シリウスへの翼~瑠璃色の雫~#28 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

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気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります

数日後、
俺は仕事帰りに立ち寄ったバーで翔さんと偶然出会った

カウンター席で独りで飲んでいる翔さんの背中は
なぜかとても小さく見えた


(翔さん、また痩せたな・・・)


そんな事を考えていると急に後ろを振り向いた翔さんと目が合った


「あ・・・」


     「おっ・・・・・」


「お、お久しぶりです」


     「ホント久しぶり・・・」


「お1人ですか?もう帰られます?」


     「いや・・・ちょっとトイレに行こうと思っただけ
      もしよかったら久しぶりに一緒に飲むか?」


「いいんですか?」


     「あぁ・・・いいよ。俺もちょっと聞いてほしい事があったんだ
      とりあえずトイレ行ってくるから、悪いけどテーブルチャージしといて・・・」


「わかりました」


ほんの少しだけふらついて立ち上がると
静かに微笑みながら通りすがりに俺の肩にポンと手を置き
バーの片隅へと消えていく

俺は目線だけ追いかけさせて視界から消えたのを確認すると
カウンターの中にいた店の人に声をかけた



。。。。。。。



     「乾杯!お疲れ~」


「お疲れ様で~す」


     「久しぶりだな、こうやってお前と飲むの
      仕事はどうだ?順調か?コホコホッ・・・」


「ええ、お陰様で・・・
 何とか頑張っていますよ」


当たり障りのない言葉がテーブルの上を行ったり来たりする
お互いの仕事の事や最近の出来事など
今の俺達に必要ない話ばかり・・・

でも俺はそんな話をしながらテーブルの向かいに座っている
翔さんの姿を改めて確認した

相葉さんから翔さんの事を聞いたのはまだほんの数日前だ
だから話だけでも大体の想像はついていた・・・
でもここまで顔色が悪いとは思っていなかったんだ
しかも時々気になる咳をする・・・


それに・・・

いつからこの人は笑わなくなったんだろう
表情は笑っているように見えるのに目は笑ってない
むしろ苦しんで泣いているように見える
学生時代のあの弾けるような笑顔はもう何処にも感じられなかった


     「こほっ・・・こほっ・・・」


「翔さん大丈夫?顔色・・・良くないよ?」


     「ん?あぁ・・・大丈夫、ちょっと風邪ひいたんだ
      最近忙しくて病院なんて言ってる暇ないし・・・」


「そう・・・でも気を付けて?
 身体壊したら何も出来なくなっちゃうよ?」

  
     「あぁ・・ありがとう。確かにそうだな気を付けるよ」


カラン・・・

翔さんは手にしていたグラスをゆっくりと傾け
琥珀色の液体を舌の上で味わっていた


「・・・・・・・」


     「・・・・・・・」


俺は寂しそうに笑う翔さんに
気になっていた事を思い切って聞いてみた


「ねぇ・・・翔さん」

     
     「ん?」


「翔さんは・・・これからどうするつもりなの?」


     「これから・・・って、どういう意味?」


「だから・・・このままずっとあの人を待ち続けるの?
 このまま独りで誰とも心を開かないまま過ごしていくの?」


     「・・・・・・、そう・・・だな・・・。
      なぁ、ニノ、お前ならどうする?」

「え?」


     「ずっと一緒に居ようと・・・
      誓い合った人が突然消えてしまったら・・・」


「・・・・・・・・」


    「笑ってたんだ・・・あの時、
     空港で・・・とても綺麗な笑顔を見せてくれたんだ
     次に会うのは夏休みだねって・・・約束したんだぜ・・・なのに居なくなるか?
     どう考えたっておかしいだろ?自分から居なくなるなんてありえない」


