久しぶりに祖母の家に帰った。
祖母は顔に皺を寄せて「おかえり」と微笑んでくれた。
テレビの前に腰を下ろす代わりに、台所の椅子に座って祖母の後ろ姿を眺めた。
とても小さくて、か弱い。でも皺だらけの手は確かに彼女の生きた歴史を物語っている。
私は彼女の物語を知りたくてたまらない。
だって私は、彼女の処女作の1ページだって読めていないのだから。
ある人によると、人は誰でも1冊の小説を書けるそうだ。
ただその人の生きてきた人生を書き記せばいいだけだから。
それならきっとだれもが作家なんだと思う。
でも私はベストセラーにとらわれて、とても身近で大切な人の物語を読まずにいる。
でも今日は違う、祖母と話をするんだ。
でも、なんて言おう、照れてしまう。
「おばあちゃん、今日はおはぎが食べたいな・・」
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「しかし今わかっているのはこういうことだ。人が死ぬと、私たちが悔いるのは、その人とじゅうぶんに話をしなかったということだ。私はお祖母さんと話をしなかった。彼女がどんな人だったかも知らない。お祖父さんもほとんど覚えていない。同じく母も。」
ドリス レッシング『 夕映えの道―よき隣人
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