不屈の闘魂 | bluebee3838のブログ

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声優であり、女優であり、歌手でもある表現者・松本梨香と数々のヒット作を生み出した脚本家、江頭美智留がタッグを組む演劇ユニット。アイコンデザインは松本梨香。

アントニオ猪木が死んだ。
そのニュースに衝撃を受けた。

唐突ですがこんにちは。
阿部みさとです。

 

 

 

 

それはそれは昔
阿部が今よりもっと若くて
今よりもう少しぴちぴちしていた頃

高校を卒業後東京に出たかった私は
いくつかの大学を節操なく受験した。
東京に行けるならどんな学部でもよかった。

そんな邪な気持ちで挑んだお受験は
滑り止めさえも華麗にすべり落ち、
担任に「阿部どうした」と心配されつつも
念のため受けておいた某大学の某学部に合格。
ただし所在地は田舎だった。
親は喜んでいた。

往生際の悪い私は
あきらめたらそこで試合終了なんです。と
まだ願書受付中の女子大を受けたいと直談判した。
秒で却下された。

そりゃそうだ。
今なら親の気持ちがよく分かる。

引越しの日、
住む予定だった東京を通過して
車窓から見える富士山が
美しかったと同時に巨大で少し怖かった。

親元を離れての不安、挫折感でいっぱいだった私に
兄はこう言った。
「お前にぴったりな本がある。」

当時の私といえば、
幼き頃から少し歳の離れた兄を慕い、
「テレビのボタンは絶対に3秒以上押すなよ、爆発するから。」
という兄の言葉を20歳まで信じていたほど
それはそれは透き通って見えてないんじゃないかくらい純粋だった。※当社比

まだインターネットもあまり普及してない時代である。
本屋に駆け込みすぐに取り寄せた。

本の著者はあるプロレスラーだった。
そういや兄は大のプロレス好きだった。

いそいそと読んではみたものの、プロレスがわからないから理解できない。
いや待てよ、私にぴったりって一体なんだ。

深夜に放送されるプロレス番組をとにかく見まくった。
新日本プロレスのファンクラブに入会した。
図書館に行きBOOKOFFに行き、プロレスの本を読み漁った。

そうやってやっとその本が理解できる頃には
そこそこの知識をもち
そこそこのプロレスファンになり

登場から一貫して客にどう見られているかの演出が紡がれ、
真剣勝負の中で相手の強さを引き出すことで自分の強さを表現し、それを受け取る観客がいる。
格闘技というスポーツでありながら
最高のエンターテイメントに夢中になった。

ファンクラブの特権を使って
アントニオ猪木の引退試合のチケットも入手した。
東京ドームがひとつになっていた。
兄や友人たちは泣いていた。

ひとつの時代が終わったんだと思った。

そんな第3の青春時代を経て
第6の青春時代を生きている現在。
(死ぬまで青春らしいので細かく刻んでます。あしからず。)

難病で弱った体を見ても
アントニオ猪木は死なない。
どこかでそう思っていた。
最期の時までエンターテイナーだと思った。

ここで世の中にたくさんある名言の中から
おひとつ。

『派手に見えれば見えるほど、裏で地道な努力をしているのがあらゆる世界のプロだ。』

何度堕ちても這い上がって黄金時代を築いたアントニオ猪木の言葉である。


さてさて時代を令和に戻しまして。
今回の舞台はエンターテイメントの世界に生きる人間たちの物語です。
そんなバカみたいなほど一生懸命な愛おしい人間たちを
ぜひ劇場で感じてください。


ちなみに余談ですが
テレビが爆発すると言ったことも、プロレスの本を薦めたことも、兄は一切覚えていなかった。

実際のところ、本が入荷する頃にはもうすでに新しい環境に順応していた。

猪木さんが引退してしばらくした後、満足した私はファンクラブを退会し野球のマネージャーに憧れナイター中継を観ながらスコアブックをつけるようになっていた。

その後の展開は割愛。

今はYouTubeもAmazonもあるから便利ですね。


I am me !
どうぞご贔屓に。


阿部みさと