イスラーム法学4大学派の簡単なまとめ | 徒然草子

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以下、高校の世界史レベルの備忘録である。
近時、イスラーム主義過激派の一派である「イスラーム国」の活動が何かと耳目に飛び込んで来るので、イスラーム法を少し概観するに当たっての極めて初歩的な個人的準備をしようと思い、纏めてみようと思う。
尚、此処で言う4大学派とは、専らスンニー派のイスラーム法学の学派の事である。嘗ては、以下に纏める4大法学派以外にもザーヒル派、アウザーイー派等の学派も存在していたが、今日のスンニー派のイスラーム世界において現存するのは、4大法学派のみである。
又、シーア派の主流を成している12イマーム派では第6代イマームに由来するジャーファル派の法学が行われているが、これについては此処では触れない。

1 ハナフィー派
8世紀の法学者アブー・ハニーファに由来する学派。事案の解決に類推(キヤース)を多用する。トルコ、中央アジアや南アジア、エジプトなどで主流を成す。オスマン・トルコ帝国の公認学派でもあった。

2 マーリク派
8世紀の法学者マーリクに由来する。預言者ムハンマドの言行録である『ハディース』を重視し、事案の解決に類推(キヤース)の使用をなるべく抑制する。北アフリカや西アフリカなどで多い。

3 シャーフィー派
マーリクの弟子であった法学者シャーフィーに由来する。マーリクの伝統を継承しつつも、ハナフィー派の方法論を導入したシャーフィーにより確立された。又、「イスラームの知性」と称されたガザーリーは神学者であると同時に同派の法学者でもあった。東南アジアやエジプトなどで多い。


4 ハンバル派
シャーフィーの弟子であった法学者イブン・ハンバルに由来する。預言者ムハンマドの言行録である『ハディース』を重視し、かつ『コーラン』や『ハディース』などの聖典における記述を論理的整合性よりも優先するから、類推(キヤース)に関しても極めて消極的である。今日、サウジアラビアの国教となっているワッハーブ派の祖である18世紀のムハンマド・ワッハーブも同派に属しており、又、サウジアラビアも同派の法学に依っている。イスラーム主義過激派の思想的源泉とも言うべき13世紀の法学者イブン・タイミーヤも同派に属していた。