エイジ770

クリリン「ブルマさん、二次会の会場の提供とセッティング、ありがとうございました」

 

ブルマ「別にお礼なんていいわよ。私もしてみたかっただけだから。結婚式の二次会で夏祭り風なんて」

 

クリリン「18号さん、こういうの、経験したことないから・・・少しでもこういう雰囲気で楽しんでもらえたらと思って・・・」

 

ブルマ「おかげでトランクスも悟天君も大はしゃぎよ。悟飯君がしっかりお兄ちゃんして面倒みてくれるし私の方もベジータに参加させる口実が出来たしね。こっちこそ感謝よ」

 

クリリン「ドレスコード【浴衣】にして良かったです。18号さん、めちゃ浴衣姿も似あってて・・・」

 

ブルマ「でも肝心の新婦がいないけど・・・」

 

クリリン「あ、二次会は自由にしていいからやりたいんだと言ったら、渋々OKしてくれて・・・」

 

ブルマ「きっと照れてるのよ。さっきの結婚式は素敵だったわよ」

 

クリリン「俺には勿体無いくらいの花嫁です。ところでベジータは?」

 

ブルマ「あー、あいつもこういう集まりは好きじゃないからね。でも今日の夕食はここに出ている屋台だけだからどっかで腹ごしらえしているはずよ」

 

クリリン「そうでしたね。お二人の時もあんなに豪華な披露宴に新郎が欠席したくらいでしたものね。俺もその対策も兼ねて強制的な披露宴じゃなく自由行動の夏祭り風二次会にしたから。・・・ちょっとでも18号さんも楽しんでくれて笑顔がみれたらなあって」

 

ブルマ「フフ、まあ、ツンデレのとこは似てるとこあるから・・・わかるわ・・・その氣持ち・・・」

 

 

 

夕日が差し込んで、地平線に太陽が沈みかけている頃だった。

 

ベジータは浴衣を着たまま、人混みから外れた庭先の木陰に足を踏み入れた時、人影を見つけた。

 

ベジータ「・・・新婦がこんなところで何をしている?」

 

18号「それはこっちの勝手だろ。お前こそ、こんなところで」

 

ベジータ「ここは俺様の庭だ。今日はブルマが勝手に屋台などを持ち込んで祭り仕様にされただけだからいい迷惑だ・・・」

 

18号「その割には両手いっぱいに食べ物を持って身なりも様になって充分楽しんでいるようにみえるがな」

 

ベジータ「貴様も人の事が言える立場か?」

 

共に屋台の食べ物を持ち、浴衣姿で、互いに背を向けるように18号の佇んで腰掛けている大きな木の根元の反対側にベジータも腰掛けた。

 

18号「・・・この場所は落ち着くな」

 

ベジータ「ああ・・・一人で庭に居る時は大抵ここにくる」

 

18号「・・・あれから3年か・・・」

 

ベジータ「・・・そうだな。・・・貴様は何故、結婚した?」

 

18号「その言葉、そのまま返す。お前だって先月結婚式をしたんだろ?」

 

ベジータ「・・・けじめをつけたまでだ」

 

18号「けじめ?」

 

ベジータ「・・・俺には・・・ブルマとの間に・・・ガキがいる。唯一、俺の血をひく・・・血縁だ」

 

18号「・・・それだけか」

 

ベジータ「どういう意味だ?」

 

18号「私はもしかしたらお前も私と同じ気持ちかもしれないと思っただけだ・・・」

 

ベジータ「同じ・・・氣持ち?」

 

18号「ああ・・・正直、この感情にまだ素直に慣れていない・・・戸惑うことばかりだ・・・それに相手はずかずかと私の心の中に入り込んでくる。そんな奴は初めてだった・・・おかしなことに私はそれを不愉快に思うどころか・・・心の奥が熱くなって心地よく感じたりするんだ・・・」

 

ベジータ「・・・」

 

18号「孫悟空を倒すだけの為に造られた私が・・・殺すだけの目標しかない私が・・・目標していた孫悟空が居なくなり・・・生きている意味さえ分からなくなった敵だった私を・・・クリリンは受け止めて・・・必要としてくれている」

 

ベジータ「・・・全くだ・・・地球人はどいつもこいつもお節介が過ぎる・・・気付くと側にいる」

 

18号「どうせ・・・何もない残りの人生なら・・・必要としてくれている奴の側にいても構わないじゃないかと・・・」

 

ベジータ「・・・ああ」

 

18号「それに・・・結婚したら私の中で何か吹っ切れそうな氣がしたからだ。新しい自分でも知らなかった私になれるかもしれないと・・・お前の結婚式の映像を見てそう感じた・・・」

 

ベジータ「・・・は?」

 

18号「どうした?」

 

ベジータ「え、映像だと?」

 

