◆太極算命万象学入門

 

 

太極算命万象学とは?

 


第015回 後編:  [ 時間と空間の連結 ]

 

このように、大地を吹き過ぎていく風は、方向や季節と密接に関係していて、自然の推移を知らせてくれる。季節という共通項によって平面五行説と立体五行説とが連結できたことで、古代人は天井も地上も一体のものであるという観念を深めていったのである。

古代人は、人間が立っている大地を「中央」という一つの方位に区分している。それは方位というものが、東西南北の四方位に向かって内から外へ広がっているだけではなく、四方位から人間が立っている大地(土性)に向かう五番目の方位があることに気づいたためである。

黄河流域の大地は文字通り一面の乾燥した黄土であるため、土性に「黄色」が配された。そこから、大地の中心に位置する王(皇帝)の衣服を黄色とするしきたりが生まれ、隋の時代以後は皇帝のみが用いる禁色となっている。

「季節・方向・五行・色彩」といった異なった次元にあるものを、五重塔をつくるように重層構造に積み重ねることによって連結させている。宇宙という範躊においては、異なった次元の世界はタテに重ねることで融和させることができるという概念は東洋思想を理解する上では大切なものである。

このような思考が可能であるのは、《宇宙に存在できるものはすべて宇宙と同じ構造をしている》という東洋史観の原則に草づいているためである。

方向が色を持つというと西洋人は驚くが、東洋人にとっては自然な感覚なのである。

素朴な原理から始まった陰陽五行説であるが、世界を有機的にとらえる方法論が含まれていたため、政治、経済、医学、軍略学、運命学など、さまざまな事象を考察する基本的な枠組みとして活用され、大きな影響を及ぼすことになった。

『中国の科学と文明』を著したイギリスの中国科学技術史の大家ジョゼフ・ニーダム(1900~1995)は、「十七世紀のデカルト、ニュートン以来、ヨーロッパは機械論的自然観の上に立って、科学を発展させてきた。

しかし、それが唯一可能な科学のあり方ではなく、あらゆる存在を有機体とみなす必要性が生まれてきた」として、東洋の思考法を高く評価している。

もともと陰陽五行説は直感的に提起された仮説といえるものであるが、それが多様な世界を解釈する一般原理となりうるかどうかは、その有効性によって決まることになる。