エイジ781

 

ベジータがリビングで寛いでいると、歩き始めたばかりのブラが寄ってきた。

 

放っておくと、いつの間にかベジータの膝の上に乗って手に抱えた人形を持って勝手に遊んでいる。


ブルマ 「あら、パパが大好きなのね」

ベジータ 「フン」

 

ブラを見ると、俺の方を見て満面の笑だ。

小さい時のトランクスとは殆ど構った記憶がないのだが、こんなに可愛いのか、俺の娘はと感じている俺がいた。
 

 

そこへ悟飯一家が訪ねてきた。

悟飯のところのパンとひとつ違いのブラはいい遊び相手だった。ブラはさっそくパンを見つけると近くへ寄って行った。

 

悟飯 「ベジータさん、お邪魔します」

ベジータ 「ああ・・・、おい、悟飯、たまには手合わせするか?」

悟飯 「あ、はい・・・でも手加減でお願いします」

ベジータ 「相変わらず、軟弱な野郎だ」

悟飯 「ベジータさんが強すぎるんですよ」

ベジータ 「それはお前が怠けていただけだろう」

そんな会話をしながら重力室に向かった。

暫く、重力室で悟飯に鈍った身体を鍛え直したあと、自然と娘の話になった。

 

悟飯 「ベジータさんもブラちゃんには甘そうですね」


ベジータ 「どういう意味だ?」

悟飯 「いや、さっきも膝の上で遊ばせていたじゃないですか?」

ベジータ 「あれは勝手にブラが・・・」

否定しようとして、ふと疑問が沸いた。 

ベジータ 「お前のところのパンだって充分甘やかしてるじゃないか」

悟飯 「そうですよ。可愛くて仕方ないくらいです」

ベジータ 「・・・娘だとそういうものなのか?・・・トランクスの時は、あいつには悪いがそんな感じにはならなかったからな」


悟飯 「あーよくわかります」

ベジータ 「お前はパンが初めてじゃないか?」

悟飯 「いえ、僕の場合、悟天が生まれた時は父さん、7年も居なかったから、悟天は弟だけど父親がわりにもしてたから何となく息子だったら同じような感じかなって思えるんです」

ベジータ 「そうか、悟天はお前がよく相手していたな。そういえば、トランクスが羨ましそうにお前らを見てたな」

悟飯 「ベジータさん、トランクス君の事、ちゃんと見てたんですね。だったら、今のブラちゃんのように相手し・・・」

ベジータ 「あの頃の俺がそんな事出来ると本氣で言ってるのか?」

悟飯 「あ、そうですね。すみません、余計な一言でした。でも、ブラちゃん、ブルマさん、そっくりですね」

ベジータ 「ああ、ヤバイくらいだ」


悟飯 「ですよね、やっぱりそう思いますよね!!」

 

 

悟飯は嬉しそうに声のトーンが明らかに上がっていた。

 

悟飯「うちのパンもビーデルの面影があって、まるで自分の愛する妻のミニチュア版が出来たみたいでもう一生側に置いておきたい氣分です」


ベジータ 「・・・悟飯、よくそこまではっきり言えるな」

悟飯 「ええっ、ベジータさんはそう思いませんか?やっぱり娘を持った父親にしかわからない感情じゃないですか。この思い、共感してくれると思わなければ話したりしませんよ。うちの父さんには絶対分からない感情ですよ」

ベジータ 「確かにそうだな・・・カカロットにはわかるわけないよな」

 

ベジータは娘が出来たことによってカカロットより勝ったという不思議な優越感が生まれていた。



悟飯 「やっぱりそうですよね。本当にベジータさんとブルマさんの間に出来た子供が娘さんで本当に良かったです」

ベジータ 「そういえば、ブラが生まれた日、お前、やたら喜んでいたな」

悟飯 「あれはその1年前くらいにベジータさんが僕の所で女の子の出来る方法を頻繁に聞きに来ていたじゃないですか?」

ベジータ 「そんな事もあったな」

悟飯 「覚えていないんですか? それであの時、結果が女の子じゃなかったら只では済まない勢いだったじゃないですか」

ベジータ 「いや、あれはブルマがお前んとこのパンをみて次は女の子がいいと言い出したからだ」

悟飯 「だからですよ。ブルマさんの願いだったら余計そうじゃなかったんじゃないんですか?」

ベジータ 「・・・そうかもしれんな」

悟飯 「本当に・・・ベジータさんの愛妻家には敵わないな」

 

ベジータは悟飯にミネラルウォーターのボトルを投げて渡すと、自分の分のボトルも取りだし、キャップをあけて飲み干して一息ついた。



ベジータ 「・・・お前だから言うが、実はブルマは一度、過去に流産してる」

悟飯 「え?」

ベジータ 「しかも、その時、あいつは自分の会社が忙しい時で、流産するまで自分の腹の中にガキが出来ていたことも氣づいてなかった。・・・ブルマはそんな自分を許せなかったんだろうと思う」

悟飯 「ベジータさん・・・」

ベジータ 「氣付かなかったことはそれは俺も同じだった。あいつが流産したあとに聞かされた」

悟飯 「・・・そんな事が・・・」

ベジータ 「その時のあいつの涙がずっと焼き付いて離れなかった。その時は考えてもいなかったからとあいつは答えたが、いつか出来たら程度で片隅に残してたんだ。そしたらお前のところのパンが産まれたのをみてあいつからはっきりと女の子欲しいって言ってきたんだ」

悟飯 「・・・そうだったんですね」

 

ベジータ「だから余計に・・・そう思うのかもな」

 

悟飯「すみません・・・その・・・なんて言っていいのか・・・」

ベジータ 「なんで貴様が謝る?もう8年も前の事だ。・・・それにあれから7年ぶりに出来て、しかもあいつの希望通りの娘だったんだから、本当に嬉しそうだったんだ、ブルマが」

 

 

そのベジータの横顔は紛れもなくブルマの夫でもありブラの父親でもあったのだった。


 

悟飯 「・・・ベジータさんはそのブルマさんを見てそれ以上に嬉しかったって事ですよね」

ベジータ 「・・・」

 

 

ベジータは少ししゃべりすぎたことに氣付いて、顔が赤くなっているのを感じた。そんなベジータを見て悟飯は嬉しくなっていた。



悟飯 「ブラちゃんは天使ですね」

ベジータ 「当たり前だ、ブルマと俺の娘だからな」

悟飯 「これからもお互いに自分の娘の話が出来ますね。嬉しいな。楽しみが増えました。話して下さってありがとうございます」

 

 



互いに笑を浮かべて、二人は娘のいるリビングへ向かった。

 

将来、互いの娘に彼氏になる相手がおもいやられる事になるのはいうまでもなかった。