『キャーッ!虫よっ!むし!ムシーッ!』事件 | BunnyRabbit バニーラビット

BunnyRabbit バニーラビット

新しいうさぎの情報を様々な角度からお知らせします。

 

 

 

ボツリヌス菌 Clostridium botulinum

 

 

 

え~っ! みなさま だんだん暖かくなってまいりました。
なので、これから『キャーッ!虫よっ!むし!ムシーッ!』という叫び声がこだまするかもしれません。
私も、こんな経験があります。
しばらくぶりにストック用の牧草入れを開けると、少し大きめの虫が100匹以上すばしっこく動き回っていました。
瞬間的にこれは「ヤバい!」とすぐにフタを閉じて、さらにテープを貼って間違って開けないようにして捨てたことがあります。
また、残り少なくなった牧草の袋の底を見ていると何やら粉の中で黒っぽいものが動いています。
前にも見たことがある、コクゾウムシです。
また、うちの子にはオーツヘイの穂の部分は取り除いてあげているので、時間があるときはその分別作業をしています。
そのとき選別用のボールに入れたオーツヘイの下で、何やら動く白いものを見つけました。
ガの幼虫、イモムシです。
また、今度はチモシーの袋を開けたときガが羽化して成虫になってパタパタと飛び出してきたこともあります。

 

 

 

虫、苦手ですか?

 

牧草に虫がついてたら、どうしますか?
日本では、虫嫌いな人が多くいます。
牧草には、よく虫がつきます。
ですから、販売店やメーカーには問い合わせがよく来ます。
『うちの子の食べ物に何で虫がついてんのさぁ~~~!!!』
というわけで、対応に追われることになります。
そこで、登場したのがエージレスに代表される脱酸素剤の使用です。
安全性が高く、食品の酸化防止、好気性微生物や昆虫類の生育阻止などにとても効果的です。
そして、お客様からの苦情も来なくなります。
それで、一件落着。
だったのですが…。

 

 

 

始まり

 

ある記事がきっかけでした。
それは、末日聖徒イエス・キリスト教会の長期的な食料貯蔵というページで脱酸素剤を使った保存の注意事項を目にしたときです。
内容は、次のようなものでした。
「水分のある食品を密封したパッケージや容器に脱酸素剤を入れ低酸素状態で保存すると、嫌気性細菌のボツリヌス菌が発生する可能性があります。脱酸素剤を使った低酸素状態の食品の保存には、水分が10%以下、もしくは適切に加熱処理されている必要があります」
今までの食中毒の事例は、欧米ではソーセージや自家製缶詰、日本では辛子レンコン、ハニー食品の「あずきばっとう」など水分量の多いものが多数を占めています。
少し気になり調べてみたのですが、この件に関して日本では一般向けの情報は余りありません。
ところが、自家製の保存食を作ることが多いアメリカでは、10%以上の含水率に注意しましょうという記述が多く見られます。
そして、ほとんどのHay 乾燥牧草の含水率は10%以上です。
分かりにくいので、メーカーに直接聞いてみることにしました。

 

【問い合わせ内容】
三菱ガス化学株式会社 脱酸素事業部様
下記サイトにて次の文面を見たのですが、いろいろ調べてみましても当方では確認が取れません。
製造メーカーの貴社でお分かりになる件ではないかと思い、問い合わせ致しております。
「警告―水分のある食品を低酸素パッケージで保存すると,ボツリヌス中毒を起こす可能性があります。気密性の高い容器の中で脱酸素剤を用いて保存する場合,食品は乾燥していなければなりません(水分が約10%またはそれ以下)」長期的な食料貯蔵(末日聖徒イエス・キリスト教会)
実はペット用の乾牧草を購入しているのですが、カビや好気性細菌の生育阻止や、害虫とその卵を死滅させるので、乾牧草の密封パッケージにはよく脱酸素剤が入っています。 しかし、乾牧草の多くは含水量が10%以上ありますので少し安全面が気になるところです。  以上、よろしくご回答お願い致します。

 

【回答】
お世話になります。 三菱ガス化学の○○○と申します。 HPへお問い合わせいただきました事項について回答致します。  ボツリヌス菌食中毒対策については2003年に厚生労働省より 「容器包装詰食品に関し、pHが4.6を超え、かつ、水分活性が 0.94を超えるものにあっては、中心部の温度を120℃で4分間 加熱殺菌する方法もしくはこれと同等以上の効力を有する方法で 加熱殺菌を行うまたは10℃以下で保存すること」という指針が出されています。  乾牧草が上記に該当する場合には対策を講じる必要がありますが、 おそらく水分活性はそれほど高くないのではないかと考えますので、 通常の範囲内で保存条件や流通条件に注意をしていただきたいと思います。 (*水分活性につきましては、実製品を測定しないと断言はできません)  よろしくお願いします。

