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智「そんな‼︎...長野さんは何も悪くないのに...俺のせいだ...ごめんなさい...」

長「違いますよ。大野さんのせいなどでは決してありません。
実は、ずっとやりたい事がありましてね...。
それを実現するには仕事をしながら、片手間では出来ないので、ずっと先送りにしてきました。
いつ退職を切り出そうかとずっと思っていて。
常に辞表を持ち歩いていたのです」

智「そんなの...うそ...」

長「嘘じゃありません。
持ち歩き過ぎて草臥れた物を何度も定期的に書き直したくらいです(笑)

大野さんのおかげで...
懐かしい人と再会出来たのです。
その人を本気で探せば見つける事も出来たはずなのに...都合の良い理由をつけて諦めたのです。
その人と再会して...昔話に花が咲き、諦めていた夢を思い出したのです」

智「俺のお陰で再会した人...?誰?」

長「...(笑)...それは、また機会があればお話ししましょう。
その人とね...昔...学生の頃、同じ夢を誓ったのです。でも...色々あって、疎遠になり...お互い別の道に進みました。
翔...櫻井の元で働く事はやり甲斐もあったし自分の生活も豊かでした。
でも...何かがずっと足りなかった...
それが何かは分かっていたんです。
ただ...新しい事を始める勇気が足りなかったのです。...こうして踏み出すのに5年もかかりました(笑)
...大野さんには感謝しています。ありがとうございます」

智「そんな...俺は何も...。
本当に辞めるの?」

長「ええ。
私は...貴方に改めてお詫びをしなければいけませんね...。
私が余計な事をしなければ...今も貴方は翔と幸せに過ごしていたでしょうに...」

智「ううん...。これで...これが、良かったんだ。
あのまま...兄弟だと知らずに過ちばかりを重ねるより...ずっといい...」

長「大野さん...私は...貴方がDNA鑑定を望んだ時...もっと止めるべきだったと後悔ばかりしました。
世の中、知らなくていい事は沢山あります。
知らない事で誰も傷付かず幸せになるなら、たとえ法を犯す事でも知らないままで構わないと、今も思っています...貴方一人が傷付き辛い想いを...」

智「...俺はそれは嫌だった...。翔君のお父さんだから、本当の事を知りたかった。
翔君とは他人だという確実な証明が欲しかったから...。
もし...知らないまま...引き返せないタイミングで知るより...何倍も良かったよ...。
辛かったのは俺だけじゃないよね...長野さんだって...翔君の側で嘘をつき続けるのは辛かったでしょう?ごめんなさい...」


長「そんな事は気になさらなくていいのですよ。...私が望んだ事でしたから。

ところで...大野さん

私が今日...貴方に会いに来たのは
大切な事をお伝えにする為に来ました


翔が...全てを突き止めました...

貴方と兄弟だと知ってしまったのです」