「そうですね」

   
     「なぁ、ニノ。お前どう思う?おかしいと思わないか?」


「何がです?」


     「俺はあの日から6年探し続けた
      なのに何故たどり着けない?おかしくないか?
      まるで見えない誰かに邪魔されてるみたいな気持ちだよ」


「邪魔・・・?」


     「そうだ、調べれば調べるほど・・・遠くなっていくんだ
      昨日まで進めたはずの道が突然進めなくなる
      昨日まで話してくれていた相手が居なくなる
      そして警察も・・・ほとんど動いていない・・・」


「警察が・・・動いていない?」


     「あぁ・・・探してくれてるようなフリをしてるだけ
      本当は全く話を聞いてくれないし協力もしてくれない
      まるで誰かを怖がって
      関係者全員で示し合わせているような気がしてならないんだ」


「・・・・・・」


     「そう思わないと納得出来ない事が多すぎるんだよ
      これ以上近づくな、これ以上調べるな・・・ってな」


「そんな事できる人が
 あの人の失踪に関係してるって事?」


     「あぁ・・・おそらくコイツだろうと目星を付けたこともあった
      でもその相手は・・・俺の会社の取引相手だったんだ
      しかもその相手はかなりの実力者だったし
      当時の俺の力だけでは確証が持てなかったから
      どうする事も出来なかった・・・
      会社に迷惑かける訳にもいかなかったしな・・・ゴホッゴホッ」
  

「翔さん・・・大丈夫?」

   
     「ケホ・・ケホッ・・・、あぁ・・・ごめん。
      俺の事なんて・・・別にどうなったっていいんだよ
      あの人の居ない人生なんて考えられないし考えたくもない」


「でも・・・寂しいでしょ?
 今だって身体辛そうだし、
 少しくらい誰かに甘えたっていいんじゃない?
 翔さんがあの人を心配するように
 翔さんを心配している人がいると思うよ・・・」


     「・・・・・・・・。
      ダメだ・・・アイツに甘えることは出来ない
      ニノの言いたいことは分かるよ
      俺だって幸せになりたいよ、毎日笑って楽しい日々を過ごしたいと思う
      そうできたらどれだけ楽になるだろう・・・
      でもダメなんだ・・心が、身体が求め続けているのはあの人だけなんだ
      こんな思いのままアイツに甘えるわけにはいかないんだよ」


「翔さん・・・もしかして・・・」


     「ふふっ。
      何年一緒にいると思ってるんだよ、それくらい分かるさ
      でも・・・だからこそダメなんだ、アイツの事良く分かってるから・・・」


「・・・・・・」


     「頼む・・・もう少しこのままでいさせてくれ
      自分で納得できるまで・・・行くところまで行かせてくれ・・
      ゴホッゴホゴホッ・・」

!?
「翔さん?」

   
     「ニノ・・・頼む・・・
      こんな事頼めるのはお前しかいない・・・はぁ・・はぁ・・っ・・」


「どうしたの!?大丈夫!?」

 
     「アイツを助けてやってくれ・・・
      はぁっ、はぁっ・・・ううっ・・っく・・!」


「翔さん!しっかりして!!」


     「雅紀を・・・
      俺にはアイツを救ってやれない、ゴホゴホゴホッ・・・ゲホッ!


「俺には無理だよ・・・
 だって相葉さんが好きなのは・・・翔さんなんだよ」


     「たの・・・む・・・、ゴホッゴホッ・・ぐっ・・・!」


!!!?
「翔さん!!しっかりして!翔さんっ!!」


翔さんは真っ青な顔をしながら
椅子から滑り落ちるように店内の赤い絨毯の上にその身を沈めた


ドサッ・・・

「翔さんっ!!」


抱き上げたその身体は凄く熱くて
小さく繰り返している呼吸も苦しそうに顔を歪めていた


「誰か・・誰か救急車呼んで!早くっ!!」
      

     ≪はい!直ぐ呼びます!!≫


「翔さん!しっかりして!!翔さんっ!!」



      「さ・・・とし・・・・くん・・・・」



「・・・・・、翔さん・・・」






10分後
辿り着いた救急隊員の手により緊急搬送された病院で治療を受けた翔さんは
酷い肺炎を起こしていることが分かった
しかも肺炎を起こしてからかなり時間が経っていて
精密検査の結果、完治には時間がかかると説明を受けた
翔さんは疲労が重なり蓄積しすぎていた為、免疫力がかなり落ちていた
その為に内臓もかなり弱っており普通の食事は出来ないと判断され現在点滴2本を受けている
そして翔さんはこのまま暫くの間入院する事となった

