英語が聞き取れないのはわりと壮大な理由が背景にはあるはずですが、言語学者ではないので、詳しいことまでは全くわかりません。ですが、大学生になるまでほとんど英語に接したことがない身にして、そして英語圏生活歴が1年と少しの段階で英語のドラマや映画、そしてネイティブとの会話もとりあえずなんとかなるレベル(心からは楽しめない程度には楽しめてます)にまでこぎつけた今だからわかる、英語が聞き取れない大まかな理由を考察したいと思います。

 

 

                    

 

 

英語が聞き取れない理由をざっくりと大別すると

  1. 単語がわからない
  2. 単語を知っていてもそれらの単語の音を正確に把握していない
  3. 単語同士の音のつながりに慣れていない
  4. 内容のイメージが構築できない

このように分類できます。順番に説明していきます。

 

単語がわからない

「単語がわからない」から英語が聞き取れない、という状態は、ある程度には英語ができるようになってきた人々に起こりがちな傾向だと思います。大学受験などでネイティブでもそうそう使わないような単語をたくさん詰め込む傾向にある日本の英語教育。確かにこれらの単語も実は結構重要だったりしますが、それはさておき日常会話に出てくる単語は手付かずになってしまっている人がたくさんいます。まな板は chopping board 、ダンボールは cardboard box 、ガムテープは duct tape と英語で表現しますが、私も英語圏で生活するようになるまでこれらの表現を英語で考えたこともありませんでした。

 

 

 

「生活用品の英単語」などのまとめをウェブサイトや書籍などで確認できるかもしれませんが、大量にそれらの単語を詰め込んでも忘れてしまう人がほとんどだと思います。むしろドラマや映画、もしくは生活する中でそれらの表現に出会った時に、身に覚えのない単語だったら人に聞くなり辞書で調べるなりしてその時々で1つずつしっかりと覚えていくほうが身になるような気がします。

 

海外で生活の長い方で、英語の上達を諦めている、もしくはもはや気にしていない方などは字幕付きで英語のコンテンツを見ている時に、たとえわからない単語に出会ったとしても完全にスルーする方などたまにいますが、英語を次のレベルにステップアップさせたい人がとる行動ではありません。前後の文脈からその単語の意味を拾える(リスニングを続けながら、そのようなわからない単語の意味を類推する作業は難易度最上級です。ネイティブ、もしくはそれに相当するレベルしか無理です)人以外はしっかりと辞書を引きましょう。

 

 

単語を知っていても、それらの単語の音を正確に把握していない

大学受験の時、私も英単語をたくさん詰め込んだのを覚えています。しかし多くの大学の試験でリスニングの試験が課されていないこともあり、多くの人はあまり単語ごとの正確な音を把握していません。英会話は言葉ベースなので、いくら難しい文章が読めても、音を正確に把握していなければ、会話になりません。この問題はどちらかというと英会話歴が浅い人に多い傾向だと思います。

 

音を正確に把握していないことの弊害はリスニングだけではなく、スピーキングにもおよびます。自分が話す時、使いたい単語は思い浮かんでいるのに、その発音に自信が持てないから、つい別の単語を使ってしまったり、実際に使ってみたはいいものの伝わらないという経験が私にはあります。こういったことが続くと、どんどんスピーキングに自信がなくなってきて、口数が減ってしまうことにもつながりかねません。

 

 

 

 comfortableconvenientperson など当たり前のように使われている単語、特に日本語としても使われているような bagbottlecup などの単語はミスの地雷原です。これらの単語の正確な音をインターネット辞書などでしっかりと確かめておきましょう。また新たな単語を学んだ時もしっかりとその音声にも気を配るようにしましょう。

 

 

単語同士の音のつながりに慣れていない

単語同士の音のつながりは、基本的に頻出単語同士の間で起こります。 want towannagoing togonna を表現するのは、よく使われすぎてこれら表現がもはや市民権を得ているからです。 wannagonna のように新たな表現として確立していなくても、よく使われる単語同士ではこのような音のつながりが頻繁に起こります。

 

電気や家電製品のスイッチを入れたり消したりする時に使う put it onput it off という表現を例にとってみると、 want towanna のように、 put it onputiton のような短縮表現はありませんが、実際は「プティトン」のような発音がなされます。このような音のつながりは put onput off などの熟語表現 + it のときに多発します。

 

 

 

このような音のつながりに関してはただひたすら英語を聞くしかない、と言わざるを得ません。ただ音を単に聞き流しているだけでは聞けるようになるまでに膨大な時間を要してしまいます。このような音のつながりを効果的に学ぶには字幕付きの英語のドラマや映画を見ることが一番良いのではないかと思います。この時に注意すべきなのは字幕と音声の両方に適度に集中力を割くことです。

 

