シリウスへの翼~瑠璃色の雫~#31 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

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気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります

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「ふぅ~っ・・・・」


俺は掛けていた銀色の眼鏡を机の上に置き
背伸びをしながら大きくため息をついた


「・・・・・・・」


あの夜、翔さんから話を聞いた後
俺も気になってフランスから出来る限りの新聞記事やネットの情報を集め直し
6年前からの記事を時間を見つけては全て読み返していた



カタカタカタカタ・・・・・


カタカタッ!



「確かに・・・どう考えてもおかしいよな
 これじゃ翔さんがあんな風になっちゃうのが分かるわ・・・」


6年前、大野さんが通っていた学校で小火騒ぎがあった・・・
そしてその後、少ししてからの失踪・・・
でも小火騒ぎの事は新聞に載ってても邦人が失踪したことは載っていない

普通は逆だ

もし渡欧先で邦人が失踪なんてしたら国際問題になってしまうから
普通は必至で捜査するもんだ・・・でもそんな様子は何処に感じられない
まず俺はそこから不思議だったんだ


「なんで?おかしいよな・・・」


その後、新聞に載っているのは絵画コンクールで入賞した作品や作者の名前くらいだ・・・
俺は紙面の端の方に載っているほんの小さな記事まで読み解いてゆく
でもそこには大野さんの事件に繋がるような事は一切載っていなかった




俺は仕事が終わって自宅に戻ってから
時間をかけて今までの新聞を読破した
そしてついにここ最近の新聞にまで辿り着いたんだ


「んっ!?何だ・・・?これいつ頃の記事?」


それはちょうど半年くらい前に発行された新聞記事だった
一面を飾る衝撃的な見出しに目を奪われる



<偽画家?ジャン・バルロー贋作!!
決定的証拠浮上!!緊急逮捕か!?>



「偽画家か・・・気になるな・・・」


俺はこの事件の事をもっと知りたくてネットで検索してみたり
当時の新聞を隅から隅まで目を通したりしてみた
でもこの記事もあっという間に小さくなり
2週間もすれば新聞の片隅に申し訳程度に載っているだけになってしまった



「おかしいな・・・何か変だ・・・」



カタカタ・・・


カタカタカタ・・・・・


ピッ・・・・





あとは・・・


「これだよな・・・やっぱり」


それは再浮上した<贋作疑惑>の記事中に書かれていた内容で
驚くべきことが書かれていた


エコール・デ・ボザールを首席で卒業したジャン・バルローの暴露記事

当時新進画家として歩み始めていたジャン・バルローは
実は自分が今まで描いてきた絵は本当は違う人物が描いていた絵だったと自らが暴露していた
そして自分の父親であるラザル・バルローは過去に人を殺したことがあるとも衝撃告白している
その時の様子や話の内容は偶然居合わせた人達の手によって録音、証言され
警察の手によってその内容に間違いがない事が証明されたと言うのだ

そして2日後の新聞ではラザル・バルローが殺人事件の重要参考人として
フランス全土に指名手配されたという内容が新聞の一面を賑やかせていた


「ラザル・バルロー、ジャン・バルロー・・・・」


カタカタカタ・・・・


ピッ


「・・・・・・・、大物だな・・・
 こんな人にたった一人で立ち向かったって敵う筈がないよ」


俺はサイドテーブルに置いていたコーヒーカップに手を伸ばし
残っているコーヒーを飲もうとカップに口を付けようとした


「あれ・・・もうないや」


俺は仕方ないなと思いながら何も入っていないコーヒーカップを手に取りキッチンへと向かう
引き出しから簡単にできるドリップ式コーヒーを取り出しカップにセットしてから熱湯を注ぐ
一瞬で立ち上る香ばしい香りがキッチンにたちこめた
そして俺は淹れたての熱いコーヒーをブラックのまま一口飲んだ


「あちちっ・・・、ちょっと熱すぎたかな・・・」


淹れたてのコーヒーを手にしたままソファーへと移動した俺はガラステーブルの上にカップを置き
そのままゴロンとソファーに横になって瞼を閉じゆっくりと考えた・・・・


「・・・・・・・。なるほどね」


恐らく翔さんもここまでの情報なら知っているんだろう
だから何度もフランスへ飛んで必死で証拠を探しているんだ

大野さんは失踪ではなく拉致誘拐されたんだと・・・そう信じたくて


「ふぅ・・・」


翔さんと俺は同じことを考えているに違いない
いや・・・そう考えるのが自然だ


たぶん大野さんは6年前
このラザル・バルローと言う人物、もしくはその関係者に拉致誘拐されたのち監禁
そしてそれ以来息子の影武者として絵を描かされ続けている筈・・・

