきたら?」

 

ブルマ「え?」

 

トランクス「父さんに会いたいんじゃない?」

 

ブルマ「ば、馬鹿言ってるんじゃないわよ。む、向こうには私の家族がいるのよ」

 

トランクス「母さんがタイムマシンこのままにして燃料貯めてる理由、考えたら母さんが向こうの父さんが生きている世界見たいんじゃないかなあって・・・」

 

ブルマ「変な勘ぐりするんじゃないの。メンテするならさっさと行ってきなさい!!」

 

トランクス「はいはい、そうだ、母さん、今度紹介したい人がいるんだ」

 

ブルマ「え?」

 

トランクス「じゃあ、行ってきます」

 

ブルマ「な、何よ。ちゃんと説明しなさいよ。全く、」

 

人造人間を倒したトランクスのお陰で平和な日々が訪れ、漸く家族で暮らす平和な日々は永遠に続くものだと信じて疑わなかった。

 

でもそれは儚い夢だったのだと気付くのに時間はかからなかった。

 

ブルマが帰りの遅いトランクスを迎えに行った先はトランクスは帰らぬ人となっていたのだった。

 

 

 ブルマ「・・・トランクス」

 

トランクスは既に息絶えて、あったはずのタイムマシンは跡形もなく消えていた。

 

 

ブルマは狂ったように泣き叫んで居た。





雨の中、白い煙が天に登っていくのをブルマはぼんやりと眺めていた。


自分だけこの世界に取り残されてしまった。


自分はこれから何を生き甲斐に生きて行けばいいのだろう。


私はトランクスがいたからここ迄、頑張れた。


 

壊す事しかしなかったあの人が

 

唯一、初めて生み出したたった一つの命・・・トランクス


あの人が残してくれた命。


それがあったから頑張れた。


形として残してくれた確かな証。


あの人との間にあった紛れもない事実。




孫くんが病に倒れ、


目標を失ったあの時、



プライドが高かったあの人が地球に留まった理由。


期待していいのだろうか。


答えは聞けないまま、 地球で命を散らした最期。





ブルマは墓碑にhope という文字を刻印してもらった。


トランクスがタイムマシンに刻んだ言葉たった。


ブルマ「あんた、この言葉好きだったわよね。トランクス」


ブルマはその文字に触れながら、ぼんやりと呟いた。


その隣にはベジータの墓碑が並んでいた。


しかし、ベジータの遺体は見つかることはなく、その中は空洞だった。


ブルマ「まるで今の私の心の中みたいだわ、ベジータ。あんたが私に遺してくれたもの、やっと平和になったのに失っちゃった。もう、何も残ってないんだわ」


あの時、タイムマシンにはまだ、片道の燃料しか入っていなかった。トランクスを殺してタイムマシンに乗ったものが戻ってくる事はないことだけが唯一の救いだった。


ブルマは一人になって遠い昔を思い出していた。


 

ドラゴンボールを探していた頃が懐かしい。

 

あの頃のみんなはもう誰もいない・・・

 

孫君

 

悟飯君

 

そして


みんな


ずっと見送り続けて、


私だけ歳を重ね、


苦労して、あの子にもずっと辛い思いさせて


ねえ、やっと手に入れた平和だったのよ。


最後の最後で、


トランクス迄奪って行くなんて


寂しすぎるわよ。


ねえ、ベジータ、


よく頑張ったわよね、


私。



誉めてよ。


抱きしめてよ。


ねえ、ベジータ。


貴方に会いたい・・・




誰かの変わりに泣いてくれてるみたいにその日は1日中雨が降り続けていた。


そして、ブルマの目の前にストレートの黒髪の女性が傘をさして立っていた。


マイ「あの・・・トランクス・・・さんは?」


躊躇いがちにブルマに聞いているマイの姿がそこにあったのだった。