 

要は、「脱酸素剤を入れた牧草のパッケージにもその可能性はあります」なのです。
問題は水分活性ですが、高価な機器を使わないと分かりません。
ですから、アメリカでは表示の多い含水率で水分を示しているようです。
ただ、自由水がどれくらいあるかはビニール袋に牧草を入れ口を閉じてレンジで少し加熱するとおおまかには分かります。
かなり乾燥しているように見える牧草でも、多くは湿気っているのです。

 

 

 

ボツリヌス菌とボツリヌス症

 

その後、調べていると症例がたくさんあるのが分かってきました。

死に直結しそうなイメージのボツリヌス菌ですが、感染症を起こしたり神経毒を作ったりします。

 

日本獣医師会 - Q&A 公衆衛生編 解答と解説 (生涯研修のページ)

「通常細菌による食中毒の症状といえば、嘔吐・下痢・腹痛ですが、ボツリヌス菌食中毒の場合、神経症状を誘発します。数ある食中毒細菌のなかで、神経毒を産生するのはボツリヌス菌だけです。神経を麻痺させ、神経刺激が筋肉に伝わらないようにします。実際は筋肉が動かなくなって、症状につながります」

 

(社)岡山県畜産協会家畜衛生部 - 牛ボツリヌス症と予防対策
「牛ボツリヌス症とはボツリヌス菌は酸素が無い環境でのみ増殖する嫌気性菌であり、増殖に伴って毒素を産生します。その毒素を摂取することによりヒトや動物が発症します。毒素はA~G型まで7種類あり、ヒトが発症するのはA、B、E、F型で、牛が発症するのはC、D型です。なお、牛のC、D型菌がヒトにうつることはありません。また、ヒトにおけるボツリヌス症では、昭和59年に熊本県で発生した辛子レンコン食中毒が有名ですが、これはA型でした」

 

家畜感染症学会 - 牛ボツリヌス症の集団発生について
「ラップサイレージ内への土壌混入の原因は、夏草の播種から刈り取りまでの期間が約3ヶ月と短期間であるため、根の張りが弱く、また圃場を拡大したことで刈り取り作業が雑になり、無理な刈り取りとなったため、部分的に根こそぎ収穫し(写真7)、テッダーレーキでの反転時にもかなり土壌を巻き上げたためと推測された」

 

HANEY - 神経症状を引き起こす犬の病気「ボツリヌス中毒」について
「犬のボツリヌス中毒とはボツリヌス菌が感染することによって神経が障害を受ける病気のことです。ボツリヌス菌は土壌に広く生息しており、この菌に汚染された食べ物を食べたり、はちみつを口に入れることによって発症します」

 

 

 

『キャーッ!虫よっ!むし!ムシーッ!』の選択

 

国内外のいろいろな牧草を取り寄せている方はお分かりですが、海外メーカーの牧草には脱酸素剤どころか乾燥剤も入っていません。
何故でしょうか?
答えは簡単です。
必要がないからです。
嫌気性のボツリヌス菌にとって、酸素のない状態は繁殖するのに好都合な環境なのです。
虫もつかない何とやらではありませんが、大発生でもしない限り少しくらいの虫で大騒ぎする必要はありません。
無農薬野菜と同じで、健康な証拠です。
また、脱酸素剤はうさぎさんにとって必要な善玉菌まで殺してしまうため別の問題を起こしてしまいます。
そして、何と今度は乾燥剤の袋が破れ中身が出てしまう破損事故が起こってしまいました。
幸い私のところのものは無傷でしたが、色々と考えさせられました。
それでどうなったかと言えば、私のところでは購入するとき脱酸素剤や乾燥剤などの”異物”を牧草のパッケージに入れないようお願いしています。
ですから、今年も聞こえてくるかもしれません。
『キャーッ!虫よっ!むし!ムシーッ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウィキペディア - ボツリヌス菌

 

Wikipedia - Clostridium botulinum

 

ウィキペディア - 脱酸素剤

 

Wikipedia - Oxygen scavenger

 

Wikipedia - Desiccant