Under the Rose~秘密の花園~第39話 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります

.




    「ねぇ・・翔さん」



「ん?なんだ?」



    「彼女の事・・本気なの?」



「・・・・・・・・・」



    「彼女は確かによく頑張ってると思うよ?
     でもやっぱりどれだけ頑張っても俺達と一緒にはなれない
     だってあの子は人間で、その寿命なんて・・わずか数十年だ・・」

 
    「うん。そうだね・・・」



    「翔さんの気持ちは分かるよ・・・
     でも俺も潤くんと雅紀に同感だな・・・」




俺は久しぶりに月光浴をしていた時
同じように夜空に浮かぶ月を仰いでいた兄弟たちにそう尋ねられた


「・・・・・・・・」


閉じていた瞼をそっと開くと夜空には金色の月が輝いている
暗い闇の中ぽっかりと浮かび上がっているその月は大きな満月で
俺はキラキラと降り注ぐその光を浴びながら彼女の事を想った・・



。。。。。。。。。


ふと目線を横に向けると少し離れた場所にはシンと静まり返った森がある

明るい太陽が出ている時には綺麗な歌声を聞かせてくれる鳥や
小さな身体をピョンピョンと跳ねながら森の中を走る鹿や、ウサギなどもいる
でも今は真夜中で森の中に住む動物たちは皆静かに眠っている時間だ


しかし俺達バンパイアにとっては一番活発に活動できる時間帯だった
元々夜行性の俺達は夜になってからのほうがより自由に動くことが出来るから・・

確かに明るい日差しが出ている間でも動くことは出来るけど
でもやはり夜に比べると疲れるスピードが速くなってしまう

だから俺たち兄弟は満月の夜になると必ず月光浴をする
其々の能力と体力を回復させるために・・・


「・・・・・、ふぅ・・・」



    「翔さん・・・?」



「・・・・・・・・・・」




確かに俺は皆が心配する理由が分かっている
それは最近俺が本当ならまだ眠っているような時間に起きているからだ


でも俺がそんな時間に起きているにはちゃんとした理由がある
それは天からキラキラと降り注ぐ明るい光の中で
「んふふ・・」と楽しそうに笑う彼女の笑顔を見たかったからなんだ・・



「ふふっ・・・」


    「・・・・?翔さん、どうしたの?どうして笑ってるの?」


「え?あぁ・・ごめん、心配してくれてありがとう和也・・
 あ、いや・・・お前だけじゃないよな・・
 雅紀も潤もいつもありがとう・・」


俺はそう言いながら皆の顔をゆっくりと見回してみる
するとそんな俺の言葉に驚いた皆が俺を方を一斉に見た



    !?
    「ビックリした・・・」

    「ホント翔ちゃんがそんな事言うなんて・・・」

    「彼女のおかげ・・ですか?翔さん」


「ふふっ、潤の言う通りかもしれないな」


    「「「 ・・・・・・・ 」」」


「でもいくら俺だって”お礼”くらいは言えるよ?
 だってお前達は俺が勝手に連れてきた彼女を嫌がる事もなく受け入れてくれたし
 それに優しく接してくれる・・もうそれだけで十分だよ・・・」



    「翔さん・・・」



そう言った時の俺を見る皆の顔は本当に優しく微笑んでいて
俺達はその視線だけでお互いの心の内を理解できたんだ


「もう少しだけ・・このまま見守っててくれ・・
 彼女の寿命が尽きる・・その時まで・・・」


    「・・・・・・、うん」

    「分かったよ翔ちゃん、ね?潤くん?」

    「あぁ・・・」


そう言ってくれた3人はまた月を仰ぎ見ると
気持ちよさそうな顔をしながら瞼を閉じた












。。。。。。。。。。。



そして時間が流れた・・・




俺はこのまま
穏やかに過ごして行けると思っていた




でも・・時代がそれを許さなかった・・



ある日


俺達が住んでいる場所から少し離れた場所でそれは起こった



カーミラと同じように神の啓示を聞いたという一人の少女が
女を捨て男性として甲冑を身に纏い戦に出たらしい

そしてその彼女は当時では珍しい奇想天外な作戦行動を指示し
味方の兵を見事な手さばきで動かしながら
襲い掛かってくる敵を次々と倒して行った

やがて人々はそんな彼女の事を「オルレアンの乙女」と呼ぶようになる

でも・・ある時、そんな彼女を疎ましく思うものの手により捉えられた彼女は
あらぬ罪を着せられたのち魔女として火あぶりの刑になったというのだ・・


俺はそんな哀れな少女の話を
”花の都”の近くに住むバンパイアから聞いた後
幼気な少女にそんな愚かな行為をした人間たちには
いずれ天罰が下るだろうと思いながら自分の屋敷への帰路についた


だって聞いたその話が余りにも理不尽過ぎたから・・・







。。。。。。。。。。。





   「見て下さい翔様
    どうですか?これ?」



「ん?おおっ!上手じゃないか・・・
 ちなみにここに描かれているこの色男は誰だ?」



    「え?あ・・・んふふっ
     そんな事聞かないでください・・」



「ダメだ。ちゃんと教えなさい、これは命令だぞ?」



    「・・・・・、翔様です・・」



「よろしい!」  



    「あははっ♪」



「ふふっ・・。でもこうしてみると独りだけじゃ寂しいな」




    「え?でも肖像画ってそんなものですよ?」



「ん?そうなのか?
 でもせっかくだし初めての肖像画だから
 屋敷の中に飾ろうと思っているんだけど・・・」

     

    「じゃぁ・・・一緒に私も描いちゃおうかな?」


      
「おっ!?いいぞ?許してやる」



    「本当に!?」



「あぁ・・お前の好きなように描けばいい
 その代り最後まできちんと描くんだぞ?分かったな?」




    「はい♡」




「よし!楽しみだな・・・(笑)」




    「頑張ります・・(笑)」




「あぁ・・楽しみにしているよ・・・」





俺はそう言いながら目の前で楽しそうに笑う彼女の頭をそっと撫でた

彼女は嬉しそうに微笑みながらそっと瞼を閉じ
俺から与えられる温もりに幸せを感じているようだった・・










チチチ・・・・


チュン、チュン




「・・・・・・・・」



さらさらさら・・・




(あぁ・・・気持ちいいな・・・
 こんなに穏やかな気持ちになったのは初めてかもしれない)




(ずっとこうして触れていたい・・・
 ずっとこうして見つめていたい・・・)





(誰にも邪魔されない場所で・・
 2人きりでこのまま永遠に過ごしたい・・・)













俺はその時


森の中にある花畑で彼女の頭をそっと撫でながら
心の底からそう思っていた・・・




俺は彼女が好きだ・・・と・・・
















でも・・・






俺が彼女の笑顔を見ることが出来たのは



その日が最後となった