翔さんはこの時、心身共に疲れ切っていたんだ・・・
でもその事を誰にも言わずに1人で耐えていた
ただじっと・・・孤独に耐え続けていた事を俺は改めて知った


(・・・・・・、翔さんのバカ。
 何で全部1人で抱え込むんだよ・・・)



俺は悩んだ挙句この事を相葉さんに教えてあげた


1時間後、髪をふり乱し肩で息をしながら現れた相葉さんは
青い顔をしながら病室で眠る翔さんを見て扉の前で泣き崩れた


「大丈夫?相葉さん・・・」


     「翔ちゃん・・・ごめんね、本当にごめん・・・」


「誰も悪くないよ・・・そう、誰も悪くない」


     「ニノ・・・俺、どうしよう
      心配で心配で・・・このまま翔ちゃんが居なくなったら・・・怖いよ」


「・・・・・、家で待っててあげたら?
 翔さんが帰って来た時に出迎えてあげる事が出来るように
 美味しいものたくさん作って待っててあげたらいいんじゃないかな・・・」


     「でも翔ちゃんは、出て行け・・って・・・
      俺、これ以上翔ちゃんを苦しめたくないよ
      いない方がいいなら、俺翔ちゃんの前から居なくなるよ・・・」


「相葉さん・・・それは違うと思うよ」


     「何が違うの?俺バカだから良く分かんない・・・」


「翔さんは相葉さんの事を大切に思ってるからこそ
 あんなひどい事を言ったんだ
 相葉さんの事良く分かってる翔さんだからこそ・・・」


     「いいの・・・かな?傍にいてもいいのかな?
      また怒られないかな・・・」


「怒られたらその時考えればいいんじゃないの?
 とにかく今は翔さんを支えてあげる人が必要だよ・・・
 もうこの人は心も身体もボロボロだ・・・」


     「うん・・・うん・・・っ、ぐすっ・・・」


「あぁ・・・ほらもう泣かないの
 相葉さんが泣いたってしょうがないでしょ?
 とにかく今は相葉さんが翔さんを支えてあげて・・・ね?分かった?」


     「うん・・・分かった。俺、頑張るよ」


「違う!!」


     「えっ!?何で怒るの?」


「頑張っちゃダメ!
 相葉さんが頑張ったら・・・今度は翔さんが辛くなる
 翔さんをこれ以上頑張らせたらダメなの!分かる?」


  
     「・・・・・、分かんない」


「はぁ・・・。今まで通り、いつも通りでいいの
 幼馴染みだった頃の2人に戻ってゆっくり過ごしてあげるのが一番いい
 今の翔さんには・・・休養が何よりも必要なんだ」

   
     「・・・・分かった、ありがとうニノ」


「うん。じゃ俺帰るから、後の事は頼みましたよ」


     「うん・・・じゃぁね・・・」


「何かあったらすぐに連絡して
 あ、それからもう1つ・・・」


     「ん?何?」


「前にあげた香水だけど・・・
 当分は使わない方がいいかもしれない
 今の翔さんには・・・残酷すぎるよ」

 
     「・・・・・うん、分かった・・・」


涙をその目の端に溜めながら病室へ入っていく相葉さん
俺はその後姿を見ながら心の中で祈った

早くみんなが幸せになれますように・・・って




そして俺は・・・
誰にも知られないように独自のネットワークを使って
あの人が消えた当時の新聞や事件、事故などをもう一度調べ直した
もし翔さんが言っていた通りなら
一体誰がこんな事をしたのか、その理由は何なのか・・・

どうしても知りたかったんだ・・・