18号「ああ、結婚式の参考にクリリンが見せてくれたぞ!・・・あのキスはすごかったな。あんなに夢中になれるものが戦い以外でお前もあったとはな」

 

ベジータ「き、貴様もさっき、挙式で人前でしただろうが!!あれは段取りで仕方なしにだ!!」

 

18号「私のは軽くしただけだ。安心したよ。ベジータもそんな風に感情が露わになるくらい相手が大切なんだな・・・私もいつかそうなるかも・・・な」

 

18号はベジータの反撃が出る前にその場を立ち去った。

 

ベジータ「このやろう!!」

 

振り返った時には18号はクリリンの元へ向かってすでに姿はなかった。

 

気を感じない18号を追うのを諦めたベジータは頬が赤く染まっているのを感じていた。

 

ベジータ「・・・くそったれ・・・貴様も・・・同じだ・・・」

 

 

日が暮れ、夏祭りの照明が幻想的に燈り始めた頃、ブルマがベジータを探しにやってきた。

 

ブルマ「あ、やっぱりここにいたのね。もうすぐ打上げ花火が始まるわよ」

 

ベジータ「・・・打ち上げ花火ならここでも見れるだろう」

 

ブルマ「それもそうね」

 

ブルマは当然のようにベジータの隣に腰かけた。

 

ベジータ「戻らんのか?」

 

ブルマ「人前でくっつくの、貴方、嫌がるじゃない」

 

ベジータ「・・・勝手にしろ」

 

ブルマ「はい、これ、ベジータの分」

 

ベジータ「なんだ?」

 

ブルマ「2次会参加者への二人からの贈り物よ」

 

ベジータ「?」

 

ブルマ「クリリンらしいセンスよね。線香花火の詰め合わせなんて」

 

ベジータ「これも花火か?えらく小さくて頼りなさそうにみえるが・・・」

 

ブルマ「こうやって火をつけてね。丸く弾くのを待つの。乱暴に扱うとすぐ玉が落ちて消えちゃうから意外と難しいのよ。・・・貴方には無理かもね」

 

ベジータ「なんだと・・・貸してみろ!」

 

ブルマ「あ!ほら、落ちちゃったじゃない!!だから丁寧に扱わないと」

 

ベジータ「フン!最初からやればいいんだろ・・・」

 

ブルマ「じゃあ、どっちが長くもつか、競争してみる?」

 

ベジータ「下らん・・・」

 

ブルマ「あら、自信ないんでしょ」

 

ベジータ「そんなわけないだろ。相手してやるからさっさと火をつけろ」

 

ブルマ「フフ・・・」

 

ブルマはベジータの持っている線香花火に火をつけたあと、自分の花火にも火をつけた。

 

線香花火はくるくると燃え上がり丸い玉が光始めた。

 

ベジータ「・・・俺の方がお前のより大きいな」

 

ブルマ「あら、そんな事ないわよ」

 

ブルマは線香花火の大きさを比べるために花火を側に近づけた。

 

ベジータ「あ・・・」

 

ブルマ「あら・・・」

 

花火の二つの玉はくっついて一つの一回り大きな玉となり、そのまま、ぱちぱちと弾けて光始めた。

 

二人の目が合った。

 

ベジータは花火の持っていない方の手でブルマを引き寄せ、唇を重ねた。

 

線香花火が燃え尽き、玉が落ちた頃には二人はそのまま抱き合ってキスを何度も交わしていた。

 

そして夜空には大きな花火が花咲いてキラキラと鮮やかに鳴り響いていた。

 

 

 

 

エイジ780

ベジータが第6宇宙の戦士二人相手に対戦している頃、18号はクリリンと第4宇宙の戦士と共闘していた。

 

そこで戦っている18号は嬉しそうにクリリンに微笑みかけていた。

(ドラゴンボール超99話より)

 

あれから10年の歳月が流れて、二人の間にはマーロンも生まれ、宇宙の生き残りをかけて18号は愛する夫と共に寄り添いながら敵を倒している姿があった。

 

ベジータ「・・・フン。人前でいちゃつきやがって・・・貴様の方がよっぽど・・・」

 

ポタモ「よそ見してると怪我するぞ!!」

 

ベジータ「このベジータ様をなめるんじゃねえ!!こっちはちっとばかりイラついてるだ!!はああ!!」

 

 

消滅するかもしれない最後の瞬間まで伴侶と共に同じ空間にいられる二人に軽く嫉妬を覚えるベジータがいた。

 

そして隙が出来た瞬間、クリリンはフロストに場外へ落とされた。

 

 

18号「・・・私は・・・このかけがえない時間を・・・これからも消滅させるつもりなんてないよ。クリリン、見守ってくれよな。私はあんたがそこにいれば戦えるから!!」

 

生き残りをかけた力の大会はまだまだ序盤だった。

 

そして10年前とは明らかに大きく愛が育まれていることを感じている18号の姿があったのだった。