シリウスへの翼~瑠璃色の雫~#27 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

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J事務所所属、気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります

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ー 3か月前、東京都内 -






「コホッ、コホ・・・ッ・・」



疲れた身体を引き摺るように歩く人影が
誰もいないマンションの廊下を歩いている
肩の筋肉が張っているせいか少し撫で肩に見えるその背中は
小さな咳を何度も繰り返し最後に大きく咳き込んだ



ゴホッ!ゴホゴホッ・・・・、は・・ぁ・・・」



やがて自分の部屋の前に辿り着いたのか
着ていた黒いスーツの内ポケットから鍵を取り出し
扉の鍵穴に差し込もうとした



「・・・・・・コホッコホッ・・・ゴホッ!



でも咳のせいなのか、鍵を持つ手が震えて
中々うまく鍵穴に鍵を差し込む事が出来ない



「クソッ・・・」



そして何度目かの後
やっと鍵穴に鍵を差し込む事が出来た彼はホッと溜息をついた


ガチャ、ガチャ・・・ガチャン!




玄関で靴を脱ぎリビングへと繋がる短い廊下を進むと
扉の向こうから賑やかなテレビの音と楽しそうに笑う声が聞こえてくる

その声を聴いて彼の表情は曇った
だってこの部屋にはあの人以外入ってほしくなかったからだ・・・







。。。。。。。。。




カチャリ・・・






     「あ、翔ちゃんおかえりっ!」



「・・・・・、まだいたのか・・
 早く自分の家に帰れよ、ゴホッゴホッ・・・」



     「だって・・・翔ちゃんの部屋、居心地良いんだもん」



「だってじゃない、いい迷惑だぞ?お前」




そう言いながら俺はテレビの付いているリビングを抜け
寝室へと入るとキャリーバッグを持ち出して荷物を詰める



     「ごめん・・・って、あれ?どこ行くの?」



「・・・・・・・」



     「もしかしてまた行くの?フランス」



「あぁ・・・パリから少し離れた小さな街に
 日本人の男性が住んでるって情報があったんだ、コホ・・コホッ・・」



     「ねぇ、翔ちゃんもう・・・諦めなよ?
      これだけ探して見つからないなんて・・・変だよ」



「・・・・・・・」



     「あれからもう6年だよ?
     今まで一度も消息が掴めないなんておかしいよ・・・、それに・・・」



「・・・・・・・、それに・・・何だ?」



     「もう・・・
      生きてないんじゃないかって・・噂もあるし」



!?

俺ははキャリーバックに荷物を詰めていた手を止めた
暗い部屋からリビングを見るとそこは逆光になっていて
扉の所に立っている雅紀の姿が黒い影にしか見えない

俺はそんな雅紀の姿から目を逸らし
寝室の壁に掛けてあるある一枚の絵を見上げた



「・・・・・・、生きてるよ」


     「え?」


「あの人は絶対に生きてる・・・
 たとえ世の中の人全員が無駄だと言っても
 俺は自分のこの目で見るまでは諦めない・・!」


     「でも・・・」


「諦めない、絶対に諦めたりするもんか・・・・ッ、ゴホッ、ゴホッ・・・」


     !!?


「ゴホッゴホッ!
 ・・ゴホゴホッ、ゴホッ・・は・・・ぁ・・・ッく・・」



     「翔ちゃん・・・やっぱりその咳おかしいよ?
      病院行こう?ちゃんと診てもらおうよ・・・もうずっと咳してるじゃない
      顔色だってずっと悪いままだしさ・・・フランスへは今度行けばいいじゃない、ね?」


「うるさい・・・」


     「ね?そうしようよ?明日病院行こう?一緒についてってあげるからさ・・・」


「うるさいっ!!」



     ー ビクッ!! -

      

「もう、俺の事は放っといてくれ!
 俺は自分の身体の事なんでどうなったって構わないんだ
 あの人が呼んでるんだよ!悲しそうな声で俺を呼んでるんだ!!
 今、俺が行かなくて誰が行くんだよ!?」


  
    「翔ちゃ・・・」


「頼むから・・・早く俺の部屋から出て行ってくれ
 俺の事を考えてくれるなら・・・もう放っといてくれ・・・」


     「でも・・・・
      しょうちゃ・・・えっ!?」


俺が急いで部屋を出ようとした時
雅紀が急に俺の腕を掴んで引き止めようとした


     !?
     (熱い・・・!)



