あ〜あ...見っかった...
翔「...どこかへ、行くつもり?」
智「...ああ...、まぁ...旅行...?」
翔「どこへ」
智「...ええ〜っと.....」
翔「海外?」
智「まぁ...そんなとこ...?」
翔「その話は後でゆっくり聞く。
取り敢えず...病院」
智「病院は行かない。どこも悪くない。
ただちょっと...腹が減ってただけだ」
翔「そんなわけないだろ!アンタ...自分がどんな顔してるかわかってんのか?
前...来た時よりもまた痩せて...
頼むよ...ちゃんとしてくれよ...心配させないでよ...」
“心配させないで“...か。
昔は...“心配くらいさせてくれ“ってよく言ってたのにな...
まあ...そうなるか...
智「分かった分かった、病院には行く。
でも、翔君にもマネージャー君にも世話にはなれない。自分で行く。タクシーで行く。
だから...もう帰ってくれ」
翔「...俺は...一緒には行けないから...せめて...迎えが来るまでは、そばにいる...」
そりゃそうか...翔君が付き添ってくれるなんて厚かましい事を勘違いした自分が、とにかく恥ずかしい...恥ずかしくて死にそう...だから、早く一人になりたい
智「もう...いいからさ...。
鍵おいて出て行ってくれ...」
翔「鍵...?...いきなりなんで...」
智「...もう...ここには、来るな...」
翔「何...言って...」
本当にもう目眩も吐き気も治まった
だから...今日、病院に行く必要はない
俺は倒れた拍子にポッケから落ちたスマホを掴んでマネージャー君に連絡した
大丈夫だから来なくていいと。
そんな態度の俺を勝手な事をしたと怒ってるんだろう...
いい機会だ...このまま怒って出て行ってくれ...
翔「何が...気に入らないの...。
結婚...は、智君も納得してくれたじゃない...
貴方と...ずっと居たいから...仕方なく...」
仕方なく...結婚なんてしちゃいけないよ...
相手にも失礼だ
でも...そうさせたのは
俺に責任がある...
せめて...今、ここで終わらせよう。
改まって別れ話をしたところで結果は同じ。
なら...今、勢いで言ってやる方が効くかもしんない
何も言わずに二、三年...離れればお互い隣にいない事に、慣れるんだと思ってたけど
そんなズルはしちゃいけないよな...
逃げても解決しない
智「...鍵...寄越せ...」
廊下で寝転がったままだった俺を横抱きにして
寝室へ連れて行く翔君の顔は
怒りなのか
悲しみなのか...
諦めなのか...
...見た事ない顔してた...
この角度で見るのも
これが最後だ...