エイジ777
運がいいのか、悪いのか、俺は2度目の生還を果たした。
そして何事もなかったように日常の日々が過ぎていった。
死んだときにはもう2度と生き返るとは思ってもいなかったし、一日だけ命をもらってカカロットと魔人ブウを倒す協力をした時もまさかこの世に戻れるとは思ってもみなかった。
戦いの最中、ドラゴンボールで提案した願いごとにまさか俺まで生き返るとは予想していなかったのだ。
死んだのだからとこれで最後だと潔く、カカロットをNO1と認めた俺がいたものの、生き返ってこうして日常に戻ってみると、やはりNO2のままでの俺では嫌氣が差し、奴を超えてやるという野心が芽生えていた。
そして、家族に対しても、生き返ることが出来るならもっと素直になろうと思ってはみたものの、二人を目の前にすると氣恥ずかしさが勝って、態度は変えることが出来ないでいた。
でも、心の中でははっきりと俺はあいつらを家族として受け入れている自覚がある俺がいた。
そんな俺の心を見透かすように俺の息子はまっすぐ俺の目を見て言って来た。
トランクス「パパ・・・俺と約束したこと覚えている?」
忘れるはずがない・・・遊園地の約束だろ・・・
ベジータ「・・・いったい何の話だ?」
トランクス「・・・一発当てたら遊園地連れて行ってくれるって言ったじゃん」
ベジータ「ああ・・・そうだったな。・・・いつ行きたい?」
トランクス「あのさ・・・パパ。その約束さ、遊園地じゃなくてもいい?」
ベジータ「・・・そうだな。約束してから色々ありすぎて大分経ってしまったからな。・・・遊園地じゃ不満か?」
トランクス「ママも一緒に・・・俺、家族で旅行したい・・・」
ベジータ「・・・」
トランクス「俺・・・家族で・・・旅行とかしたことないから。他の学校の奴とかみんなの話聞いたりすると旅行とか当たり前なんだよね」
ベジータ「・・・そんなもの、比較するものじゃない。旅行なんてお前も誰か誘って行きたければいつでも行けるだろ」
トランクス「・・・俺は・・・パパとママと一緒に行きたいだ」
トランクスは真剣な瞳でベジータを見ていた。
ベジータ「・・・わかった、好きにしろ。だが、ブルマ・・・ママは仕事で休みなんか取れんだろ。ここの所、忙しそうだ」
トランクス「だったらパパが聞いてみてよ」
ベジータ「なんで、俺が?お前が聞けばいいだろ?」
トランクス「ママ、忙しくて朝も早いし・・・帰りも僕が寝た後に帰ってくるから聞けるわけないじゃん。ママと一緒に寝てるパパが聞いてよ・・・」
ベジータ「・・・ったく」
その日の夜もブルマの帰りは遅かった。
ブルマ「あら?今日は起きて待っててくれたの?」
ベジータ「たまたまだ・・・読みかけの本があったからだ」
ブルマ「ふうん・・・シャワー浴びてくるから」
ベジータ「・・・ああ」
ベジータはいざとなると聞くタイミングがつかめないでいた。
・・・なんで俺がこんなに氣を使わんとならんのだ・・・なんて言って切り出せばいいんだ?