「触るな!!」


     「!!?」


「は・・ぁ・・・」

     
     「・・・・・」


掴まれた腕を慌てて振り払い
強い目で見据えながら雅紀を睨みつける

でも雅紀はそんな俺の目を逸らさずに
心配そうな瞳で俺の顔を覗き込んできたんだ


     「翔ちゃん・・・熱があるの?いつから?」


「・・・・・・」


     「もしかしてずっと熱があるの?ねぇ・・・?」


「・・・・・・、俺の事はいいから・・・
 お前は早くこの部屋から出て自分の家に帰れ」


      「でも・・・・」


「・・・・・・。
 もう時間だから行かないと・・・じゃ・・・コホ、コホッ」


     「翔ちゃん!!」


「雅紀・・・、今度俺が帰ってくる時までに出て行ってくれ
 この部屋には智くん以外入れたくないんだ」


     「・・・・・・・」


「じゃぁな・・・」


     「翔ちゃ・・・・」



パタン・・・・



     「翔ちゃん・・・・・」





俺はそのまま空港へと向かい
今度こそあなたに逢えますようにと願いこめながら
日本を飛び立った・・・



。。。。。。。。。。。。。。。




その日の夜
俺はあいつに電話を掛けた

行きつけの居酒屋へ呼び出して
誰にも言えない愚痴を聞いてほしかったんだ


「こっちですよ?相葉さん」


     「ごめんごめん、遅くなっちゃった・・・」


「ホントですよ、呼び出しといて遅刻ってどういう事なんでしょうね?
 もうここは奢ってもらいますからねっ」

   
     「わかったよ・・・。あ、生ビールと餃子ね~」


     ≪かしこまりました~喜んで~♪≫


「・・・・で、どうしたんです?今日は」


     「・・・・・・、行っちゃった・・・」


「またですか・・・今度は何処へ?」


     「パリから少し離れた小さな街だって
      日本人の男性がそこに住んでるって情報が入ったって言ってた」


「ふ~ん・・・、翔さん・・・大丈夫なのかな?
 凄く痩せたでしょ?よく体持ってるよね」


     「・・・・・。
      大丈夫じゃないよ、たぶん何か病気にかかってると思う
      ずっと咳してるし、熱だってあるのに・・・」


「知ってて行かせたの!?」


     「だって・・・必死なんだもん。心配だけどどうしようもできないよ
      それに今度帰ってくるまでに部屋出て行けって言われちゃったし・・・」


「出て行けって・・・まだ居たの?」


     「うん・・・」


「え?じゃぁ、翔さんは何処で寝てるのよ?」


     「会社の仮眠室だって・・・
      家に帰ってくる時間がもったいないから丁度いいって言ってたけど・・・」


「相葉さんが家にいるから帰らないんだよ、きっと・・・」


     「そうかな・・・そんなに嫌われてるのかな・・・俺」


      ≪生ビールと餃子お待たせしました~♪≫


「まぁ、飲んで?いっぱい愚痴、聞いてあげるから」


     「うん・・・ありがとニノ・・・」


俺は綺麗に泡の付いたビールを喉へと流し込む
アツアツの餃子を口に運びながら世間話や仕事の話をする

でも・・・何を話してても結局最後は此処へ辿り着くんだ


     「おーちゃん・・・生きてると思う?」

「う~ん、
 潤くんから何も連絡ないしね
 何とも言えないな・・・」


     「そうだよね、誰にも分からないよね」


「でも翔さんは諦める気ないんでしょ?」


    「うん、そんなつもりは全くないみたい
     翔ちゃんは今でも大野さんの事しか見てないよ・・・」


「相葉さん・・・大丈夫なの?
 そんな翔さん見てて・・・我慢できるの?」


     「・・・・・・・」


「もし噂が本当だったら・・・」


     「・・・・?」


「相葉さんが大野さんの代わりに
 翔さんを支えてあげればいいんじゃない?」

 
     「無理だよ・・・。
      どんなことしたって翔ちゃんは俺の事なんて見ないよ」 


「分かんないよ?人間だもん
 寂しい時や辛い時は誰かに甘えたくなるもんでしょ?」


     「そうだけど・・・さ・・・」


「・・・・・、面白いものあげるよ」


     「何?これ・・・?」


「大野さんが使ってたのと同じ香水・・・」


     「香水?おーちゃんこんなの使ってたの?」


「うん、だって俺が使ってくださいってあげた奴だもん
 気に入ってくれてね、それからずっと使ってくれてたんだ・・・
 これを相葉さんにあげるよ」

   
     「いや・・・でも、こんなの貰ってもどうしたらいいのか」


「翔さん・・・その香りに反応すると思わない?」


     「え?ニノ・・・?」


「もし、相葉さんが本当に翔さんを欲しいなら・・・
 それを使ってみれば?もしかしたら大野さんと間違えて抱いてくれるかもよ?」


     「・・・・・・・」


「ま、冗談だけどね。そんな簡単に行く訳ないよ
 ましてや翔さんだし・・・」


     「・・・・・、そう・・だよね」


「でも・・・」


     「・・・何?」


「本当に好きなら諦めちゃだめだ、後悔するよ?
 相葉さんが本気なら強引にでも翔さん家に押しかけちゃえよ」


     「ニノ・・・・」


「俺は後悔してる・・・、何もしなかった自分に・・・」


     「・・・・・・・」


「いい子のフリして、最後まで自分の気持ちを出せなかった
 翔さんみたいに一途に探しに行く事も出来ない
 相葉さんみたいに追いかける事も出来ない
 潤くんみたいにフランスで仕事をする勇気もない・・・」


     「ニノ・・・お前・・・」


「俺も・・・ずっと大野さんが好きだよ、大好きなんだ
 でも今はどうする事も出来ない
 みんなが羨ましいよ・・・自分の心に素直で・・・」


     「・・・・・・・」


「だから俺みたいに後悔しちゃだめだ
 いつまでたっても忘れられない・・・
 いや、それ以前の問題だよね・・・自分で自分が情けないよホント」


     「・・・・・・・」


「だから頑張って?応援するから
 一緒に居たいなら・・・一緒に住めばいいじゃない
 たとえ嫌がられても・・・生きてるんだから・・・
 それだけでいいじゃない・・・ね?そう思わない?相葉さん・・・」


     「そう・・・だね・・・」



ニノはそう言うと目の前にあったジョッキを手に取って
半分以上残っていたビールを一気に飲み干した