サトシヒメ(番外編Ⅱ)~小さな恋のメロディー~第29話 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

J事務所所属、気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります


    「パパなんて大嫌いだ~~!!」



「!!?」


    「うわ~~んっ!!」



バタバタバタッ・・・!



玄関先で大粒の涙を流しながら立っていた栞は
おいらの後ろにいた翔くんに向かってそう思い切り叫んだあと
履いていた靴を投げ出すように脱ぎ捨て
バタバタと音を立てながら自分の部屋へと走って行ってしまった



「栞ちゃん!?ちょ・・ちょっと待って・・・」



おいらは目の前を走ってゆく栞の腕を掴もうとしたけど
翔くんの腕がそっとおいらの前に伸びて来て
何も言わずにただ首を横に振ったんだ・・・


!!?
「翔くん・・・?」



    「いいんだ・・・」



「え?で・・でも・・・」



    「いつかは分かる事だから・・・」



「どういう事・・・?」



    「・・・・・・・・・・・」




その時の翔くんは少し寂しそうな顔をしながらも
大きな眼の中に見える瞳からは強く真っ直ぐな光を放っていて
おいらは栞があんな事を言った原因を
翔くんは既に知っていたんだとその時初めて知った






。。。。。。。。。。






コトン・・・








「はいコーヒー」



     「ん・・、ありがとう」



おいら達はシンと静まり返ったリビングで向かい合わせに座り
翔くんは少し濃いめのコーヒーを
おいらはお砂糖とミルクの入ったコーヒーをそれぞれ手に取った・・



「・・・・・・・・・」



翔くんはおいらが淹れたコーヒーをゆっくりと味わいながらも
栞が閉じこもってしまった部屋の扉をチラチラと見ては
何度も小さくため息を吐いている

おいらはそんな翔くんの事を気にしながら
翔くんが自分の口から今回の事に関して説明してくれる時をじっと待った

やがておいらが飲んでいたコーヒーが半分くらいになった時
それまでずっと黙ったままだった翔くんがやっと口を開いてくれたんだ

でもそれはおいらも薄々感じていた事だったんだ・・・





。。。。。。。。




「アメリカ・・・」



    「うん、そうなんだ」



「・・・・、ふぅ」



    「あれ?思ってたより驚かないね」



「うん・・・実は何となくそうなんじゃないかなって思ってたから・・」



    「え?どうして・・・」




「だって最近の翔くんずっと険しい顔してたし
 家に居ても難しい本をずっと読んでたでしょ?
 翔くんがあんな顔をするときは難しい手術をする前か
 研究に関して何か考えることがある時なんだよね・・」



    「うわ・・さすが俺の奥さん
     良く分かってくれてるね・・・(笑)」



「んふふ・・、当たり前じゃない
 もう何年一緒に居ると思ってるの?」



    「おみそれしました・・・」



「んふっ♡分かればヨロシイ・・」



    「あははっ・・・」



「・・・・・・・・・」



    「・・・・・・・・・・」



「でも・・栞にはちゃんと説明してあげなくちゃ・・
 このままじゃあの子・・」



    「うん、分かってる
     今から部屋に行って慧くんのお兄さんの事を説明してくるよ」



「うん、そうしてあげて?
 あの時翔くんの事を”嫌いだ”って言ってしまって
 きっと後悔してると思うから・・」

     

     「・・・・・・うん」



「ショックだったんだよ
 だって本当に仲が良かったからあの3人・・」



    「・・・・・・・・・・」



「あ、でも翔くんを責めてる訳じゃないんだよ?
 翔くんは医者の立場で最善の治療を進めてあげたんだから
 それは医師としては当然の事だと思うし、間違ってないと思う」



    「ありがと・・智くん
     貴方がそう言ってくれるだけで俺は救われる・・」



「よかった・・」



     「じゃ、俺ちょっと栞と話してくるわ・・」



「うん」




そう言うと翔くんは手に持っていたコーヒーをグイッと一気に飲み干すと
ソファーからゆっくりと立ちあがり
固く閉ざされたままの栞の部屋の扉をノックした








。。。。。。。。。。。








コチ・・コチ・・・







「ふぅ・・・」




(あれからもう30分くらい経ったけど・・大丈夫かな?)




おいらはキッチンの中から壁にかかっている時計を何度も確認する





「・・・・・・・・」



さっき淹れたコーヒーはもう随分と前に飲みほしてしまっていて
空になったコーヒーカップを持ってキッチンへと戻って来ていた

久しぶりに3人で食べようって思って用意していた
焼き肉の材料を取り敢えず冷蔵庫へ直し
そのままシンクに溜まっていた洗い物をゆっくりと片付ける


(翔くん・・・・)


翔くんが入って行った栞の部屋の扉は相変わらず閉ざされたままで
部屋の中で2人がどんな会話をしているのかおいらには分からない

でも今は翔くんの事を信じて待つ事を決めたんだ




コチ・・コチ・・・





コチ・・コチ・・・




カチャカチャと洗い物の音だけが小さく響いている部屋の中
おいらはいつ開くともわからない扉の事を気にしながら時間を過ごしていた







カチャ・・・




「!!!?」





そして翔くんが部屋に入ってもうすぐ1時間になろうとした頃
ずっと閉じたままだった栞の部屋の扉がゆっくりと開いた


おいらはその瞬間思わず固唾をのんで見守り続ける
すると部屋の中からホッとした表情をした翔くんが現れたんだ



「翔くん・・・」



    「ごめん、遅くなっちゃって・・・」



「ううん、全然大丈夫だよ・・
 それよりも栞ちゃんは・・?大丈夫なの?」



    「うん、ちゃんと説明したから誤解は解けたよ
     それにやっぱり栞自身も分かってたみたいだ・・」



「そう・・・それで?」



    「疲れちゃったんだろうね、話が終わったらそのまま寝ちゃった・・」



「・・ふぅ、良かった・・・」



    「・・・・・、あのさ智くん・・」



「ん?」



    「ちょっとお願いがあるんだけど・・」



「なぁに?」



    「あのね・・・」





そう言ってきた時の翔くんはおいらにある提案をしてくれた

その内容は栞の父親としての大きな愛情を感じさせるもので
おいらはその提案に反対することなどなく
むしろ笑顔でオッケーの返事を出した