17歳、まだ治療をはじめる前。
僕は、男性ホルモン治療をはじめたら、
"絶対に埋没して生きていく"
そう決めていた。
埋没して生きていくという事が、本当の自分で生きていくという事だと信じていた。
埋没する為だけが目的ではないが、
お金を貯めて、関西の地元を出て、関東まで引っ越しもした。
やっと本当の自分で生きていける、そう思った。
埋没して働いた。
周りは自分のことを疑いもなく、男性として接してくれる。
男同士でくだらないことを語り合ったり、
男の中に混ざり、力仕事もした。
理想の環境で、ちゃんと自分が男性として通用してる事が、死ぬほど嬉しかった。
でも、
同じぐらい苦しくもあった。
もちろんそれが心地よくて、理想の生活で、
埋没以外考えられないというFTMは沢山いる。
ものすごく気持ちは分かる。
でも僕は、
いつかバレてしまうんじゃないかという不安。
過去の話をする度に、小さな嘘を積み重ねていく感覚が苦しかった。
埋没するという事は、女性の身体で生まれた、という変えられない事実を隠して生きていくという事。
散々自分に嘘をついて、自分で自分を騙して生きてきた人間が、今度は相手に嘘をついて生きていく。
高校生の頃は、トランスジェンダーである事がバレてしまう、ということを恐れ、埋没していた頃は女性の身体で生まれた過去がバレてしまうのではないかということに恐れていた。
結局、それだけが理由ということではないが、1年4ヶ月でその会社は退職し、今の会社では、一緒に働くスタッフ、9割の人にカミングアウトをして働いている。
自分の過去、女性の身体で生まれたという事実を知る人たちの中で働く。
もちろんカミングアウトをすれば、
"男性"ではなく、
"トランスジェンダー"というフィルターがかかってしまう。
そんな怖さもあった。
でも、どんなにパス度を上げたとしても、戸籍を変えたとしても事実は消せないという現実が一生付き纏うことの苦しさを分かっているから、だから現時点では、オープンでいることを選んだのです。
今でも埋没していた時に感じた、自分がちゃんと男性として通用するんだという事が分かった時の嬉しさや男仲間で居酒屋に呑みに出かけたり、バカ言って遊んだり、青春したあの時の嬉しさは忘れられないし、やっぱり埋没したいと思う瞬間もいまだにある。
この先も、環境の変化や出会う人たちで考え方が変わる事もきっとあるはずです。
そんな時に、自分に"それでいいんだよ"と安心させてあげられるように、これからも過ごしていきたい。
昨日、好きな俳優さんが、学校の先生が授業中に言ってた言葉を紹介していて、素敵だったので、ここに書き留めておきます。
「偽る」という漢字は、
"人の為"とかく。
なんだか少し寂しい漢字だけど、
みなさんはどうか人のためを思いながらも必死に自分の為を思って生きていってください。
僕もそんな風に生きていけるようにまた進んでいこう。
ユイ