実用的な英語の定義は、その時々でコロコロと変わります。
大学の授業などで、ある議題について議論しなければならない際、動詞の大半を make や have 、 use 、 say などでまかなっていると、自分の意見が正確に伝わらず教授や他の生徒からさらに詳しい説明を求められることになるかもしれません。
または友達とサッカーをしているとき、 Man on! (敵が来てる!)や Square! (横にパスを出せ!)、 One-two! (パスを受け直せ!)など、共通で使われている表現を使わなければ、グラウンドでは味方に意図が伝わりづらい、という状況を生みかねません。
一方カフェやレストランなどの飲食店で勤務している時には、特にお店がお客さんで混雑しており、手際よく作業することが求められる時間帯において、スピーディーに意思伝達を行うことが求められます。意思が伝われば良いので、 help や use 、 have 、 get 、 put 、 bring など中学生レベルの単語が頻繁に使われます。
もちろん正しいグラマーを使えるに越したことがありませんが、正しいグラマーを使うことに固執することで意思伝達に多大な時間を要してしまっているようでは、飲食店で働く資格はありません。おそらくですが、マネージャーやその他の仕事仲間から注意されます。
グラマーと一言でいっても仮定法や前置詞など幅広いジャンルに分かれています。その中でも特に身近な「時制」はスピードを優先するために犠牲にしても良いのではないでしょうか。
(現在完了形)
I haven’t eaten lunch.
まだお昼ご飯は食べてない。
(過去形)
I didn’t eat lunch.
お昼ご飯は食べなかった。
(現在形)
I don’t eat lunch.
お昼ご飯は食べない。
否定形を現在完了形と共に使った場合、ある動作がまだ終わっていないことを表します。つまり文章中の彼(彼女)はこの後お昼ご飯を食べる予定があることを示唆しています。
否定形を過去形と共に使った場合、ある動作が過去に行われなかったことを表します。つまり文章中の彼(彼女)はこの日はお昼ご飯を食べなかったことを示唆しています。
否定形を現在形とともに使った場合、ある動作がいつも行われていないことを表します。つまり文章中の彼(彼女)は基本的にお昼ご飯を食べないことを表します。
時制を無視した表現とはどのようなケースで求められるのでしょうか。
例1)お客さんが注文した料理をすでに受け取っているかどうか。
たまに厨房や他のウェイトスタッフ(ウェイターとウェイトレスの総称)から、
「お客さんもう○○食べてる?」と聞かれることがあります。
もしお客さんにまだその料理が届いていない場合、どのような表現が正しいでしょうか。
They don’t get it.
They didn’t get it.
They haven’t got it.
「お客さんはまだその料理を手にしていない、でもそれを手にする予定だ」ということは They haven't got it. が一番正しい表現と言えます。
スラッと言えれば問題ありませんが、もし
They ah~, haven't um~, ah~, got the~ ah~, the dish.
くらい時間がかかってしまうようならば、いっそ They don't get it. と表現してしまいましょう。ほとんど確実にこちらの意図は伝わります。
例2)テーブルを片付けたかどうか。
マネージャーなどからテーブルを片付けるように言われ、その他の仕事を片付けている間に「もう片付けた?」と聞かれることも飲食店では想定されます。
I don't clean it.
I didn't clean it.
I haven't cleaned it.
「まだ片付けていないが、このあと片付ける予定」なので、 I haven't cleaned it. がグラマーの観点から見ると一番正しい表現だと言えます。
しかしこの場合でも I don't clean. I will. と表現できれば、意思伝達としては十分です。
再三繰り返して申し訳ありませんが、ネイティブスピーカーのように噛まずに、話すスピードを全く落とさずにこれら時制を使いこなせるならば、わざわざ時制を犠牲にする必要がありません。ただしもし完璧な時制を使いこなそうとして会話スピードが落ちてしまう可能性があるならば、少なくとも現在形と過去形に使う用法を絞って話してみても良いかもしれません。
また、飲食店でも、混雑時ではなく、時間にある程度ゆとりのある時は、時制に限らず積極的に正しいグラマーの用法を使って見ましょう。ある程度プレッシャーのある環境さらっと言えた表現はなかなか忘れないものです。