翔君が先に手術室に入る...


智「はぁ......」


母「またぁ!それ何のため息??」


智「翔君...大丈夫かな...」


母「大丈夫よ。あの子、頑丈だから」


智「翔君についててあげなくていいの?」


母「いいのよ。さとちゃんの方が好きだから」


智「...ありがと...でも...翔君だって...」


母「翔にもちゃんと会ってきたわよ?松岡さんが来てくれたからバトンタッチ(笑)

ほぼ毎日あの子とは会ってるのよ?話すことなんてそんなにないのよ(笑)

ほらほら、眉が下がってるわよ!

貴方の困り顔は可愛いから好きだけど、そんな心配しなくていいの」


智「...うん...。

あのね...。いつも、いつもありがとう。

本当に...赤ちゃんの時も今も.........これから、も」


母「何よ?改まって(笑)

こちらこそ。

翔と出会ってくれてありがとう。これからは...二人で幸せになりなさい。...楽しみね?」


翔君のお母さんは、俺達の事を最初から受け入れてくれた。

多分...一番、反対していい人なのに。


......あ...、


廊下から松兄の足音...相変わらずドカドカ(笑)



松「智。櫻井君は今、手術室に入ったよ。

これを、お前に...」


智「...写真...?」


母「あら...東京タワー?」


智「...飛行機雲...消滅飛行機雲...」


母「あら、ほんと...。珍しいわね」



⭐︎



母さんが言うように、俺は頑丈に出来ているから手術をするような病気も怪我も経験がない。


だから、正直...うん、怖いよ...(笑)


でも...俺の中にあった物が智君を助ける事が出来るのなら...怖いものなんてない。

智君を失うよりも怖いものなんて...ない。

俺が目が覚めた時...きっと智君はまだ眠りの中だろう...


眠っている間に

どうか良い夢を見て欲しくて

写真を渡してもらった...


今頃...あの写真を見ているだろうか...



あの日...俺を庇って智君が刺された日

智君は東京を離れる前に東京タワーから

俺と過ごした街を目に焼き付けようとあの場にいたと話してくれた。


結局...東京タワーには辿り着けていない


だから...せめて写真で


あそこからの景色を見せたくて構えたカメラ。

そして、奇跡のような空に顔も綻ぶ...


いつか話した飛行機雲の反対...


消滅飛行機雲が広がった空



智君にどうか



俺の想いが届いていますように...