このジャンが暴露した
”自分じゃない誰か”・・・は、恐らく大野さんの事だろう


「・・・・・・・」



でもここまで分ってるのに、これ以上進む事が出来ない
だってこれ以上の情報はもう何処を探しても見つけられないから・・・
たとえフランスへ行ったとしても証拠を見つけることは困難だろうと想像できる



「ラザル・バルロー・・・か・・・」


恐らくこの人物はとても頭が良く用意周到に策を練って
自分の元まで警察の手が及ばないようにしているんだろう
もしかしたら警察内部の人間と繋がっているのかもしれない

そうなるともう無理だよ
だってもし警察が敵だったとしたら証拠を見つけたとしても、もみ消されしまう可能性の方が高い
それ以前にその証拠まで辿り着けないように根回しされているかもしれない・・・


「・・・・・ちっ・・忌々しい奴だな」


しかもこのラザル・バルローと言う人物はかなり厄介な相手みたいだ
色々調べていて分かったけどコイツ、かなり強引に事業展開をしていて
裏社会にも繋がっているんじゃないかと噂が流れてる


「・・・・・、大野さんいったい貴方何に巻き込まれたの?
 コイツ相手に俺達だけじゃ太刀打ちできないよ・・・」





・・・・・

もし・・・

もし俺だったら・・・どうやって大野さんを救出する?



俺はこの時ある一つの仮説を立てた
そしてその仮説を実行するために必要な事柄をピックアップする
今までの物事を順に追いかけ、どこで情報を得る事が出来るのか考えた


そう考えるとどうしても不思議に思う事があった
どれだけ考えても、どうしても納得できない事


それは”絵”だ・・・


大野さんの絵の素晴らしさは知ってる
あの人は天才だからそう簡単に真似ができる筈がない
ジャンも大野さんと同じ学校に通って居た位だから
そこそこの腕前はある筈、でも作風はどうだ?
もしいきなり作風が変わったら
さすがに学校の先生達には分かるんじゃないか?


もしかしたら先生の中にはこっちの味方になってくれる人がいるかも・・・
中には証拠写真みたいなモノを撮って残していた人がいたりして・・・


「それがあればな~、
 ・・・・・・あっ・・・!」


ふと、この前翔さんが話してた内容が頭の中に蘇る


     <まるで見えない誰かに邪魔されてるみたいな気持ちだよ>

     <調べれば調べるほど・・・遠くなっていくんだ
      昨日まで進めたはずの道が突然進めなくなる
      昨日まで話してくれていた相手が居なくなる>

     <まるで誰かを怖がって
      関係者全員で示し合わせているような気がしてならないんだ>



「・・・・・、無理・・か・・・」



・・・・・・
じゃあ・・・どうする?
どうすれば今のこの状況を打破する事が出来る?


何かきっかけさえあればそのチャンスに仕掛ける事が出来るかもしれないけど
でもそれをするには時間と綿密な作戦そしてなにより確実な証拠が必要だ・・・


しかも、そのチャンスはたった1度だけだろう・・・
失敗してしまったら2度目はもうない



「大きな賭けだな・・・・・・・」



今までの事件の中で
もし仕掛けるとするなら・・・
俺ならこのタイミングだろうな・・・





カタカタカタ・・・


カチカチッ・・・



ピッ




「・・・・・・・・」



<偽画家?ジャン・バルロー贋作!!
決定的証拠浮上!!緊急逮捕か!?>



この見出しの新聞記事が出た時に・・・
俺なら動くな・・・


「・・・・・・・・」


俺はズボンの後ろポケットに入っていた携帯を取り出し
ある人へ電話を掛けてみる
もしかしたらこの人なら何か知っているかもしれない
だってこの人は今フランスに住んでいるんだから・・・


ピッピッピッ・・・・


RRRRRRRR


RRRRRRRRRR・・・・・



(おかけになった電話番号は電波の届かない・・・・)


ピッ


「・・・・、ダメだやっぱり繋がらない」


なぜ?
何故繋がらない?

もしかして何かしようとしているのかな?
日本では分からない情報を掴んでいるのか?
それとももう何かしたのか・・・



「潤くん・・・一体今どこで何をしてるの?」



俺は繋がらない携帯を見つめながら
もしかして・・・と思っていた・・・・




そして数日後
ラザル・バルローが息子の手によって殺害されていたいう記事を読んだ