シリウスへの翼~瑠璃色の雫~#36 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

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J事務所所属、気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります

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      「帰ろう・・・潤くん・・・」




「・・・・、でも・・・本当にいいの?」




      「うん・・・いいんだ。
       おいらの夢はもうとっくの昔に諦めてる・・・」


「・・・・・」


      「行こう?帰って返事しなきゃ・・・ね」


「大野さん・・・・」



『 さと ・・・ し ・・・』


ガラララ・・・・



      「・・・・・・」


「・・・・・・・」



ピシャン・・・・


俺は俯きながら寂しそうに笑う大野さんを見て
その場で思い切り抱き締めた
細い肩を小さく震わせる大野さんは
今何を考えているんだろう

折角のチャンスなのに
恐らくあなたの今後の人生を左右するような大きな出来事なのに
貴方はそのチャンスを手放そうとしている


何とかできないのか?
俺に出来る事は何かないのか?


でもいくら考えても何も思いつかない
この人は意外と頑固だから
一度決めたらもう誰もそれを覆す事なんて・・できない・・・


くそっ・・・

自分が情けない
こんな一番肝心な時に貴方の為に何もしてあげられないなんて


俺は自分が悔しくて情けなくて
抱き締めていた細い身体に
更にギュッと力を込めた


「大野さん・・・」


      「潤くん・・・・ありがと・・・」


「・・・・・・・」




ガシャーン!!



      - !!!!? -


今、間違いなく締めた扉の向こうから何やら大きな音が聞こえた
俺達はドキッとして目の前にある扉をじっと見つめてしまう


「な・・なに?」


       「今、何か倒れたような気がしなかった?」


「でも・・・この部屋には兄貴しかいないよ?」


       「もしかして風で何か倒れたのかも・・・」


「そ・・そうかもね
 ちょっと確かめてみるよ」


       「うん・・・おいらはここに居るよ」


「分かった・・・」



大野さんは俺の腕の中からそっと離れ
俺が座っていた長椅子にちょこんと腰を掛けた

泣きそうな横顔・・・
いや、もしかしたらさっき泣いたのかも知れないな・・・
声を立てずに・・・静かに泣いていたのかも


「ごめんちょっとだけ待っててね」


       「うん・・・・、ふぅ・・・」


「・・・・・・」


俺は兄貴の病室の扉に手をかけ
もう一度部屋を覗いてみた


「あ・・・・」


部屋を覗いてみると
兄貴の枕元にあった点滴用の支柱が倒れて
兄貴の腕に繋がっていた点滴針から液が漏れている


「あ、やば。大野さん、ごめん・・・
 悪いんだけどちょっと待ってて?
 やっぱり点滴用の支柱が倒れてたよ・・・」


『じゅ・・・ん・・・・?』



「何で倒れるのかな・・・
 窓開いてないし、もう兄貴の寝相どんだけ悪いんだよ・・
 なぁ?兄貴」


『さと・・・し・・・は・・・?』



「え?あぁ・・・大野さんは外で座って・・・る・・・よ?」



     - !?!?!? -
 

「えっ!?あに・・・き?兄貴!!?
 大野さん!大野さん!!入ってきて!!はやくっ!!」


      「何?どうしたの?何かあったの?」


「兄貴が・・・兄貴が・・・」


      「司がどうかした・・・の!!?」


『さと・・・し・・・・』


      !!!!!!?
      「つか・・・さ・・・・?」


「お・・俺先生呼んでくるっ!!」



潤くんは振り返らずものすごい勢いで部屋を飛び出していった
おいらはまだ目の前の出来事が信じられない
でも・・確かにさっきまで固く閉じていた眼は開いていて
とても逢いたかった顔がおいらの目の前で小さく微笑んでいたんだ・・・


