サトシヒメ〈参〉第47話 | 青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

青い天使のアトリエ*嵐*山love♡妄想小説*

気象系グループさんの名前をお借りして
腐った妄想小説を書き綴っております
主に山コンビメインですが他のCPもあります

ガタゴト・・・

ガタゴト・・・




ガタンガタン!!




「!!?」




    「・・・・・・・・・・」



    <暫くの間揺れますので気を付けて下サイ>



「はい・・」




ゴトゴト・・・ガタンガタン!!




「・・・・・・」




道じゃない道の上を俺達の乗せたバスが走っている

さっき訪れた村で教えてもらったその場所は
奈良さんが持っていた地図には載っていない小さな村で
大勢の人が賑わう上海からたった2時間くらいしか離れていない場所だった

でもバスの中から見るその景色は
移り変わってゆく毎に明かにその雰囲気を変えていて
さっきまでは多少なりとも車が走りやすい道だったのに
今ではゴツゴツとした石や木の枝が転がったままの荒れた道になっていた

でも俺はそんな事よりももっと気になる事があった
それはさっきの村で聞いた話だ


”一昨日の夜、海に浮かんでいる人らしきものを引き上げた人が居る”



その言葉は今の俺にとって
いや俺達にとっての希望の光だった




(智くん・・、雅紀・・・)



「・・・・・・・・・・・・」





俺は窓の外を眺めていた目線をそっとバスの中へと移してみる

8人掛けの小型バスの中には運転手を含む5人が乗っている

運転席のすぐ後ろの席には上海支部の八乙女君と現地ガイドの人が並んで座り
その斜め後ろ、俺から見ると右斜め前に奈良さんが座っている

奈良さんはさっきの村を出てバスに乗り込んだ時から
自分の持っていた地図をジッと眺めていて
漁師に聞いた最近の海流の動きや
これから向かう小さな村の場所などを照らし合わせている
そして耳に掛けていた赤ペンを手に取ると
目星のつけた当たりの地図に印をつけながら何度も小さく頷いていた・・・





キキッ・・




    <着きましたよ、凄い道でしたね・・>




そう言いながら扉を開けてくれるのは八乙女くんだ・・
八乙女君は自分の尻を擦りながらちょっと大袈裟に痛がってみせる
するとその姿を見ていたガイドさんも同じような仕草を見せながら笑っていた

俺は先に立ちあがった奈良さんに続いてバスを降りる
でも目の前に広がる景色を見て俺は驚いてしまったんだ
だってあまりにも質素すぎて廃村じゃないか?と思う程だったから・・

俺はバスから降り歩きながら周りを見回してみる



「・・・・・・・・・」




ジャリッ・・


ジャリッ・・・





(なに・・ここ・・・?)





砂浜に直接乗り上げてある小さな船

天日干しに使うザルや網があちこちに置きっぱなしになっていた

人の住んでいる気配のない家

そして・・少し離れた小高い場所にある小さなお墓・・




「・・・・・・・・」




俺は今自分の目に映っている景色が信じられない
まるで昔見た教科書に載っている様な貧しい漁村だったから・・


それにこの村に来て感じたことがもう一つある

それは”この村は完全に時間が止まっている”と言う事だ・・



何があったのか分からない・・
でもある時を境に完全に時が止まってしまった・・

いや、誰かが意図的に時を止めているような気がしたんだ・・






「・・・・・・・、ここ・・」




「本当に人が住んでいるんですか?」



     「・・・・・・・・・」



「・・・・っ!?あ・・・」



俺は咄嗟に出てしまった言葉を慌てて塞ぐ

その声は少し離れた場所にいた八乙女君たちには届いてい無いようだ
でも・・奈良さんには聞こえていたようで
地図を片手に海を眺めていた奈良さんは
俺の方をチラリとみてからポツリとこう呟いた・・