シャワーを浴び終わったブルマはそのまま髪を拭きながら、ベッドの背にもたれかかってるベジータの隣に身体ごと寄り添ってきた。
ベジータ「・・・なんだ?そんな氣分なのか?」
ブルマ「あら?こんなに遅い時間まで寝ずに起きて私の帰りを待ってたのはそういう事じゃないの?」
ベジータ「・・・まあ・・・いいか。終わった後でも・・・」
ブルマ「・・・何が?・・・あっ!」
そのまま二人は甘いキスをしたかと思うとベジータは、シャワーを浴びたばかりの髪がまだ乾いていない状態のブルマを抱いて互いの存在を確かめ合うように重なり合っていた。
シャンプーの香りが残るブルマの柔らかでぴったりと吸い付くような湯上りで火照った身体が俺を求め絡みつく感覚がなんとも言えなくなる。
ブルマは俺が命を絶って生き返った後、時々不安になるのか俺がここにいる事を確認するがごとく何度も何度も求めてしがみ付いてくる。
その度、俺の心の奥が切なく熱くなり、刹那の欲情の海に身を沈める。
ベジータ「ブルマ・・・」
俺はここにいる・・・お前の側にいる。
ブルマ「ベジータ・・・私を・・・離さないで・・・」
こいつをこんなに不安にさせたのは俺だ・・・普段、見せない表情をこの刹那に垣間見る。
ベジータ「・・・ああ」
2度と離しやしない・・・そう思いながらも、それでも言葉では発することが出来やしない。
ブルマ「ベジータ・・・お願い・・・」
言葉にしない代わりに俺は俺の命ごとこいつを丸ごと抱きしめて俺を深く刻み付ける。
ベジータ「俺を・・・感じるか?」
愛してる・・・誰よりも深く・・・。ブルマの切なげな表情が俺を捕えて離さない・・・
ブルマ「・・・うん・・・キスして・・・」
それは誓約の印の如く、ブルマに唇を重ね合わせる。
ベジータ「ブルマ・・・」
俺は愛しい名前を呼んで・・・共に一つに溶け合い恍惚の光に包まれる。
ブルマ「ベジータ・・・一緒に・・・」
混じり合った二人の氣ははるか遠くへ意識を誘い、心が解放される。
ブルマはようやく安心して俺の腕に抱かれて眠る。
ベジータ「・・・起こすわけにもいかんな・・・」
翌朝・・・目を覚ましたころにはブルマはもう出掛けていた・・・。
トランクス「パパ、ママは休み取れそう?」
ベジータ「・・・いや・・・まだ、聞いてない」
トランクス「ええっ?!なんで?約束したじゃん」
ベジータ「・・・お前には分からない大人の事情があるんだ!!」
トランクス「何?それ!」
数日後の夜・・・ようやくベジータはブルマに伝えた。
ベジータ「ブルマ・・・お前の仕事の休みはいつだ?」
ブルマ「・・・え?いつって言われても・・・」
ベジータ「・・・トランクスが・・・家族で旅行したいそうだ・・・休みは取れるのか?」
ブルマ「・・・調整すればいつでも・・・」
ベジータ「は?・・・お前やたら忙しそうだったじゃないか?」
ブルマ「だって・・・私、社長よ。休めって言えば忙しくてもそれくらいはいつでも調整くらいはできるわよ」
ベジータ「・・・なんだ。聞くまでじゃなかったのか・・・」
ブルマ「トランクスの方がそんなこと知ってるわよ」
ベジータ「・・・!!あいつめ・・・」
ブルマ「ねえ・・・そう聞いてくることは貴方も旅行したいってことよね?」
ベジータ「そんなことは言ってない!」
ブルマ「でも・・・やっぱり行くんだったら・・・南のリゾート地がいいわよね。トランクスはちょうど夏休みだし・・・ここ結構頑張ったから・・・明日でもいいわよ」
ベジータ「おい、人の話、全然きいてないだろ?」
ブルマ「でも・・・あなたから家族旅行提案してくれるなんて嬉しいわ」
ベジータ「だから・・・それはトランクスが・・・人の話くらいちゃんと聞け!」
ブルマは抱きついてキスをした。
ベジータは口が塞がれて・・・そのままいつもの夜の情事に流れ込んでいたのだった。
ベジータは・・・
その瞬間の刹那という極めて短い時間を大切に生きることをいつの間にか選んでいた。
それくらいベジータにとって現在がかけがいのないそしてそれは永遠でない大切なひと時だったのだ。
ブルマと共に生きる・・・
一度失った互いの命はその魂が旅立つ日まで決して離さないと自分自身に誓っていたのだった。