       「・・・・・つか・・さ・・・?」



『さと・・し・・・』


       「司・・・眼を覚ましていくれたんだ、良かった・・・」


『・・・・・・・、バカ・・・野郎・・・』


       「え?何でいきなり?」


『しあわせに・・・・なれ・・・』


       「!!?」


『お前の・・・夢は・・・
 俺の夢・・・なんだ・・・』


       「もしかしてさっきの話聞こえてたの?」


『一緒に夢を・・・見させてくれ
 俺の夢を・・・叶えさせてくれ・・・』


       「つ・・・つかさ、でも・・・おいらだけ幸せなんて・・・」


『いい加減にしろ・・・このバカ』


        「!?」


『愛する人の幸せを・・・願わない人なんていない』


        「・・・・・」


『お前が幸せなら・・・俺も幸せなんだ』


        「司・・・」


『お前は・・・世界に羽ばたくんだ
 それが俺の願いなんだ・・・っく・・・は・・・ッ』


        「うん・・うん・・・」


『頼む・・・諦めないでくれ
お前と一緒に・・夢を・・見させてくれ・・・はぁ・・ッ』


      !!?
      「司!!?
    もういい!もう分かったから、それ以上喋らないで!」



『はぁ・・・はぁ・・・ッ、智・・・』


      「あぁ・・・もうやめて、分かったから・・分かったから・・・っ」


『愛してるよ・・・ずっと・・・』


      !!?
      「司っ!!!」


『キス・・・して・・・くれないか?』


      「!?・・・・・・、いいよ・・・」


『はぁ・・・ッ・・ふ・・・』


      「・・・・・・・」



おいらは司と見つめ合ったまま
司の乾いた唇に自分の唇をそっと重ねた


「ん・・・っ・・・」

   
       (・・・・んっ?)


司の舌先がちょっとだけおいらの唇を押し開き
おいらの中へと入ってくる
でも・・・入って来た司の舌先はおいらの舌先にそっと触れただけで
直ぐにいなくなってしまった・・・


      (ん?あ、あれ・・?)

さら・・・

      (あ・・・これ、司の癖だ・・・)


そっと司の長い腕がおいらの後頭部に廻ってくる
そして小さく髪を撫でた

それは学生時代の司の癖・・・
司は時々おいらの後ろの髪を指でコチョコチョといじっては
「何だか落ち着くんだよこうしてると・・・・」って言っていた事を思い出した


     (んふふ・・
      相変わらず好きだな・・でも気持ちいいや)


『・・・・・』


      「・・・・・・」


おいらはその感触が懐かしくて気持ち良くて
じっと動かずにその身を任せていた


パタパタパタ・・・

遠くからこっち向かってくる数人の足音が聞こえる
でも司はおいらの唇を離そうとはしなかった
やがてその足音は大きくなり部屋の前まで来ると
勢いよく扉が開いて潤が息を切らしながら駈け込んで来た


兄貴!兄貴っ!!・・・・あ・・・」



『・・・・・・』



      「・・・・・・・」



「ごめん・・・」



『くちゅ・・・っ』



       「・・・・・・」


司の唇が・・・おいらから離れてゆく
そして俺の瞳をジッと見つめながら低い声でもう一度言ったんだ


『俺の夢を・・・
 お前と一緒に・・・叶えさせてくれ』


     「司・・・」


『ありがとう、俺は幸せだ・・・』



     「・・・・・、おいらも・・・幸せ」



『・・・・・・ふふっ』



     「んふふ・・・」



司はそう小さく笑うと今度は潤の方を向いて手招きをした


『潤・・・』


「え?あ・・なに?」


『よく頑張ったな・・・偉いぞ』


「な・・・なんだよ!急にそんな事言うなよ
 3人で一緒に飲むんだろ?
 兄貴の好きなワイン買ってあるんだぜ?早く一緒に飲もうよ」


『・・・・・、そうだな・・・』


「だから・・早く元気になって?」


『・・・・・、潤』



「ん?何?」



『智の事頼んだぞ・・・』


「いや・・・だから、それは兄貴が自分でしろよ!」



『ふふっ・・・』



「兄貴・・・?」



『2人とも・・・幸せになれ・・・』



「えっ!?」



『・・・・・・ふ・・・ぅ・・・』



その言葉を最後に司は再び瞼を閉じた



「兄貴!?」


      「司!?」



『・・・・・・幸せに・・・』



「な・・何?聞こえないよ?」



『・・・・・・』



      「司・・・
       うん・・・分かった、幸せになるよ・・・
       おいら必ず幸せになるから・・・安心して?」



『・・・・・・』




「兄貴!兄貴!!?」




『・・・・・・』



      「司・・・」




『・・・・・・』




      「ありがとう・・・」



その瞬間
司の顔が少し微笑んがように見えたのは気の所為だったのかな?

そして司は再び永い眠りに堕ちた・・・



「兄貴?起きてよ?」


『・・・・・・』



「ねぇ、兄貴!!」



『・・・・・・』


「兄貴ーーーッツ!!!」




部屋のカーテンが
窓も開いていないのに小さく揺れた・・・

ふわりと誰かがおいらの近くに立っているような気がする
おいらを後ろからそっと抱き締め
いつも暖かく見守られているような安心感・・・

この感じは・・・君だよね?


司・・・



⦅お前は俺が守ってやる・・・だから安心しろ⦆



うん・・・

おいら頑張るよ
皆が幸せになれる様に頑張るから・・・

見ててね・・・




⦅あぁ・・・俺が導いてやる
お前の中でずっと輝き続けているシリウスの所まで・・・
 あの時の様に・・・⦆