本当に...博君は、消えた


まるで...あの時と同じ

智君も...こうして俺の前から居なくなった
まるで今までの事が全て無かった事のように



もう...


どうでもいい...


あてもなく歩く...

西か東かも分からない
傾いた太陽のオレンジでさえ
今の俺には癪に触る



...............



ドン...

翔「...失礼...」

男「待てよ、人にぶつかっておいて
なんだぁ?その態度!」

翔「申し訳ない...」

男「見ろよ、お前にぶつかられてスマホ、落っことしたからよ〜、弁償しろよ。昨日、買ったばっかの最新機種だ...50万で許してやるよ」


バカか...

自分からぶつかってきておいて。
で?スマホが50万?

ふざけんな...。

翔「そういう事なら...警察を呼びましょう。
ちゃんと弁償はしたいので被害届、出して下さい」

男「ああん?!お前、喧嘩売ってんのか?」


売ってんのはお前らだろう

買ってやるよ...

先に手を出したら負けだ


翔「来いよ...ゴミ...」

二人組の見るからに柄の悪い男達が俺のネクタイに手を伸ばしてきた...

もう少し...だ

殴れ…


防犯カメラなんて無さそうな路地裏
ドライブレコーダーを搭載した車も通りそうにない...通行人は...いない、か...

ジャケットの内ポケットのスマホはなんとか録画モードにはなっているはず...この際、音声だけでも仕方がないか...


顔はご遠慮いただきたいが...
それもどうでもいい事

相手の拳が飛んで来る寸前...




誰かに手を引かれる...



そのまま後ろに倒れた俺の前に立つのは...