字幕付きでコンテンツを見ている時、単に字幕ばかり追いかけてしまってあまりリスニングのためなっていないことがあります。せっかくリスニングを向上させるチャンスでもあるので、字幕ではなく音声の方にもある程度意識を割き、もし音声と単語が自分の中で一致しなかったらためらわずに再度同じ場面を再生するようにしましょう。 YouTube ではパソコンの ◀︎ のキーを押せば5秒前に戻ってくれますし、Netflix でも同じキーで10秒前に巻き戻ってくれます(スペースキーをその後に押す必要があります)。このようにして同じ場面を何回か繰り返してみて、音と表現のイメージを一致させるようにしましょう。

 

 

 

内容のイメージが構築できない

会話というのは最終的にはイメージの共有だと感じています。映画のワンシーンのように指と指を合わせるだけで脳内のイメージを共有できれば良いですが、少なくとも今現在は言葉を介してイメージを共有する必要があります。私たちは日本語にはもちろん慣れ親しんでいるので、大抵の場合、相手が何ついて話しているかわからなくなることはありません。しかし英語の場合、イメージ(相手方の) → 英語 → イメージの流れの「英語」がしっかりと把握できていないため相手が言いたいことをしっかりとイメージすることが困難なことが多々あります。

 

これには2つの理由があるように気がしていて、1つはその単語の意味を本当に正確には捉えきれていないこと、もう1つはある単語を聞いてからその単語についてのイメージを思い浮かべるのにネイティブよりも多分に時間を費やしてしまうことがそれら原因のように感じます。

 

単語の意味を正確に捉えていないとイメージの輪郭がぼやけてしまいます。そのような単語が何十個に1つの場合にはそのほかの単語で補填可能ですが、そのような単語に立て続けに出会うとイメージの輪郭がどんどんぼやけて途中でもうなにについて話しているか検討がつかなくなってしまいます。イメージができなくなってしまうと、そのあとはいくつかの単語はピックアップできますが、話の内容がガラッと変わりでもしない限り、なにについて話しているのか再度掴むことはなかなかできません。

 

また単語のイメージを思い浮かべるのに多く時間を要することも、イメージが構築できなくなってしまうことの大きな原因だと思います。2人同時にプラモデルを作り始めたとして、課された時間内にプラモデルを完成させるためには1つのパーツを10秒以内で付けなければいけないとして、1人は1つのパーツを付けるのに7秒、もう1人は1つのパーツに13秒かかっていたら、1人は時間内にある程度の余裕を持って仕上げることができますが、もう1人は課された時間内にプラモデルを仕上げることができません。これをリスニングに置き換えると、誰かが話し始めて話し終わる時に、ネイティブは余裕を持ってその内容をイメージしきれているけれど、もう1人の英語学習者はしっかりとしたイメージを構築できていない状態です。プラモデルのように完成形がわかっていて、どこになにを付ければ良いかもわかっていているなら組み立て以外の弊害はありませんが、英語の場合、これ以外にも上述したような弊害が沢山あるので、話の途中の段階ですでにどのパーツをどのに付ければ良いかすら見失ってしまっている可能性も十分にあります。

 

 

 

ただほかの弊害のことを気にしだしたらきりがないので、ここは単語ごとのイメージを思い浮かべるのに要する時間についてのみ焦点を絞ると、速読するのが一番効果的にこの能力向上に役立つような気がします。リスニングでは上述したその他のファクターが関わってくるので、この単語 → イメージだけに集中することができませんが、少なくとも読書では単語の音や音のつながりなどには意識を割く必要がなく、単語のイメージ化にのみ注力できます。ただし英語をしっかりとイメージしながら早く読もうと心がけても、読書ではどうしても怠慢になってしまうという場合はには、英語のドラマや映画を、字幕だけに集中してみるのもオススメです。この場合には確かに音の聞き取りにはあまり効果は発揮しないかもしれませんが、英語をネイティブのスピードでイメージ化する練習としては非常に役立つでしょう。

 

最後に

日本語にはない、もしくは表現しづらい違いですが、英語には hearlisten があり、その違いは hear はただ音が聞こえるかどうか、 listen はその音を意識的に聞き取っているかどうかです。電話口で ‘I can’t hear you.’ と言ったら「(聞き取りたいけど)声が聞こえない」ことを指し、また会話中に相手の言っていることを聞いていなかった時 ‘Sorry I didn’t listen to you.’ と言えば「(音自体は耳には入っていたけれど)聞いてなかったごめん」という意味です。

 

特に音楽を聴いている時に私に起こりますが、音楽を listen しているのではなくて、単に hear してしまっていることがよくあります。もちろん生活の隅から隅まで英語上達のことばかり考えていなくても良いとは思いますが、音楽を聴くこともリスニング上達のために有効手段の1つです。音楽だけでなく、もし疲れていたりなんかやる気が出ないような場合ではない限り、できるだけ英語のコンテンツに接する時には意識的に耳を傾けることがリスニング上達に一役買うことでしょう。