「平成恋愛事情」の番外編を
気まぐれに綴っていきます。
よろしければお付き合い下さい。
前回からの続きです。
隅田川の花火の夜にジョーと別れてから
1ヶ月余り経った9月の下旬、
まだ失恋の痛手を抱えつつ
私はパリ行きの飛行機に乗りました。
9月にパリで仕事があるジョーが
一緒に行かないか、と誘ってきて
お互いのスケジュールが合う下旬に
現地で合流することになっていたのです。
その約束は
私たちが別れる前のものなので
もう合流することもなかったのですが
有給休暇は取っていたし
フライトは予約してあったので
思い切ってパリに飛ぶことにしました。
大好きなパリに滞在すると
心の傷が癒えるかもしれないし
それに、ジョーともしかしたら
現地でバッタリ会えるかもしれない。
もしも、そんなことがあったら
また運命を感じて
ヨリを戻せるかもしれない、、、。
未練がましい思いを引きずりながら
私はパリに到着しました。
いつもなら右岸の華やかなエリアに
滞在することが多いけれど
今回は左岸の下町のホテルを予約しました。
それが今の自分には
相応しい気がしたのです。
9月の下旬というのに
パリにはまだ夏が留まっていて
私は毎日よく歩き回りました。
ホテルから数分のセーヌ川沿いを歩いて
橋を行ったり来たりしたり
小さな教会を見学したり
小さなカフェで寛いだり。
でも、その都度
私の中の私が
「それで本当に楽しいの?」
と問い詰めて来ました。
楽しいに決まってるじゃない。
と答えるも
その次に「それなりにね」
という言葉が続くのでした。
パリに来て4日目の朝。
昨日までの陽気が嘘のように
冷たい風が吹き荒れて
私はスーツケースに詰め込んできた
セーターとコートが
ようやく役に立つぞ、と喜びました。
けれど、コートを着て外を歩くと
思った以上に寒さが堪えて
昨日までのように散策は出来ないことを
悟りました。
こんな気候の時は
美術館巡りをしよう。
ホテルから一番近い
ルーヴル美術館に向かうと
観光客でごった返していました。
一瞬引き返そうと思いましたが
混雑しているエリアは
ほんの数ヵ所で、
そこを抜けるとゆったり出来ることを
思い出しました。
今回は人があまりいない
ひっそりとしたコーナーで
そこに飾られている絵画たちを
ぼんやり眺めることにしました。
絵画を見ているふりをしつつ
私はジョーのことを考えていました。
もしも彼とパリで落ち合っていたら
毎日がどんなに楽しかったことだろう。
街を歩くのも
カフェでお茶をするのも
そして、こうやって
ルーヴルにやって来たとしても
今とは随分違う気持ちだったろうに。
けれど、あの時
別れを告げないで
そのままお付き合いを続けて
彼とパリを満喫したとしても
彼の中の彼女の面影に
絶えず怯えていたかもしれない。
やっぱり別れてよかったのだ。
一人で味わうパリも
乙なものではないか。
そう考えた時に
後ろからふいに声を掛けられました。
「あの、失礼ですけど、、、
日本から来られた方ですか」
つづく、、、。