エイジ767

トランクスがブルマの部屋へやってきた。ノックをするトランクス。

 

 

トランクス 「母さん、入ってもいいですか?」

 

ブルマ 「あ・・・、まあ、いいか・・・いいわよ、トランクス」


トランクス 「あの、とうさんは戻って来たんですよね」

ブルマ 「今、シャワー浴びているわよ」

トランクス 「あ、じゃあ、出直してきます」

 

 

トランクスが部屋を出ようとしたところ、ベジータがちょうどシャワー室から出てきたタイミングだった。

 

 

ベジータ 「トランクス? 何しにきた・・・」

 

 

生き返ったトランクスをみて、戻ってきたベジータをみて、お互い安堵の表情を浮かべた。

 

 

トランクス 「あの、とうさんにお礼を言いたくて」

ベジータ 「俺は何もしてない」

トランクス 「でも、俺の為にセルを倒そうとしてくれたって」

ベジータ 「誰がいったが知らないが、そんなことは忘れた。それにそれはただの無謀な行動だ。悟飯に苦戦を強いただけだ。ただの馬鹿のすることだ」

 

 

 

ベジータの口から自分を否定する言葉を聞くのは初めてだった。

 

それだけ形振り構わずトランクスを想ってくれてのだと悟った。

 

 



トランクス 「でも、俺は、そんなとうさんが大好きです」

ブルマ 「えっ・・・!」

余りのいきなりの息子の愛の告白にベジータもブルマも唖然とした。

 

 

ベジータ 「い、いう相手を間違えているぞ、トランクス」

 

 

トランクスもベジータも顔を赤らめた。



トランクス 「どうしても伝えたくて」



ベジータ 「・・・わかった、氣がすんだか?」

トランクス 「はい、でも、とうさん、初めに会ったときと感じ変わりましたね、なんか今は優しい感じがします」

ベジータ 「お前はおしゃべりが過ぎるぞ。疲れているだけだ、用が済んだならさっさと自分の部屋に戻れ」

トランクス 「でも今日で泊まるのは最後・・・」

ベジータ 「トランクス、お前が、親の寝室に来るもんじゃない」

トランクス 「あ・・・!」


ブルマ 「・・・えっ」

トランクス 「すみません、気が付かなくて。とうさん、かあさん、お休みなさい」


トランクスは慌てて部屋から出ていった。

 

 

 



ブルマ 「・・・確かに、トランクスのいう通りだわ」

ベジータ 「何が言いたいんだ」

ブルマ 「いつもだったら貴方、もっと怒ってるわ」

ベジータ 「・・・」

ブルマ 「トランクスに私と一緒にいるところを見られるのも嫌がってたのに、どういう風のふきまわし?」


ベジータ 「ブルマ」

ブルマ 「何?」

ベジータ 「・・・俺はここにいていいのか?」

ブルマ 「何、言ってるの、貴方、他にどこに行くつもりなのよ」





ベジータ 「カカロットはもういない」

ブルマ 「ベジータ・・・」

ベジータ 「あいつはいつも俺の先をいって、結局、カカロットは勝ち逃げをして逝ってしまった。もう、永遠に戦う事が出来ない。俺はあいつを倒す事がすべてだった。あいつだけを!!・・・俺はどうしたらいい。ブルマ。教えてくれ」

ブルマ 「孫くんがいなくても、息子のトランクスや孫くんの息子の悟飯くんもいるじゃない」

ベジータ 「カカロットではないと駄目なんだ。唯一無二、純粋な血をひくサイヤ人は俺とあいつだけだ」

ブルマ 「ベジータ・・・」 

 

 

ブルマはベジータが悟空に拘る理由をやっと理解した。

 

確かにもうこの世界には純血のサイヤ人は二人しかいなかった。唯一の悟空はもう生き返らない。

 

 



ベジータ 「サイヤ人の本質の本能を知っているのはカカロットだけだった。地球人とのハーフじゃない。なのに俺を残してカカロットは簡単に逝ってしまった、俺は誰を相手に戦えばいいんだ、もう二度と戦う必要もないというのか」

 

 

ベジータの瞳から涙が溢れた。

 

 

堰をきったようにベジータは地面に崩れた。床を叩き、高ぶる感情が溢れた。

 

 

まるでずっと対だった片割れを無くしてしまったかのように。

 

 

 

ベジータ 「サイヤ人は、戦闘民族なんだ!!俺から戦いを取ったら何が残るというんだ!カカロット・・・」

 

 

 

 

ブルマはまるで壊れ物を扱うかのようにやさしくベジータを抱きしめた。

 




ブルマ 「ベジータ、孫くんはちゃんと生きているじゃない」

ベジータ 「何を言ってるだ、ブルマ」



ベジータはブルマの顔を見上げた。

ブルマ 「・・・貴方の心に」

ベジータ 「俺の心・・・」

ブルマ 「貴方が涙を流すほど、熱く心にいるじゃない。暑苦しいくらいに、孫くんが。本当、焼きもち焼くぐらいよ」

ベジータ 「カカロットが・・・」

ブルマ 「サイヤ人は戦闘民族なんでしょ、だったらずっと戦い続けなさいよ。ベジータ、貴方自身が孫くんそのものよ」

ベジータ 「俺自身が・・・?!」

ブルマ 「自分と戦うの。そしたらもっともっと強くなれるわ、ベジータ、貴方なら」

ベジータ 「もっと強く・・・?」

ブルマ 「自分の限界を越えるでしょ、純粋なサイヤ人は。だったら越えて、見せてよ。私に。誰よりも強くて誰にも負けない貴方を」

ベジータ 「誰にも負けない俺を」

ブルマ 「必要だったらマシンも用意するわ。だから。ここを出ていくことなんてしないで。私は貴方でいてほしい。誰よりも強い貴方でいてほしい。トランクスもいるんだから。見本みせ続けてよ。戦い続けて・・・」

 

ベジータの中ですべてが繋がり、すべて吹っ切れたように見えた。

 

そして、すべてを受け止めて愛する女が、目の前にいた。

 

 

ベジータ 「ブルマ・・・」

 



ブルマに力強くキスをした、深い深いキスを。ベジータは心の底からブルマを愛しいと感じた。

いつもすべて無くしてしまった何かを埋めようとしていたベジータがそれは最初からここにあったことにやっと気づいた瞬間だった。



二人はお互いの存在を確かめるかように何度も求めた。

優しさに包まれて時が流れていく。すべてのピースが埋まっていくかのようだった。

 

 

 

ベジータの腕の中でブルマはベジータに寄り添っていた。

 

 

 

ベジータ 「ブルマ、カカロットは結婚していたな」

ブルマ 「そうだけど」

ベジータ 「条件を同じにしたい」

ブルマ 「え?」 

ベジータ 「俺の妻になれ!」

 

 

ここに来てまさか、ベジータの口からプロポーズされるとは思ってもいなかった。

 

 

ブルマ 「え、それってもしかしてプロポーズ?」

ベジータ 「・・・二度言わせるつもりか」

ブルマ 「じゃあ、結婚式も!」

ベジータ 「それは・・・無理だ」

ブルマ 「孫くんもしたわよ。私もドレス着たいわ!!」

ベジータ 「・・・そのうちな」

ブルマ 「約束よ!」

 

 

 

この約束がのちに後悔することになるベジータだった。

 

 

 





次の日、トランクスは未来に帰っていった。


トランクス 「とうさん・・・」

 

みんなから少し離れたところで、ベジータがトランクスにピースサインを送ってた。

それを見て、トランクスは頷いて、同じくピースサインを送り返した。

 

それぞれの未来は輝き始めていた。