    「ここは・・・昔、大きな海難事故があった場所だ・・」



「えっ!?」



    「もう30年以上も昔の事だから知らないの無理はないと思うが・・
     多くの被害者を出した大きな事故だったんだよ・・」



「そうだったんですか・・」

 
    「実はこの地図も・・その時俺の先輩だった人が使っていた海運地図でね
     その当時はこの地図が活躍してくれたんだ・・」


「・・・・・・・・・・」


     「でも、俺もここへ来るまで忘れてた・・
      その頃は俺もまだ新入社員で右も左も分からないまま
      ただ仕事に追われる毎日を繰り返していたから・・」


     「実は俺、ここへ来たことがあったよ
      もうずっと昔の事だけど・・・」



「えっ!?」


     「その当時日本では有名シェフによる一大グルメブームが一世風靡していたんだ
      当然俺達もその話題に乗り遅れないように走り回ったよ
      そんな中ある地域でしか獲ることが出来ないとても貴重な魚介類を
      都内にある超有名レストランに卸しているという伝説の漁師に辿り着いた
      俺はその人に逢いたくてその人の詳しい事を教えてもらおうとした    
      でも向こうも企業秘密だからという理由で
      その人の事をそう簡単には教えてくれない」


「・・・・・・」


     「でもその当時まだ駆け出しだった俺は必死になって探し
      その人の居所まで自力で辿り着くことが出来たんだ
      そしてやっと見つけたその人に逢いにここへ来た・・」


「伝説の漁師・・?」


     「バカだな俺・・今頃思い出すなんて・・・」


「奈良さん・・・」


    「昔はもっと活気があった賑やかな村だったんだそうだ
     小さくてもここに住んでいる人たちは皆元気で楽しそうに笑ってて・・
     でも・・あの事故がこの場所を地図の上から消し去ってしまったんだな
     俺もさっきまで気が付かなかったよ・・
     30年前もこうしてこの場所に立って同じ景色を見た、それを思いだすまで・・」



「・・・・・・・・」



    「あ・・、すまん。俺のつまらない話に付き合わせてしまって
     少ないけど間違いなく此処に人は住んでいるはずだ
     たぶん今でも家の中から俺達の方を覗き見ているはずだよ?」



「え?」



俺は奈良さんの動き合わせて海岸線からそっと浜の方を振り向いてみる
すると奈良さんが言った通りさっきまで固く閉じられていた扉がゆっくりと開き始め
その家の中から次々と人が現れたんだ・・

真っ黒に日焼けした男性や
小さな赤ちゃんを抱きかかえた女性
腰の曲がったおばあちゃんの姿もある

そして大人の影に隠れながら俺達の方を伺っている子供達もいた




ワイワイ・・



ザワザワ・・・





「あ・・ホントだ・・
 結構な人が住んでいたんだ・・」


    「そうだろ?だってここは幻の漁場だったんだから」


「そんなに?」


    「あぁ・・もしかしたら昔俺が訪ねたあの漁師さんがいるかもしれないな・・
     30年経ってるから恐らくもうお爺さんになってると思うけど・・
     そう言えばその人に息子さんがいたはずなんだが」


「取り敢えず聞いてみましょうか?」


    「そうだな・・そうしよう、何か手がかりがつかめるかもしれないし・・」


「はい」



俺達はそう小さく頷き合うとそのまま踵を返した
八乙女君とガイドの人は次々と自分の周りに集まってきている人たちから
ここ最近起こった話を聞いてはメモを取っていてくれた



    『えっ!?な・・奈良さん!!奈良さん!!』



すると八乙女君が急に大きな声を出して
俺達に向かって手招きをする

ゆっくりと歩いていた俺達は八乙女君のただならない様子に
一体何事かと思いながら慌てて駆け寄ってみた


    「なんだ?どうした!?」



「・・・・・・?」



    『あの・・この人が見たと言ってます・・』



    「何を?」



    『あの家に見知らぬ人が眠っていると・・』
    



ー !!!? -


そう言って八乙女君がある家を指さした時
指さしたその家の中から1人のお爺さんが姿を現し
俺達がいる場所の方へゆっくりと歩み寄って来てくれたんだ・・・