翔「どういう事か...全部、話して」

長「...どうしてその事を?」

翔「そんな事、どうだっていいんだよ。
俺がどれほど智君を探していたか知ってたよね?。一番、近くで見てたよね?なんなら、協力してくれてたよね?
それなのに...智君を自分の祖父母に預けた?いったい...どういう事だよ‼︎」

長「落ち着いて下さい。
誰に何を吹き込まれたのか知りませんが...、社長が知りたい事への答えを私は持ち合わせていません」

翔「ふざけんな‼︎もう、バレてんだよ‼︎
智君が...本人が話しているのを聞いた!説明しろよ!」



長「フゥ〜...」



翔「 ‼︎  」


長「そういう所...ほんと直んないよね...。
大野さんといた頃は声を荒げる事も無かったのに。
どこまで聞いたのか知らないが...
知ってどうするんだ?
お前にはもう嫁も...子供も産まれるんだ...」

翔「うるさい!!俺の子だとは限らない」

長「今日...病院で奥様に会ったんだろう?
お腹の子は順調だそうだね。
子供は間違いなくお前の子だよ。
翔...お前はね、父親になるんだよ。

口では...智君智君と言っていたが...やる事やってんじゃん。

もう、関わるなよ...

大野さんだって、迷惑なんだよ。
言っておくが、お前の居ない所へ行きたいと望んだのは大野さんだ。
だから...一番、安全な所に避難させた。
お前が絶対に辿り着けない場所へね」


翔「...っ...すぐ側に裏切り者がいたなんて...」

長「もう...終わった事だろう?
お前は自分の意志で彼を諦め手身近な相手と結婚した。それが社会的に信頼を得る為だけだと言い張るならそれもいいだろう。秘書として最善の選択だと拍手を贈るさ。
でも...友人としては...見損なったよ。
お前は三年で諦めたけど...五年かけて見つけた人達がちゃんといるんだから...お前の彼への気持ちなんてそんなものさ。

どうしても彼を忘れられないなら...兄弟として付き合えばいいじゃないか。事実...お前達は兄弟なんだから」

翔「兄弟だなんて認めない。
勝手な事して、好きな事を言ってんじゃねぇよ」

長「勝手な事?DNA鑑定の事を言ってるのか?それとも俺が彼を避難させた事か?」

翔「全部だよ...全部。
あんた...智君を俺から引き離し、諦めた頃を見計らって...弱ってるタイミングであの女を充てがったんだろ...汚ねぇよ...やり方が...」

長「どう思おうが構わないが...。
仮に俺が彼女を充てがったとして...それに乗ったのは紛れもなくお前だよ。
秘書の俺の指図を社長のお前が覆す事なんて簡単な事。きっかけを作ったのは俺かもしれないが断る事は出来たはず。
実際...大野さんを忘れて子作りするくらい彼女の事を...」

翔「黙れ‼︎...もう...アンタを信じられない...
俺の前から消えろ...どこか...違う部署に移ってくれ...」

長「その必要はありません。
私も社長にお仕えするのはもう無理です。
急で申し訳ないのですが.....辞めさせていただきます。
次の秘書を早くお決め下さい。
引き継ぎする事も非常に多いですから」



デスクの上に静かに置かれた白い封筒には
俺への決別の文字が書かれていた