印鑰智哉さんの投稿記事を共有させて頂きます。


「コシヒカリ環1号」や「あきたこまちR」などの重イオンビーム放射線によって遺伝子を改変した品種の問題、昨年以来、その問題について発信してきたけれども、本来、こうした問題にまっ先に動くべき人たちが動かないケースに直面してきた。その原因はそうした人たちがこの重イオンビーム放射線育種を古いガンマ線放射線育種と混同してしまっていることにあると思う。
 
 戦後まもなくからガンマ線を照射して突然変異を引き起こすことが「原子力の平和利用」を名目に行われてきた。日本でもレイメイなどお米や大豆など多くの品種を作り出した。もっともこの方法は効率が悪く、施設老朽化と共に世界ではほとんど使われなくなっている。日本でもガンマ線による育種施設であったガンマルームは2022年度で閉鎖されている。これはもう終わった技術なのだ。
 
 ところがこの「コシヒカリ環1号」で使われたのはこのガンマ線ではない。重イオンビームだ。これは電子を剥ぎ取ってイオン化した粒子を加速器で加速して、ビーム上に照射する。放射状に広がるガンマ線と違って、小さな点に加速した粒子をぶつけるので、その点でのエネルギーはガンマ線とは比較にならないほど大きい(最大1万倍になりうるという)。
 ガンマ線では遺伝子が直接破壊されることは稀だという。ガンマ線をあてられた細胞には活性酸素(フリーラジカル)が発生し、そのフリーラジカルが変異を引き起こしていく。それに対して、重イオンビームは直接遺伝子の二重鎖を破壊してしまう。同じ放射線だといって同一視することは不可能な違いがある。二重鎖を破壊されることによって起こることは「ゲノム編集」と類似している。
 それなのに、農水省や秋田県は根拠もしめさず、どちらも同じだとして、ガンマ線による放射線育種が歴史が長く、世界でも広く行われてきたことを「コシヒカリ環1号」で使った技術の実績として宣伝している。でもそれはおかしい。
 
 実際に重イオンビームによる突然変異育種はどれくらい普及しているのか? IAEAに届け出されたデータを見ると、その数はわずか26品種に過ぎず、中国が手掛けたものが6品種、残りの20品種は日本で行われたものだ。中国が登録した最後が1998年になっており、それ以降は日本でしか行われていない。
 
 これでこの方法は世界で長くやってきたものだ、とするのはあまりに事実と異なる。そして何より、重イオンビームによる変異による品種の安全審査の研究が存在していない。それでも受け入れろ、というのはかなり無理な話ではないか?
 
 ここまで確認していれば、「放射線育種は歴史が長いのだから大丈夫なはずだ」という言い方はできないだろう。農水省はこうした品種を2025年までに3割の都道府県に導入しようと目標を定めている。しかし、それを私たち抜きに決定するのはおかしい。現在の種苗行政(種子条例)では私たちの異義を受け入れる制度はない。でも最終的に決定するのは生産者であり、消費者である。そこから変えていく必要がある。

3月29日の集会にぜひ、ご参加を!
参加申し込み:https://bit.ly/komachi0329



2月24日、石川県白山市に行きます。
 正直迷いました。震災救援・支援こそが重要なのに、学習会どころでないのではと思い、主催者の方とも意見を交わしました。その中で、今だからこそやらなければならないと考え、行くことに決めました。
 
 あの震災が起きる前から日本海側の地域のことを考えていました。日本海側の地域には共通する特徴があります。急峻な山が海まで迫り、日本海を渡ってきた水蒸気がこの山にあたり、大地を潤します。大地のミネラルが海へと注ぎ、その海はとても豊かな生命を生み出します。そのため生物多様性がとても高い地域なのです。この山の富、海の富、発酵の富、それらの富は海運を通じて日本中に運ばれ、日本の各地域の食文化を形成してきました。
 現在もなお、新潟県は日本最大のお米の産地であり、秋田県は第3位、そして富山県は日本各地に種籾を生産する日本最大のタネ供給県です。つまり日本海側の地域は日本の食の主柱なのです。
 そして、その地形ゆえにこの地域はもともと生物多様性の宝庫なのですが、生物大量絶滅危機が進行する現在、この地域で残る豊かな生物多様性が私たちの命を守る上でも大きな役割を果たしてきたことは間違いありません。
 しかし、これまで日本はこの地域が果たしている役割を過小評価し、この地域を日本で最大の原発密集地域にしてしまいました。もし震源に近い珠洲市に原発が作られていたら、おそらく石川県から東の地域は東電原発事故を上回る放射性物質による汚染で絶望的な状況に陥っていたことでしょう。
 
 今、この地域を狙うのがバイオテクノロジー産業です。「ゲノム編集」養殖を進めるリージョナルフィッシュ社は京都府宮津市だけでなく、島根県、福井県、富山県にまで手を伸ばしています。
 
 バイオテクノロジー産業があたかも現地の「復興」に役立つかのような宣伝がこれからなされていくことでしょう。そして、まっとうな議論も、十分な情報公開もないまま、環境への十分な配慮もされない施設が続々と作られかねません。そうした産業がこの貴重な生態系を汚染し、未来にわたって本当の意味の発展を阻んでしまうことを怖れます。
 
 日本は今、食料危機がリアルな問題として浮き上がってきています。そんな中、日本の食の主柱である日本海側の地域が損なわれたら、日本の食料危機はもはや手が打てなくなるでしょう。
 原発やバイオテクノロジーに依存せずに、これらの地域が生きていくことができる道を作り出せるかどうかという問いは、日本を生きられる世界として守れるかどうかという問いに直接かかってきます。
 日本海側から遠い人たちも、連帯していっしょに歩むべき道を切り開くことが必要になっていると思います。石川県能登半島地域の復興はその意味で鍵となるでしょう。
 
 官民一体で進められようとしているバイオテクノロジー産業の本質とは何なのか、情報を共有し、じっくり考え、どう進むべきか、いっしょに考える機会にしたいと思います。
 
 個人的なことですが、僕の先祖は珠洲市の出身です。そんなこともあり、珠洲市のニュースはいつも気が気でなりません。2月の学習会にすべてを出せるように準備したいと思っています。
 
 どうぞよろしくお願いいたします。
 
2月24日 13:30~15:30(受付 13:00~)
【場 所】 白山市福祉ふれあいセンター(オンラインはありません)
2階 大会議室 白山市倉光8丁目 16 番地 1
【申し込み】以下のフォームから
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScTarKYbtEYg_jhOErpIFrs2elz7vZzEAQHPKwMylgVD7A5qw/viewform