エイジXXX

 

あんな父さん、初めてみた・・・




そう思えるくらい父さんは重力室に籠もりきりだった。


・・・でもそれはもう見ていられないくらい弱々しかった・・・




トランクス「父さん、入るよ」




ベジータ「・・・出て行け・・・トランクス。トレーニングのじゃまをするな」


トランクス「もう、ただ突っ立っているだけで半年だ。食事だってちゃんととってないじゃないか!!」


ベジータ「お前には関係ないだろ・・・」


トランクス「父さん!!・・・母さんが死んで辛いのは父さんだけじゃないんだ!!少しは俺たちの事を考えてよ!!」


ベジータ「別にそんな事は言ってない・・・」


トランクス「だって、そうじゃないか・・・特にブラなんて、あんなに可愛がっていたブラなんてずっと父さん、避けているじゃないか!!」


ベジータ「トレーニングに集中するためだ」


トランクス「うそだ!!ブラが日に日に母さんに似てくるからなんだろ?母さんそっくりなブラが」


ベジータ「出て行け!!!これ以上邪魔をするとぶっ倒すぞ!トランクス!!!」


トランクス「やれるもんならやってみろ!!俺だってこれ以上、父さんをほっておけないんだ!!!」


ベジータ「何を!!!」




ベジータがトランクス目掛けて気功波を放とうとした瞬間、ベジータの映る景色が消え、そのまま床へ倒れ込んでいった。




トランクス「父さん!!!」




トランクスは慌てて倒れるベジータを抱えた。ベジータの意識はすでになかった。










回想~


病に伏したブルマをベジータはもうこれでもかというくらいつきっきりで看病していた。


ブルマ「・・・ベジータ」


ベジータ「どうした?大丈夫か?俺はここにいるからな」


ブルマが熱でうなされる度、抱き締めて、安心させる為にキスをしていた。


寝ずの看病をしていたベジータにトランクスはたまには俺が見るから休んでとの申し出を受け入れることはなかった。

ベジータ「お前はブルマの代わりに継いだ仕事があるだろう。それを責任持ってやれ」




この時、トランクスは、母さんよりも父さんの方が神経が参ってしまうんでないかと心配するくらいだった。




そのうち、ブルマは昏睡状態になり、呼吸をしているだけの毎日となった。


それでもベジータはブルマの側から離れることはせず、ただじっとブルマをみている毎日が続いた。


ベジータ「・・・ブルマ、目をあけてくれ・・・。お前の蒼い瞳が見たい・・・」






あるとき、声がきこえるような氣がした。


ブルマの唇が微かに動いた。


ベジータ「ブルマ?」


ゆっくりと目が開いて、蒼い澄んだ瞳がベジータの目の前に飛び込んできた。


ベジータ「目を覚ましたのか?・・・良かった・・・」


ブルマは何か言おうとしていた。


ベジータ「何だ?聞こえない。どうした?」


ブルマ「・・・」


次の瞬間、蒼い瞳から光が失っていくのが見えたと思った瞬間、すべての時が止まった。


目の前の命が、呼吸も鼓動も静かに止まり、もうそれは永遠に戻ってこないことを意味していた。




ベジータの瞳から大粒の涙が溢れた。


ベジータ「・・・ブルマ・・・俺を・・・俺を置いて逝くな・・・ブルマ・・・俺はお前無しに生きてはいけない・・・」


ベジータはブルマを抱き締めながら溢れる涙を抑えることが出来なかった。




ベジータ「・・・ブルマ、どこにも逝かないでくれ」





・・・嗚咽をもらしながらもう二度と戻ってくることがない亡骸を一晩中抱えていた。











付きっきりで看病していたベジータが朝、リビングにやってきた。


トランクス「おはよう。父さん・・・」


トランクスがブルマの容体を聞くより先にベジータが応えた。


ベジータ「・・・ブルマが」

トランクス「・・・え?!」

その一言で、トランクスはブルマが死んだことを悟った。

ベジータ「トランクス・・・あとはお前に任す・・・ブラにもそう伝えてくれ」


トランクスの空気が凍り付いた。


トランクスの返事を待たず、そのまま、ベジータは重力室へ向かった。












もう何度もそこでベジータはトレーニングをしていた場所だ。


ベジータは、ブルマが作ってくれた重力室の扉を開いた。


そして
ブルマが最期に言った言葉を言葉にした。




ベジータ「・・・ありがとう・・・・・・か」




重力室の重い扉が閉まった。

 

 

もう、ブルマの声は永遠に聞く事は出来ない・・・。

 

その姿を抱きしめる事も永遠に失われたのだった・・・。